第24話 天空の鳩島と田中さん(前編)
あれから数日が経った。
もはやこの鳩は、ダンジョン関係者で知らぬ人は居ないほどにまで成長していた。
まだ1ヶ月も経っていないというのに。
そして今日は2月7日。
動画配信サイトリリアルにて、ある配信の予約が立てられた。
鳩のチャンネル登録者100万人突破記念配信だ。
サムネは、案内人のような服を着た鳩が、田中さんを巨大な鳩に案内するワンシーン画像だ。
―――チャット欄―――――――――――――――
『来たぁぁぁぁぁぁ』
『待ってました!』
『ここ6日間ずっと待ってたぞ』
『あれからどうなったんだ?』
『田中さんと鳩のその後……早く知りてぇぞ』
『あの時は人が多過ぎて中途半端な所で終わったからずっと消化不良だったんよ……早く見たい』
『サムネの感じどうなんだ?』
『もしかして鳩の家に招待してるんじゃね?』
『鳩の家だとしたらマジで気になる』
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鳩の配信が始まるのと同時に、同接数は約2万を記録した。
「どうも皆さんこんにちは! 鳩系リリアライバーのハトるんだよ! そして隣に居るのが……」
「どうも。ダンジョンキャンパーの田中です。まぁ最近はダンジョンキャンプをあまりしていないのですが、今回はハトるんちゃんが巣?家?を案内してくれるというので来ました……よろしく」
―――チャット欄―――――――――――――――
『田中さん……なんか当たり前のように居るな』
『マジで家だったの?』
『家?鳩って巣じゃないのか?』
『いや、普通の鳩とは勝手が違うだろ』
『気になる』
『そういえば、前に異世界で貰った景品のおかげで10分間だけ田中さんも鳩になれるんよな?』
『田中さんの鳩の姿はめちゃくちゃ気になる!』
『ハトるんが白だとしたら田中さんは何色だ?』
『いや、俺はハトるんの人間姿が気になる』
『↑ハトるんが人間になるのは絶対無理って騒いでた連中をSNSで結構見かけたけど、10分間だけなら別に良くないか? たったの10分だぞ?』
『いや、ハトるんが人に変身するのが嫌なんなら鳩になれる田中さんはどうなるんだよw』
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鳩は翼に付けた配信確認用機材でチャット欄を確認し、早速本題に取り掛かった。
「じゃあ田中さん! 練習の成果を見せてよ!」
「わ、分かったよ……正直恥ずかしいけど……」
田中さんは指輪に手を翳した。
『変身』
辺りが茶色い光りに包まれた。
まるで、田中さんの髪色のように。
―――チャット欄―――――――――――――――
『なんだ!?』
『光ってるぞ?』
『まぶしっ』
『流石に身体が変わるところは見れないのか?』
『異世界の配慮すごっ』
『期待大!』
『どうなるんだ?』
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光が少しずつ収まっていき、中から現れたのは茶色と白色の鳩だった。
田中さんが変身した鳩は、若干ハトるんの面影があり、鳩専用の服を着ていた。
「こんな感じかな……正直に言ってめちゃくちゃ恥ずかしいよ……だって鳩ってほぼ裸じゃん」
「みんなどうかな? 田中さんの鳩姿は……」
―――チャット欄―――――――――――――――
『可愛い……けど……』
『可愛いんだけどな…………』
『田中さんの顔がちらつくw』
『なんか田中さんとハトるんを足して2で割った感じだな……可愛い……可愛いんだけど惜しい』
『ま、まぁ可愛いから』
『田中さんの見た目が爽やか風のイケメンだから鳩のイメージが一切無いってのがなぁ……』
『チャット欄結構厳しくて草』
『あんなに期待してたのになw』
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田中さんはしょんぼりした。
自分が恥をしのいで変身した姿を見たチャット欄の人達の反応が芳しくなったからだ。
そんな田中さんを見た鳩は気をかの使ったような反応をした。
「田中さん……10分の時間制限が切れるから早く私の家に行かないと……間に合わないよ!」
「あ……確かにそうだよな……」
「今から行くと……早くて5分かな……」
―――チャット欄―――――――――――――――
『鳩にならないと行けないところ?』
『空か?』
『少なくとも地上ではないな』
『どこだろう?』
『早くて5分って間に合うのかな?』
『田中さんって結構場の状況に流されるよなw』
『だから不憫な立ち位置なのか?』
―――――――――――――――――――――――
『バサッ……バサッ……』
「田中さん……行くよ!」
「分かった」
鳩と田中さんは大空を羽ばたいた。
田中さんは慣れない翼で風に煽られながらも、鳩に付いていくために一生懸命飛んで行った。
〜7分後〜
「は、ハトるんちゃん……まだ着かないの……もう……流石に……体力が……持たないよ……」
「大丈夫! もう見えてるから!」
鳩と田中さんの目の前にあるのは、翼を広げて飛んでいる1匹の鳩だけ。
―――チャット欄―――――――――――――――
『どこだ?』
『鳩しかいなくね?』
『透明になるスキルでも使ってるのか?』
『家と言えそうなものは無いぞ?』
『見えない……』
『田中さん落ちそうだよ……』
『間に合うか?』
―――――――――――――――――――――――
「は……ハトるんちゃん……どこにも……見えないんだけど……どこにあるの……もう無理……」
「着いたよ!」
「って……え!?」
田中さんとハトるんの目の前に飛んでいた鳩に近付くと、突然巨大な鳩型の島が現れた。
島の周りには何百匹もの鳩が飛んでおり、まるで人間のような生活をしている鳩もいた。
「ここが私の家! 世界中の鳩が夢見るほどの楽園! 鳩ノ島だよ!」
―――チャット欄―――――――――――――――
『えぇぇぇぇぇぇぇ!?』
『どこから現れた?』
『島!?』
『おいっ、服を着てる鳩しかいないぞ?』
『鳩ノ島って……マジか』
『鳩による鳩だけの鳩の為の島ってことか?』
『やっべぇ』
『これ、なんで今まで気付かなかったんだ?』
『衛星でも分からなかったってことじゃねぇか』
『エグいスキルが使われてるだろうな(確信)』
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「ハトるんちゃん……これって……」
「この鳩ノ島は凄いんだ! 世界中にいる鳩が首を縦に振っているのは、鳩達がこの鳩ノ島を求めて、ずっと目指し続けているからなんだよ!」
チャンネル登録者数100万人の記念配信。
それに相応しいものになるように鳩は自分の家を紹介しようとしたが、田中さんも、チャット欄の人達も、あまりに予想外な家に騒然となった。




