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キレイなバラには、愛がある

「どうだ浅野…今回の俺の点数は桁違いだぜ?」


「たしかに…頑張ったねー、勇馬」




観月が旅立つ前日。

俺達は、定期テストの成績表を配られていた。


ちなみに、このテストで観月は学年一位をとったらしい。


最後のテストで結果が残せて、めでたしめでたし、だな。




「たしかに桁違いだよ…


まさか勇馬がテストで…


二桁の点数をとるなんて」



「だろ?俺だってやればできるんだよ」



ハハハ、もっと俺を誉めるがいい!


…でもまぁ、それもこれも…




「霧谷君、成績上がったみたいね」


「おう、観月。勉強教えてくれてありがとな」




それもこれもテスト前に、観月に勉強を教えてもらったおかげだろう。


それに、勉強を大義名分に長い時間一緒にいられたから、一石二鳥ってやつだ。


えー、皆さんごめんなさい…リア充サイコー!!




「よかった。これで成績が悪いままだったら、あなたを霧谷勇(馬)って呼ぶところだったわ」


「(馬)ってなんだ!?馬鹿ってことか!?馬鹿ってことだろ!!」


「気にしないで。馬鹿(霧谷君)」


「逆っ!馬鹿と俺が順番逆っ!いつから俺の本質は馬鹿になった!?」


「「もとからでしょ」」


「……………」


「あ、泣いた」


「冗談よ、霧谷君。泣かないで(笑)」


「笑うなぁ!!!」




…いいのさ、たとえ泣かされても、リアルが充実してればそれでいいのさっ!!






――その後、観月はクラスのみんなに別れの挨拶をした。

その姿には、一欠片の迷いもなくて、今までで一番輝いているように見えた。




そうそう、ちなみに愛花なんだが、明後日退院することが決まったらしい。


それでも観月の出発日には間に合わなくて、


「もっとちゃんとお別れしたかったよぉ~!」


とか言いながら泣いてたけどな。



…あいつには、本当に感謝してる。

今度は俺が、力になってやらなきゃな…。






「―――テスト返しの日は半日で終わってしまうから、本当に暇になるのよね」




放課後になって、観月が愚痴る。




「せっかくだし、この後は二人でデートでもしてきたらどうだい?」



と、浅野が提案する。

…グッジョブ、ナイスアイディア。



「そうね…せっかくだし、また霧谷君の大好きな観覧車にでも…」



聞こえない。俺には何も聞こえない。




「じゃ、じゃあ…出かける場所はどこにすっか――」


「待って。……今日は私、行きたい場所があるから」



そう言って、観月は俺の耳を引っ張って歩き出した。


…なんか、もう、こういう扱い、慣れちまったな…。






「―――で、俺はいつまで目を閉じてればいいんだ?」



と、俺の手をとって先を歩く観月に問いかける。




「まだよ、もう少し」




俺達は学校を出て、駅から電車に乗り、あまり見慣れない駅で降り、しばらくの間歩き続けていた。



「ここから先、私が許可するまでは目を開けてはダメよ」


と、意味ありげなチョキをかまえた観月に命令されたので、俺は仕方なく目を閉じて、つないだ手を頼りに後をついていってる。



一体何が待っているんだろうか?

不安半分、恐怖半分だな、うん。





「さぁ、目を開けていいわよ」




ようやく開眼の許可が下りたので、俺は目を開けた。




すると、


そこには―――





「こ、ここって………」




眩しさに目が慣れ、見えた景色に広がっていたのは、


広い庭のような場所に咲き誇る、

色とりどりの………バラの花。




「そう、バラ園よ」




へぇ、バラ園…

とか言って俺が納得すると思ったら大間違いだ。


バラ園?何故に?


