第1話 ピーターラビットのおはなし
むかしむかし、四匹の小さなうさぎがいました。
名前は――
フロプシー、
モプシー、
カトンテール、
そしてピーターです。
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四匹は、お母さんうさぎといっしょに、大きなモミの木の根元の、土手に掘られた巣穴で暮らしていました。
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ある朝、お母さんうさぎは子どもたちに言いました。
「みんな、野原へ遊びに行ってもいいし、小道へ行ってもいいですよ。でも、マグレガーさんの畑へだけは行ってはいけません。
お父さんはあそこで災難にあってしまいました。マグレガー夫人にパイにされてしまったのですから。」
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「さあ、行ってらっしゃい。でも、いたずらはだめですよ。
お母さんはお出かけしてきます。」
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お母さんうさぎは、かごと傘を持つと、森を抜けてパン屋さんへ出かけました。
そこで黒パンを一斤と、干しぶどう入りのパンを五つ買いました。
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おとなしいフロプシーとモプシー、それにカトンテールは、小道へブラックベリーを摘みに出かけました。
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ところが、とてもいたずら好きなピーターは、まっすぐマグレガーさんの畑へ走っていき、門の下をくぐり抜けてしまいました。
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まずレタスを食べ、
それからインゲン豆を食べ、
さらにラディッシュまで食べました。
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ところが食べすぎて少し気分が悪くなり、今度はパセリを探しに歩き始めました。
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ところが、きゅうり棚の角を曲がったそのとたん――
なんと、目の前にいたのはマグレガーさんでした。
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マグレガーさんは若いキャベツの苗を植えていましたが、
ピーターを見るや飛び上がり、
熊手を振り回しながら追いかけてきました。
「この泥棒め! 待て!」
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ピーターは、すっかり恐ろしくなってしまいました。
夢中で畑じゅうを走り回りましたが、門へ戻る道をすっかり忘れてしまっていたのです。
キャベツ畑で片方の靴を失い、
もう片方はじゃがいも畑で脱げてしまいました。
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靴をなくすと、ピーターは四本足で走りました。
そのおかげでずっと速く走れたので、このまま逃げ切れたかもしれません。
ところが運悪く、グーズベリーの網に突っ込み、新しい上着の大きな金色のボタンが引っかかってしまいました。
青い上着は、おろしたばかりでした。
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ピーターは、もう助からないと思いました。
大粒の涙をこぼして泣いていると、その泣き声を近くにいた親切なすずめたちが聞きつけます。
すずめたちは大あわてで飛んできて、
「あきらめちゃだめ!」
と励ましました。
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そこへマグレガーさんが、ふるいを持ってやってきました。
ピーターの上へかぶせようとしたのです。
けれどピーターは、ぎりぎりのところで体をくねらせて抜け出し、上着だけを残して逃げました。
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そのまま道具小屋へ飛び込み、
大きなミルク缶の中へ飛び込みました。
隠れ場所としては申し分ありませんでしたが、中には水がたっぷり入っていました。
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マグレガーさんは、
「ピーターはきっとこの小屋の中だ。植木鉢の下にでも隠れているに違いない。」
と思いました。
そこで植木鉢を一つずつひっくり返しながら、ていねいに探し始めました。
そのとき、
「ハクション!」
ピーターがくしゃみをしてしまいました。
マグレガーさんは、たちまち飛んできました。
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足で踏みつけようとしましたが、
ピーターは窓から飛び出しました。
その拍子に植木鉢を三つ倒してしまいます。
窓はマグレガーさんには小さすぎましたし、追いかけるのにも疲れてしまったので、仕事へ戻っていきました。
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ピーターは腰を下ろして休みました。
息は切れ、体は恐怖で震え、どちらへ行けばいいのかも分かりません。
水の入った缶に入っていたせいで、体はびしょ濡れでした。
しばらくすると、
ぴたっ、ぴたっ、と小さな足音を立てながら、
あたりを見回して歩き始めました。
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塀に小さな扉を見つけました。
けれど鍵がかかっていて、
丸々とした小うさぎがくぐれる隙間もありません。
その近くでは、一匹のおばあさんねずみが、森の家族のためにえんどう豆やさやいんげんを運んでいました。
ピーターは門までの道を尋ねましたが、
ねずみは大きなえんどう豆をくわえていたので返事ができません。
ただ首を横に振るだけでした。
ピーターはまた泣き出してしまいました。
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そこで畑をまっすぐ横切ろうとしましたが、
進めば進むほど道が分からなくなりました。
やがて、水やりじょうろに水をくむ池へたどり着きます。
そこでは一匹の白猫が金魚をじっと見つめていました。
まるで置物のように動きません。
けれど、ときどき尻尾の先だけが生き物のようにぴくりと動きます。
ピーターは話しかけないほうがいいと思いました。
いとこのベンジャミン・バニーから、猫の恐ろしさを聞いていたからです。
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ピーターは道具小屋のほうへ戻りました。
するとすぐ近くで、
ザクッ、ザクッ、ザッ、ザクッ……
という鍬の音が聞こえてきます。
ピーターはあわてて植え込みの下へ隠れました。
しばらく待っても何も起こらなかったので外へ出ると、一輪車によじ登って、そっと向こうをのぞきました。
すると見えたのは、玉ねぎを耕しているマグレガーさんでした。
背中はピーターのほうを向いています。
その向こうには――門がありました。
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ピーターは音を立てないよう一輪車を降りると、
ブラックカラントの茂みの陰をまっすぐ走りました。
角でマグレガーさんに見つかりましたが、もう気にしている暇はありません。
門の下をするりとくぐり抜け、
とうとう畑の外の森へ逃げ出すことができました。
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マグレガーさんは、
青い上着と小さな靴をかかしに着せ、
クロウタドリよけにしました。
ピーターは一度も振り返ることなく、
大きなモミの木の巣穴まで走り続けました。
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あまりにも疲れていたので、
巣穴のやわらかな砂の上へ倒れ込み、
そのまま目を閉じてしまいました。
お母さんうさぎは夕食の支度をしていました。
ピーターの服がどこへいったのか、不思議に思います。
この二週間で、
上着も靴もなくしたのは、これで二度目でした。
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残念なことに、
その晩、ピーターは具合が悪くなってしまいました。
お母さんはピーターを寝かせ、
カモミールのお茶を入れて飲ませました。
「寝る前に、大さじ一杯ですよ。」
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そのころ、
フロプシーとモプシー、それにカトンテールは、
パンとミルク、それからブラックベリーの夕食を楽しんでいました。
おしまい




