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終章 震える魔道書記官、誤字(スペルミス)で英雄になる

今回で本作も連載終了です☆お読みいただきありがとうございました☆異世界モノは初めてでしたが、何とかここまで辿り着けてよかったです☆まだまだ広げるネタはあるのでチャンスがあれば続きを書くかも☆すでに次の作品を書いてるので、うまくいったら次回連載はそれになるかも☆励みになるので、よかったら評価お願いします!またお会いしましょう☆

 アカシックの戦いの終結をもって、理法共和国ロゴスの突然の侵攻から始まったロゴス戦役は終結した。

 理法共和国ロゴスとレガリアス帝国の間には講和条約が結ばれ、両国は以降、相互に不可侵とする条約を締結した。

 

 そもそもの戦争のきっかけが、レガリアス帝国側の虚偽記録――というか、あいまいな言葉の定義による記録だったことが明らかになり、理法共和国も悪いが、レガリアス帝国にも問題ありとして、双方の責任者が処分されることになった。


 帝国側の責任者は、首席魔道書記官の地位にあったヴォルガッシュということになる。

 ヴォルガッシュは理法共和国のスパイであるシフォンを使って帝国を転覆しようとした罪で職務を解任され、現在、ルビチェックの息の掛かった監察官から厳しい取り調べを受けている。

 

 首席魔道書記官の地位は、当然ながら本家であるリリア・ルビ・ルビチェックが継ぐものと思われたが、なんとリリアはこれを拒否。代わりにエルンを首席魔道書記官に推薦した。


 本戦役におけるエルンの活躍を知っているギルガメス皇帝は「救国の英雄として当然である」と否応なくこれを了承。ここに5級書記官就任からわずか数ヶ月で、エルンは帝国の中枢の一角に上り詰めた。

 

「私はもう、だいぶ前に書記官を諦めましたからね。それに今、首席監察官を代わってくれる人も見当たらないですし。……魔道書記官を司るルビチェックの家名は、その、エルンが婿入りしてくれれば……ゴニョゴニョ」


「ん? 最後なにか言ったか? よく聞こえなかったんだが……」

「あ、いえいえ、ひとりごとです……お気になさらず」


 アカシックの戦いの最後、『一括全消去』を企てたがエルンたちによって効果発生を止められ、未遂に終わったゼブラも生死不明だ。

 ロゴス軍降伏後、ゼブラのいた天幕が捜索されたが、ゼブラの姿も、魔道ペン『ジャスティス・レイ』も見当たらなかったのだ。


 直後から、マダム・グロサリアがゼブラをどこかに匿ったのではないかという説のほか、エン・ニョウが脱出させたとの説が出た。

 エン・ニョウはその説を全面否定したし、その証拠も見つからなかった。あくまで噂話だった。


 ゼブラとマダム・グロサリアは、戦後すぐに「お尋ね者」として帝国と共和国全土に手配されたが、まだ見つかっていない。

 

 ただゼブラはどこかで生き延びている、と信じている者がひとり。

 もちろん、ネネである。


 ネネは捕まっている間に、ゼブラと言葉を交わすことで、ゼブラとの間の過去のわだかまりが解けた。

 だが他方、父であるゼブラを倒したエルンに対しては、やや複雑な感情を持つに至っていた。


 そのせいかもしれないが「引き続きオレの専属秘書官に」と願うエルンに対し、ネネは「少し時間が欲しい」と答え、「しばらくひとりで旅に出たい」と言った。

 前はあれだけ「ひとりはイヤ」と言い続けていたのに。

 

 エルンが帝都ルブリウムの外郭まで見送ったとき、ネネはそれまでは妙に元気に振る舞っていたが、別れる間際になると、さすがに想いが溢れてきたようだった。

 

「わたしがいなくなると、きっとルビ……、いやリリアがエルンに迫りまくるかもしれないけど、エルンの心にわたしのスペースを絶対、絶対、ぜったーい取っておくこと! 約束だからね!」

 

「さあ、どうだろうな……リリアはかなり積極的だから、おまえが早く帰って来ないと、オレの心の中のスペースは無くなっちまうかもしれないぞ? ……だから早く帰って来い。約束だ」

 

「……んもう、エルンったらイジワルー。そんなヤツには……こうしてやる!」

 チュッ。

 ネネの唇がエルンの頬に触れた。

「!!」


 不意打ちをくらい、呆気に取られるエルン。

「それじゃ……次会うまで元気で。大好きだよー!」

 ネネは元気いっぱい、ひとり街道を去っていった。

 

「ようエルン、色男はつらいのぉ……」

 ニヤニヤとからかうアンをエルンは憮然とした顔で無視した。もちろん照れ隠しだった。


 かつてヴォルガッシュがいた天井の高い執務室が、いまやエルンの仕事場になっている。

 首席魔道書記官は思いのほか事務仕事が多く、特に文書に直接書き込んだり、署名したりする機会がめちゃくちゃ多い。

 

 ある日、エルンは羊皮紙製の宮廷日誌に「本日の天気・森羅宮全域 晴れ」とうっかり魔道ペンで書いたところ、シフォンの後を継いだ宮廷付き魔道書記官が慌てて執務室に飛び込んで来た。

 

「エ、エルンスト閣下、大変です! 森羅宮全域に『野うさぎ(Hare)』が大発生しています! ……まったく、魔道ペンで迂闊なこと書かないでくださいよ!」

 

 そう、森羅宮全域『晴れ(Hare)』と書いたつもりが『野うさぎ(Hare)』と捉えられたらしい。


「いや……すみません。皇帝親衛隊司令官のバルガス閣下に頼んで、親衛隊のみなさん総出で野うさぎ確保をしてもらいましょうか。もちろんオレ……じゃない、私もつかまえに行きます!」


「相変わらずやなー、エルン。初陣飾ったときとあんまり変わっとらんやないか。このマヌケめ!」

 

 こんな平和でマヌケな毎日が、出来るだけ長く続くといいな、とエルンは心から強く願っている。END

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