頭に疑問符を浮かべまくる俺。

だが観月はお構い無しと言わんばかりに、問いかけてくる。




「ねぇ霧谷君…バラの花言葉、知ってる?」




花言葉?いきなり何を…とか思ったが、一応正直に「聞いたことない」と答えた。




「バラの花には、[尊敬]、[嫉妬]、[情熱]、[可愛らしさ]、…色々な意味があるわ。


でも…それだけじゃない。バラには、他にも意味があるの」




話の流れは、さっぱり見えてこない。


でも、こいつは俺に何かを伝えようとしてる。それだけはわかった。




「どんな意味だ?」




俺の質問に、観月はゆっくり答える。




「……私が、あなたに送る、薔薇の花言葉は、

――――[愛情]。」





その言葉を聞き、俺は改めて目の前の景色を見る。



観月が俺に見せたかったもの。

それは、俺の見渡す世界を覆い尽くすほどに咲き誇る、

[愛情]の花。



少し棘があって、繊細で……それでも愛しくて、抱きしめたくなるような、キレイなバラの花。





「これから先が不安じゃないと言えば、嘘になるかもしれない。


…でも、もし後ろを振り返る日が来ても、あなたが笑っていてくれる。


だから、私は安心して前に進める」




そして今、やっとわかった気がした。こいつの伝えたいこと。




「だから……今まで、ありがとう。

私、頑張ってくるから。あなたのために」




観月の言葉の一つ一つから伝わってくるのは、感謝と、励まし。


―――私はもう大丈夫だから、心配しないで。


そんな気持ち。


…ったく、普通こういうのはこっちが励ますものだっつーの。





「……少し、歩くか」


「……そうね」




愛の花が咲き誇る庭を、二人で手をつないで歩き始める。



一緒にいられる幸せを噛みしめながら、

俺はつないだ小さな手を、強く握った。







―――そして、観月の旅立ちの日。





「観月っ!」



「え、霧谷君っ!?あなた、学校は!?」


「休んできた!!」




俺は本来なら今学校にいるはずなのだが、いてもたってもいられなくなって、


「すいません先生、風邪ひいたので休みます!!

……え、馬鹿は風邪ひかないだろ?

なるほど、こいつぁ一本とられ……やかましいわぁっ!!!」



と電話で先生に言い残し、全速力で家を飛び出して空港まで来た。




「まったく、あなたは…」


「悪い悪い。

…で、これ。プレゼント」


「え?」




飛行機の出発時間も近いので、さっそくプレゼントを観月に渡す。




「これって…」




プレゼントの袋に入れたのは……


キレイな銀色に輝く、薔薇の形のペンダント。




「愛情、だろ?」


「…よくそんなくさいセリフ言えるわね」


「お前が言ったんじゃ!!」



昨日誓った二人の愛を、形にして送ってみたぜ……とかやろうと思ったのに、今の一言で台無しっ!!




「本当に、別れ際までひどいな、お前は……」


「フフッ、そうかしら?

でも――――」




俺からもらったペンダントを身につけながら、いつもの悪戯っぽい笑顔で、観月は囁く。





「でも私だって、あなたのことをずっと好きでいること、忘れないでよね…勇馬君」


「え……」




初めて呼ばれる下の名前に違和感を覚えつつも、


俺は観月に言葉を返す。



「あぁ、わかってる。

ずっと忘れねーよ、………里奈。」




そして二人は互いに歩み寄り、別れのキスを―――





ガッ!!




―――しようと思ったら、いきなり観月にすごい勢いで胸ぐらを掴まれた。




「…浮気したら殺すわよ」




と、凄みのある脅迫。マジで目が怖い。

せっかくいい雰囲気だったのに!!





……でも、それに関しては、確信を持って答えられる。




「心配いらねーよ。


いつまでも、待ってる。


待ちきれなかったら、会いに行く。


約束だ」



「……馬鹿」





すると、観月は掴んでいた胸ぐらを引き寄せ、



そして―――――







お前の夢が叶う日には、一緒に喜びを分かち合おう。



また会える時が来たら、その時こそ、お前を離さないように抱きしめよう。




そう誓い、口づけを交わす俺達の間に、



永遠に枯れることのない、銀色の薔薇は、咲き誇っていた。

皆さん、ご愛読ありがとうございました。


これで「キレイなバラには、毒がある」の本編は終わりになります。


近日中に、番外編として


「キレイなバラには、毒がある~観月の回想~」


を投稿したいと思っています。


そちらの方も、どうかよろしくお願いします。

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