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水彩のフィヨルド  作者: 佐藤産いくら
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4、辛口

 中里 祐也は、噂では芸術一家の出らしい。祖父がフランスで有名な画家になり、両親はアメリカの個展で出会ったらしい。そんな一家に生まれた中里 祐也は、大学に通っている今現時点でも世間から注目されている。


「……え……?」

 その場の空気が滞るのがわかる。誰もが思考停止していたと思う。

 皆が硬直している中で、マイロニーだけはニコニコと微笑んでいた。

「どうかした?みんな。」

 子供が首を傾げるように、実に無邪気な様子で周りを見渡す。中里 祐也のこめかみから顎に向かって、汗が一筋流れた。

「そ………具体的なアドバイスを、いただけませんか……?」

「そうだねぇ、まず手法が古い。こんなの今どき誰も描かないよ?それにモデルがありきたり。花瓶に生けられたガーベラ……一周回ればこれもオシャレなのかもね?でも、一周過ぎればオシャレは気取りに変わる。」

 とんだ辛口だ。中里にここまで言ったのはこの人が初めてかもしれない。

 中里は恐らく生まれて初めてであろう批判に絶句していた。

「変わった描き方……日本では珍しいかもしれないけど、ヨーロッパでは昔描かれていたよ。時代に合わない手法だね。」

 ニコニコと、淡々と続ける。

 対する中里は、憧れの人に作品を批判され、何も言えなくなっていた。

「………あれあれ?どうかしたのかな?みんな静かになっちゃったけど……元気だして?」

 言葉とは合わない心の底から楽しそうな声でマイロニーが言う。

 結局、その日は中里以外誰も作品を見せに行かなかった。中里は、このあと一回も筆を取らなかった。

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