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SF因習村 ~宇宙で遭難したはずなのに、辿り着いたのは謎の因習が残る村でした~  作者: 澤田慎梧


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第十話「内偵」(1)

 トーマ達が惑星ロスロボスに漂着してから、六日目の朝がやってきた。

 村のあちこちからは煮炊きの煙が立ち上り、どこからか朝を告げる鶏の声も聞こえる。

 ゴサクとマンタが無残な死を遂げようとも、朝は変わらずやってくる。残酷だが、それが現実というものなのかもしれない。トーマは寝起きの頭で、ぼんやりとそんなことを考えていた。

 リカルドなどは、今朝ものんびりとしたいつもの様子を崩していない。常に生死と向き合っている医者ならではの達観なのかもしれない。

 

「――失礼します。朝ご飯をお持ちしました」


 そうして、ホタルも昨日と変わらず、重箱を携えて来てくれた。恰好も同じくもんぺ姿だ。

 もっとも、こちらはリカルドとは違って、顔に多少の疲れの色が見える。

 仲が良かったかどうかは知らないが、歳の近いマンタの死は、この美少女の心にも少なからず傷を与えているのだろう。


「その恰好……ホタルさんは、今日も畑の手伝いに?」

「はい。まだ作業途中の畑があるので。一日でもサボってしまうと、やり直しですから」

「そっか。……俺もまた、手伝ってもいいかな?」

「いいんですか? その……若い男の人が少ないので、とても助かります」


 マンタのことを考えてか、少し言い回しに気を遣いながらもホタルが笑顔を浮かべる。

 トーマはその笑顔に少しの罪悪感を覚えながらも、リカルドに目配せをした。

 ――全ては昨晩の内に打ち合わせた通りだ。


 「村長の監視を頼みたい」というトウリからの申し出を、トーマ達は承諾した。

 もちろん、この惑星の首長であり世話にもなっている村長を疑い監視することに、後ろめたさがない訳ではない。だがそれよりも、これ以上の悲劇を防ぎたいという気持ちの方が強かったのだ。


 村長がゴサクとマンタの死に直接関わっていなかったとしても、何か隠し事をしているのは明白だ。それがなんなのかは分からないが、自分達の身の安全の為にも、警戒するに越したことはない。

 しかし――。


『村長だけじゃない。ホタルのことも、警戒しておいてほしい』


 トウリからの更なる要請には、トーマが難色を示した。「妹同然の子を疑うのか」とも。

 けれども、そんなことはトウリだってよく分かっているのだ。


『妹分を疑うのは俺も心苦しい。でもな、村長の実質的な跡取りはホタルなんだ。村長以外で何か知っているとしたら、あいつ以外にはいないよ。分かってくれ』


 苦渋に満ちたトウリの表情を前に、トーマはそれ以上何も言えなかった。

 そうして、リカルドとナビと相談の上、トーマはホタルを、リカルドとナビは村長を、それぞれ監視することになったのだ――。


   ***


「おはようお二人さん! 今朝も仲が良いのね!」


 段々畑に向かうと、既にオバちゃん達が集まって作業を始めていた。

 ゴサクに続いてマンタが犠牲になった直後なのに、勤勉なことだった。


「おはようございます。その……大丈夫っすか?」

「何が?」

「何がって、マンタがあんなことになっちまって。その……気持ち的なモンとか」

「ああ」


 オバちゃんはトーマと話している間も、鍬を振るう手を休めない。

 精密な機械のように、手早く効率的に畑を耕し続けている。


「そりゃあね、マンタちゃんが死んじゃったのはオバちゃんも悲しいわよ? でもね、この村じゃ老若男女関係なく、誰の上にも平等に死が降りかかるの。オバちゃんがまだ小さい頃にもね、流行り病があってね。そりゃ沢山死んだわよ。子どもも大人も老人も。今はお医者さん一族も絶えちゃったからね。ちょっとした怪我でも、コロッと死んじゃう人もいるのよね」

「その……外から薬とか取り寄せようとか医者を呼ぼうとか、そういう話は無いんですか?」

「本当に必要なものは、村長さんが外の商人さんから仕入れているわよ? でもね、大々的にはやらない。最低限の文明の利器で、自然の恵みと人力だけで暮らす。それが、ご先祖様から受け継いだ、オバちゃん達の()()()()()()()()()? だからね――よっこらしょっと!」


 土に石が混じっていたのか、オバちゃんが巧みな鍬づかいで、畑の外に石を弾き飛ばす。

 石は、段々畑の擁壁に当たって「カツンッ」と甲高い音を響かせながら、下の方へと落ちていった。


「達観、してるんすね」


 「これが自然と共に生きる人々の強さなのか」と、トーマは感心に近い感情を抱いた。

 だが――。


「達観というか、当たり前だしねぇ。それにね、トーマちゃん。ゴサクさんとマンタちゃんの場合は、仕方ないというより()()()()だと、オバちゃんは思うのよ」

「……えっ?」

「だって、二人とも村の禁を破った訳でしょ? そりゃあ、オオカミさまのバチが当たるのも自業自得ってやつなのよ。ああ、ごめんなさいね自分の作業ばっかり。今日トーマちゃんに手伝ってほしいのはね――」


 トーマの全身から血の気が引いていく。

 オバちゃんが何やら説明してくれていたが、トーマの耳にはもう、彼女が何を言っているのかよく聞こえなかった――。


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