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104 ドグラス到着

 俺達、ヴェステル王国別働隊は森を抜け、平原に出た。聞こえてくる音から想像した通り、人類軍と魔族軍の大規模会戦の最中だった。

 人類軍にはフィーナ王国国王軍の旗が見える。国王軍が無事にレブロの援軍に来たようだ。加えて、ウェンスト公爵旗も見えた。

 人類側は魔族軍を正面から受け止め、せめぎ合っている。


「会戦は始まったばかりだな。趨勢は決していない」


 ユリアン王子の言葉に俺は頷く。


「ええ。間に合った。さて、どう立ち回るか……」


 俺達の位置は魔族軍の後方、人類軍との合流は難しい位置だ。挟撃できると言えば聞こえは良いが、単独で大軍に襲いかかるには数が足りない。森に入るときに馬を捨ててしまったため、機動力も不十分だ。


 俺は戦場を見渡す。まず目に付くのが龍の巨体だ。


古龍(エンシェントドラゴン)とその護衛戦力らしき一団が後に外れて、しかし前進中……なるほど。エリーサ様対策か」


 国王軍が居るのだ、エリーサ様も居ると考えるのが自然である。エリーサ様の攻撃が命中すれば古龍とて撃破できる。古龍はエリーサ様の攻撃の射程外で停止したため、後ろにいるのだろう。

 その上で古龍が前進していると言うことは魔族はエリーサ様の攻撃を封じたことになる。

 だが、エリーサ様が討たれたということはない筈だ。それなら国王軍は動揺し崩れている。恐らく、魔族はエリーサ様に最精鋭『宝石持ち』をぶつけて抑えているのだ。


 などと考えていると、遠く人類軍の中から対龍級の魔力槍が束で打ち上がる。一撃であの攻撃規模はエリーサ様だ。目を凝らすと空に点のように小さく、飛び回る何かが見えた。話にあったレミート・クンツァイトだろう。


 状況は概ね理解できた。問題はどう動くか。


「古龍を狙いたいですね。このままだと人類軍の隊列がブレスで攻撃される。ただ護衛もきっちりいる」


「ああ。魔族100体にモンスター200体といったところか。簡単には抜けないな」


 古龍の周りには護衛として魔族とモンスターの混成部隊がいた。恐らく護衛の魔族は精鋭だ。加えてモンスターもギガントベアを始め強力な種類で固めている。

 それでも、護衛戦力だけなら俺達で倒せるだろう。しかし古龍そのものが強大な戦闘力を有する。迂闊に近づけばブレスで薙ぎ払われてしまう。


「統合魔術も、敵の射程外からでは防壁で防がれますね」


 対古龍となれば『統合魔術』だが、この場にいる魔術師は俺を含めて11人だけ。サルドマンドのとき程の火力は出ない。護衛の魔族達に防御されるだろう。


「だな……統合魔術の攻撃で敵を抑えつつ、俺とブリュエットで削っていくか」


「はい。私もそれしかないと思います」


 ユリアン王子の言葉にブリュエットさんが返す。

 『統合魔術』で攻撃すれば、古龍を護衛する魔族は防御に徹するだろう。そこを攻撃し少しずつ敵を削る作戦だ。


 古龍のブレスは防御困難。躱すしかないが、それができるのは俺とユリアン王子とブリュエットさんの3人ぐらいだ。結果、削り役は二人になってしまう。

 ユリアン王子とブリュエットさんに危険な役割を押し付けるのは気が引けるが、さりとて妙案もない。


「申し訳ないですが、俺もそれ以上の案は思い浮かびません」


 ユリアン王子は俺の言葉に頷くと、声を張り上げる。


「よし! ブリュエットを除く宮廷魔術師はドグラス殿の統合魔術にて遠隔攻撃! 近衛はそれを護衛せよ。俺とブリュエットで敵を攻撃する!! ヴェステル旗を掲げよ!」


 ユリアン王子の指示で宮廷魔術師と近衛が配置に付き、ヴェステル家の旗が掲げられる。そして、ユリアン王子とブリュエットさんが古龍目掛けて突撃した。


 俺は早速『統合魔術』の構築を開始する。人数が少ない分、構築にかかる時間はサルドマンドの時より短い。魔力槍を構築し、放つ。


 放たれた強大な魔力槍は弧を描き、ユリアン王子達を追い抜いて古龍に迫る。


 ーーそして案の定、大量の魔力防壁が空中に展開された。咄嗟に数えきれないが、防壁の枚数は20を超えているだろう。魔力槍はそれを次々と貫き、しかし、途中で砕け消える。


 やはり防がれた。


 古龍が体の方向を変え、ブレスを放つ。狙いは自分に向けて突撃してくるユリアン王子とブリュエットさんだ。二人は素早く反応して横に大きく飛び、破壊的な魔力の奔流を躱す。


 古龍の周辺に展開するモンスターにユリアン王子が斬りかかり、巨大な狼型モンスターの首が飛んだ。ブリュエットさんも魔力槍を放ち、ギガントベアの胴を撃ち抜く。


 俺は次の大魔力槍を構築、先程より軌道を僅かに下に逸し、古龍足下の護衛魔族を狙う。しかし、一発目同様に魔力防壁に阻まれた。狙いを外されズレた位置に展開された魔力防壁もあったが、半数程は適確に軌道を読んできた。やはり護衛の魔族は精鋭だ。


 古龍はユリアン王子の方向を向きつつも、足を動かし人類軍の方向へ移動している。後ろ歩きしているせいで速度はかなり落ちているが、止まってはくれない。


「中々厳しいな……」


 俺は奥歯を噛み、次の魔力槍の構築を開始した。


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