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人生  作者: yoshi88
:1.17 第一章 始まりの物語
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1.天使の梯子

1995年1月15日、今日は成人式だ――。


 無論、受験勉強を甘く考えてはいない。地元の高校でも成績は中の上だし、どこか自宅から通える大学に引っ掛かれば良いと考えていた、が、結局どこも引っ掛からずに僕の受験は終わった。


 酷く落ち込んだ僕に担任の先生は、


「一浪しても、行きたい大学を受けてみれば?」


と促してくる...。


その時の僕は人生初めての挫折でプライドもずたずたに崩壊し、


(...どうでも良いや...。)


投げ遣りな気持ちに傾いてしまって、


「先生、20歳の一年と40歳の一年では、一年の重みが違います。僕は浪人なんて絶対にしない!」


と啖呵を切ってしまった...。


 父親に、


「僕は役者になりたい」

「出て行け!」


といきなり雷が落ちた...。


根っからの職人肌である父の了承が取れるはずもなく、父と同じ仕事は絶対に就きたくないと内心軽蔑していたが、結局、僕は名前と入学金さえ支払えば”誰でも入れる”建築の専門学校に通う事にした...。


あれから一度も地元の友達と会っていない。


 今日は成人式だし、


(...色々聞かれるのも嫌だなぁ...。)


しかし、成人式に行かない訳にはいかない...。後悔したくない。


(...どうにでもなれ!...。)


僕は玄関を出た...。


・・・バスに揺られて尼崎スポーツセンターの体育館で、式は厳かに執り行われた。テレビでは東北の何処かの会場へバイクが乱入し、毎年問題になっている地域があるらしいが、僕達の成人式はそんな事は全くない。


 粛々と行事は進行し、君が代が流れた時、


(...二十歳になっても歌詞の意味が全く分からないな...。)


と思っていたら、いつの間にか式は終了した。


「よっちゃん、久しぶり!」


 会場の外に見知った顔がちらほら見つかった。谷村、奥藤、中西――。

中学生時代に一緒にボーリング場に行ったり、ゲームセンターで格闘技ゲームに嵌った悪友だ。皆んな成長しているが少なからず昔の面影が残っていて、直ぐに昔に戻ったような錯覚をしてしまいそうになる。


僕は、中学時代生徒会長をしていたのに高校になると思春期のせいか、人前に出るのが嫌になった。


(...ここにいるメンバーは全員中学生時代の友人だ...。)


少しほっとした表情を隠すように僕は旧友の輪の中に入っていった。


「折角集まったし、空中庭園に行こうよ」


奥藤の良く響く声を懐かしく思いながら、僕達は大阪の梅田にある空中庭園へ向かう事にした。


・・・夏に"都会で蛍を放すイベント"でここを一度だけ訪れた事を思い出す。梅田からのアクセスが悪く、20分ぐらい少し冷え込む冬の繁華街を、僕達は黙々と歩いて行った。


 「空中庭園」は、高層ビルとビルの間を空中で繋いでそこを庭園にしている。大したことはない何処にでもありそうな空間だけど、いざ上まで登ると夕刻の心地良い風が、僕の頬を撫でてゆく――。


「・・・あれ、なんだ?」


谷村が指差した西空の雲の隙間からスーッと下の方まで一筋の光が指していた。


(...天国への階段...天使の梯子だったか?...。)


妙に怪しげで美しいその光景を、隣にいた中西と僕はただ、じっと凝視していた。

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