第13話 鳩カフェオープンと来訪者
2月1日。
遂に世界初、人間ではない生物の鳩が経営するカフェがオープンした。
店の前に並んでいる人の数は、とても開店初日とは思えない程で、整理券が配られた。
それもそのはず、鳩のカフェで提供されるランチが魅力的すぎたのだ。
「鳩カフェは今日からスタートです」
「クルッポー!」
店頭でお客さんを前にして声を上げたのは、田中さんと白い鳩。
鳩カフェオープン記念というタイトルに、鳩の頭をした人間が回転寿司のように料理を提供しているサムネは、毎度の事ながら人々を焚き付けた。
―――チャット欄―――――――――――――――
『おめでとう!』
『人凄いな』
『大体200人くらいか?』
『何分待ちだよ』
『まぁメニューがエグいからな』
『てか、何気に配信開始から1万2000同接ってエグいんよな……記念配信なのもあるけど……』
『田中さんレギュラーメンバーで草』
『もうコラボとか無いんやろ』
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配信を見ている人はまだ気付いていなかった。
鳩カフェオープンの記念すべき1番客……そして4番客の事に。
「ハトるん……礼を言う。誘ってくれてな」
「ハトるんありがとーう!」
「初めて外に出たよー!」
「ありがとう!」
イヌ、サル、キジ、人の4体。
先日の配信で一緒に宴をしたモモタロウスの4体がダンジョンの外に来たのだ。
―――チャット欄―――――――――――――――
『え?』
『嘘だろ!?』
『モモタロウスじゃねぇか』
『これって大丈夫なのか?』
『暴れたら大事件だぞ』
『いや……でも、モモタロウスなだけマシか』
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モモタロウスの4体はカフェの店内に入るとその内装に驚いた。
照明から垂れ下がる糸には鳩が付いてあり、まるで太陽の光の下で鳩が飛んでいるようだった。
店内の椅子と台は、まるで白い翼を広げたようになっていた。
モモタロウスは椅子に座り、メニュー表を広げて選んでいた。
「ハトるん……我は、この地下野菜の世界カレーと炊きたて日本歌米をお願いするぞ」
「じゃ僕もそれにする!」
「僕も」
「みんながそれにするなら僕も!」
モモタロウがカレーにすると、イヌ、サル、キジもカレーにした。
―――チャット欄―――――――――――――――
『豪華すぎんだろ』
『あぁ〜俺も食べたいな〜〜』
『行ぎだがっだ』
『これ、カレーなのにSNSで映えるな』
『こんなのカレーじゃなくて華麗やん』
『華麗なコメントありがとな』
『カレーライスだけにってか?』
『なんかここおっさん臭いな』
『おっさんじゃなくて乙讃な』
『だから臭いって』
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注されたメニューを作っているのは、上田さん率いる一流料理人。
ダンジョンの料理が作れると知った料理人は、みんなこぞって料理人募集に集まった。
それもそのはず、普通の料理人は、ダンジョン素材が高価すぎて採算が取れず、扱う事が出来ないからだ。
「お待たせしました。地下野菜の世界カレーと炊きたて日本歌米です! お召し上がれ!」
田中さんが台の上に置き、田中さんの肩の上に乗った鳩がサービスした。
―――チャット欄―――――――――――――――
『うまほー』
『今日の夜ご飯はカレーやな』
『↑彼はライスを忘れた』
『なんで今日はコメ欄がこんなに臭いんだ?』
『昨日掲示板で話題になってたから親父世代のネット民が駆け込んだんやろ……ワイがソースな』
『あぁ〜なんで店が東京なんだ……』
『確かに地方は中々行けんよな』
『同接3万で草』
『このチャンネルって安定して3万超えるよな』
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「では、頂くぞ」
配信のカメラはモモタロウをドアップで映し、モモタロウの食レポを待った。
「なんだこれは!?」
モモタロウは頬を赤くして目を瞑った。
「この味は……カレーの中にあるコクだけでない。肉から出た肉汁がカレーの中にあるコクを引き立て……野菜から出た旨味が肉汁を出した肉に味をつける。ただカレーの味がついているのではない。それぞれが旨味の一員となっている。そして……このホカホカなお米がその旨味を駆け抜ける。これはまるで1つの物語だ。1つ1つの要素が合わさって物語を引き立てる。何かが欠けてはならない。全部が主役なんだ……。無駄なところなんてない……我が今まで食べて来た料理は、このカレーライスを引き立てる為にあったんだ……」
モモタロウが食レポをしてる間、イヌもサルもキジも、無我夢中で食べていた。
―――チャット欄―――――――――――――――
『なんかモモタロウさんキャラ崩壊してね?』
『なんで上田さんルートなんだよ』
『モンスターなのに語彙力凄いな』
『これは語彙力というより想像力やろ』
『あぁ〜俺も食べてぇな』
『見た目だけで絶対美味いと思ったんよな』
『なんか俺、心無しかこのカレーライスが日本の国旗を半分に分けた料理に見えてきた……』
『↑洗脳されてるぞ』
『大和魂もここまで行ったか』
『まぁ確かに、ルーが赤色だったら、半分にした日本の国旗になるな……このルーは茶色やけど』
『草』
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モモタロウスの4体は、あっという間にカレーライスを食べ終わると鳩にお礼を言った。
「ハトるん……美味しかったぞ。また来る。その時は我のダンジョンからも食材を持ってこよう」
「美味しかったー!」
「また食べに来たい!」
「もうお腹いっぱいだよ〜」
口の周りにカレーを付けた3匹はモモタロウに口を拭いてもらうと、カレーライスの料金500円を出して、鳩に手を振りながら帰って行った。
モモタロウスに恐怖していた周りの客は、提供された料理を食べると、モモタロウスの恐怖なんて忘れて無我夢中に食べた。
それから時は経ち、配信も終盤となった。
◆◆◆
―――チャット欄―――――――――――――――
『っていうか昨日の夜に政府が開店前にこのカフェを調査するって言ってたのに音沙汰なくて草』
『合格やったんやろ』
『噂程度だけど、あまりの美味さに「これは世に出さないと駄目だ」ってなったらしいぞ』
『なら大丈夫なのか?』
『とりあえず食品衛生法関連は大丈夫そうやな』
『終始生殺しだったわ』
『みんな良い顔してたわ』
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鳩はチャット欄を見るとクスッと笑い、白くて小さい翼を振った。
「それじゃあみんな! またねー!」
鳩のカフェは大成功に終わった。




