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第1話 平和の象徴

ずっとずっと昔の事。


世界中にダンジョンが現れ、地球は一変した。


ダンジョンの中には異形の化け物……モンスターと呼ばれる生物が生息し、当時の人間はモンスターの脅威に抗う事が出来なかった。


ダンジョンが現れた日を西暦1年とし、その日から人類の飛躍的な進化が始まったのだ。




【第1話】平和の象徴




東京都港区。

東京タワーの地下ダンジョン。

そこで、1匹の鳩が配信を始めようとしていた。


『現役鳩がダンジョン配信!』という奇妙なタイトルに、でかでかと映った白い鳩が、ダンジョンを小さな足で潰しているサムネだった。




―――チャット欄―――――――――――――――


『なんだこのサムネ』


『現役鳩がダンジョン配信って何?』


『他ダンジョン配信者に割り込むってことか?』


『おっ……配信始まった』


―――――――――――――――――――――――




同接は約50人。

新人ダンジョン配信者としては異例の数字だ。



「クックークー」



配信開始と同時に画面に映ったのは、白い鳩がモンスターをフル無視してダンジョン内を自由に飛び回っている映像だった。


配信を撮っているカメラはダンジョン専用のもので浮遊し、白い鳩を追いかけている。


ダンジョンの天井にある隙間から太陽の光が差し込み、飛び回る鳩を照らす配信映像は、まるで宗教画のような神々しさがあった。




―――チャット欄―――――――――――――――


『は?』


『鳩が配信だと!?』


『何かの実験か?』


『演出込みすぎだろ』


『いや、どこの役者だよw』


『ダンジョン内で神々しさを感じの初めてだわ』


『↑それも鳩でな』


―――――――――――――――――――――――




「クックークックークー」



鳩は道が分かっているかのようにダンジョン内を飛び進んで行くと、全身が鎧に覆われた巨大なモンスターが鳩の視界に映った。



「ゴォォォォォォォォォォォ」



モンスターの目にも鳩が映り、気が付いたモンスターは、とてつもない速度で前から迫って来る。


モンスターは鳩を噛み殺す気だ。




―――チャット欄―――――――――――――――


『クマみかどじゃねぇか』


『おいおいマジか……』


『クマ帝って事はもしかして、画面に映っているダンジョンは、東京タワー地下ダンジョンか?』


『ヤバすぎるだろ』


『流石に鳩は勝てないって』


『なんでこの鳩は向かって行ってるんだ?』


『逃げてぇぇぇぇ』


―――――――――――――――――――――――




クマ帝と鳩との間距離が40メートル程になると、鳩は何故か速度を落とした。


鳩が速度を落とした為、今までは聞こえなかった鈍い羽音を発しているモンスターが、後ろから近づいて来た。



『ブゥゥゥゥゥン』

『ブゥゥゥゥゥン』




―――チャット欄―――――――――――――――


『嘘だろ!?』


象蜂ぞうばちだと……』


『確か象蜂の大群って戦車も殺られるよな?』


『前からクマ帝。後ろから象蜂。やばくね?』


『配信が始まって2分で事故映像はやばいって』


―――――――――――――――――――――――




チャット欄を心配した浮遊カメラは、周りの全体映像を映し、鳩が蜂の巣を足で掴んでいる映像を視聴者に届けた。



「クー(ポイッ)」

『バッシャァァァァァァン』



鳩がクマ帝の噛みつき突進を避けて、すかさず足で掴んでいた蜂の巣を後ろに投げると、クマ帝の全身にかかった。


蜂蜜の匂いと蜂の巣がクマ帝に付着すると、迫って来ていた象蜂の標的はクマ帝に変わった。




―――チャット欄―――――――――――――――


『えぇぇぇぇぇぇぇぇ』


『クマ帝と象蜂って対立するの!?』


『初めて知った』


『いや……ダンジョンのモンスターは、それぞれ敵対してるとかは聞いたことあったけど……』


『故意に敵対できるものなのか?』


『そもそも誰もやろうとしねぇよ』


『危険過ぎる……』


『こんなの命がいくつあっても足りんわ』


―――――――――――――――――――――――




『ガォォォォォォォォォォォ』

『ブゥゥゥゥゥン』

『ブゥゥゥゥゥン』




―――チャット欄―――――――――――――――


『やっぱり何かの実験だよな?』


『クマ帝と象蜂の戦いって貴重だよな』


『やべぇぇぇぇ』


『映像えっぐ』


『鳩ってこんなに知性高かったのか?』


『いや、この鳩が別格なだけだろ』


『これ、鳩じゃなくてハチクマだろ』


『↑の人は何言ってんだ?』


―――――――――――――――――――――――




クマ帝は襲ってきた象蜂を殲滅すると、白い鳩を襲うこともなくバタンと倒れた。


全身に回った毒により弱っていたのだ。



「クークー」



鳩は、倒れたクマ帝の上に止まると、配信を映している浮遊カメラを見た。




―――チャット欄―――――――――――――――


『なんでカメラ目線なんだよw』


『流石にどっかの国の実験だよな?』


『モンスターをこんなやり方で倒してる人……初めて見た……あっ、鳥だったな』


『確か白い鳩って平和の象徴だよな?』


『こんな倒し方する平和の象徴とかいねぇよw』


―――――――――――――――――――――――




「クークークックー」



鳩のつぶらな瞳が配信画面に映り、周り落ちている巨大な蜂と、倒れている巨大なクマとのギャップがもの凄く、チャット欄は更に盛り上がった。




―――チャット欄―――――――――――――――


『そんな目をされてもな……』


『無理があるだろ』


『何か言いたいのか?』


『いや、分かんねぇよ』


『ってか、どうやって配信してるんだ?』


『開拓し過ぎだろ……鳩の配信とか』


―――――――――――――――――――――――




「みんな! これからよろしくね!」




―――チャット欄―――――――――――――――


『喋れるのかよ』


『普通に喋れるじゃねぇか』


『裏で誰か喋ってんのか?』


『今までの鳴き声は何だったんだよw』


―――――――――――――――――――――――




これは、世界中にダンジョンが現れてから長い年月が経ち、2026年1月15日に活動を開始した配信鳩が世界を変える物語。


まだ人間の言葉を覚えたばかりの鳩がダンジョンで暴れ回って宴を開いたり、世界中をざわつかせたり、現実社会でリスナーや関係者を振り回して祝福を授ける……そんなお話だ。

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