無限リピート
俺は小さなショルダーバッグを手に入れた。
グレアムさんがしばき倒した黒猫=暗闇妖精が落としていったアイテムだ。
正直、一発殴っただけで相手が倒れたのには驚いた。
グレアムさんは大して力を入れずに軽く殴っていたように見えたけど、猫がきりきり舞いしてバッタリ倒れたのは、あれは死んだフリだったんだろうか。
バッグを落としていったのは、トカゲの尻尾切り的な、アイテムに注意を引き付けて本体が逃げるためかも?
それはさておき。
「このバッグの中に暗闇ランプが入っていれば依頼達成ですね!」
うなれ俺のビギナーズラック!
ガチャを回すような気持ちでショルダーバッグを開ける!
……。
「こんなん出ましたけど」
「はずれでしたね」
ショルダーバッグから出てきたのはキノコとドングリだった。
「これって貴重なアイテムだったり?」
「全然貴重じゃないですね。その辺に生えてるキノコとその辺に落ちてるドングリです」
「素材として売れたり?」
「売れませんね。薬効が期待できないので」
「食材として利用するとか?」
「毒ではありませんが、美味しくないので人間は食べませんね」
俺はキノコとドングリを捨てた。
「次行きましょう!」
※
……出ない。
暗闇ランプが出ない。
あれから何回、暗闇妖精を倒したか。
その都度ショルダーバッグを落として逃げていくのだが、ろくな物が入っていない。
鳥の羽とか、ちょっと綺麗な小石とか、枯草の束かなんか、たまにキノコ、そしてドングリとか、ドングリとか、ドングリとか!
どんだけドングリ好きなんだよ!!
「このドングリってマジックアイテムだったりしませんか!? 暗闇妖精が致死ダメージくらってもドングリの数だけ無傷で復活するとか!」
「そんな効果はありません。ただのドングリですよ」
「それにしてはさっきから何回も何回も同じ個体ばかり出て来てるような気がするんですけど!」
そう、イラっとくる原因の一つは、出てくる暗闇妖精がまったく同じ顔・同じ体・同じ装備で同じ行動を繰り返していることにある。
リピートしてるんだよ、同じ出来事を!
ループしてるんだよ、同じ時間を!
「落ち着いてください。同一個体のはずはありません。同一個体だとしたら、殴られても殴られても懲りずに寄ってきていることになりますよ。さすがにそこまで馬鹿ではないでしょう」
「でも毛色一緒だし、顔一緒だし、カバン斜め掛けしてるのも一緒だし!」
「暗い上に猫の顔なので区別がつきにくいですが、よく見ると違いがあるはずです」
「どこらへんが!?」
「ヒゲの本数とか尻尾の長さとか」
間違い探しかよ!
そういう細かい違いを探すの苦手なんだよ!
イラっとくるんだよ、イラっと!
「あの~…」
恐る恐る、という様子でミラーカさんが会話に入ってきた。
腕の中に最初に捕まえた暗闇妖精を抱っこしている。
猫は嫌そうだが。
「私も同じ猫が繰り返し出てきてると思います」
「は?」
「私は暗くても目が見えますし。さっきから見てると出てくる子みんなそっくりです。ヒゲも尻尾も全く一緒です。どこにも違いが見当たりません」
「は?」
「それに魔力パターンが完全に同一です。魔力パターンは人間でいう指紋みたいなものですから、別の猫なら別のパターンになるはずなんです。それが完全に一致してるので…一匹が繰り返し出てきてるとしか」
「はあああ~?」
目を丸くするグレアムさん、この人にしては珍しい表情である。
「殴られてアイテムを奪われているのに、性懲りもなく寄ってきてるんですか? なぜそんな繰り返しを?」
「あの~、多分なんですけど」
ミラーカさんはおずおずと俺を、正確には俺の武器を指さした。
「その棒が原因ではないかと。それマジックアイテムですよね?」
「「はあああ~??」」
今度は俺がぽかんと口を開けて呆ける番だった。
いや、グレアムさんと二人でか。
この棒がマジックアイテム?
初めて聞いたよ!?
ふと作品情報を見たら、総文字数が10万超えてました。
そんなに書いたかー。
なんか車の走行距離がメーター一周したみたいな感慨があります。
エンディングまでまだ遠いけど。
のんびり書きます。




