scene9 監査官
村人の歓声の中、ティアが近づいてきた。
「やっちゃいましたね」
「やったけど」
「これで完全に犯罪者ですね」
ティアムがまっすぐな瞳で俺を見る。
村人の歓声にテンションが上がっていたが急に背筋に冷やりとしたものが走る。
「観察兵に通報しますね」
「待ってくれ見逃してくれ、助けたかったんだ。
やらなかったら村人が…」
「でも私、資格管理室監査部門監査官なので…」
「しか...しかくか...?」
「監査官で大丈夫です」
「そうか...って言うかそんなことを言っている場合じゃない。
監査室ってなんだよ。
ティア、お前は俺を捕まえるのか?」
「そうしたいところですが...」
「…が?」
「私は捕獲資格がありませんので、あくまで監視です。
通報して捕獲資格を持った監察兵を呼ぶのが仕事です」
「じゃあティアが呼ばなければ...」
「あまり意味がありませんね」
「なんで?」
「だって見てください。このゴブリンの遺体、無資格討伐をしたのがバレバレですよ」
倒したゴブリンを改めて見るもイマイチピンとこない。
「例えばですね。
このゴブリンの死体、肩から胸にかけて損傷していますよね。
この状態だと打撃による損傷から死亡まで約30秒かかっていると推察されます」
「だとしても問題ないだろ」
「はあ...これだから無資格は...。
あのですね。
たとえゴブリンと言えど苦痛を与えてはいけません。
心臓や頭部の確実な破壊、苦痛を感じる間がないようにして倒す。
これが討伐資格の理念ですよ。
死と関係のない損傷は、ご法度です。
「いや...でも村を襲うゴブリンだし...」
「関係ありません
ゴブリンにも生きる権利があり苦痛を最小限に抑える必要があります。
そんなこともわからないから無資格はダメなんですよ」
全く意味が分からなかった。
村を救ってこんなに説教をされるとは…ただ一つ言えることは俺は何かやばい状況になりつつあるという事だった。




