音村 暁人 2
空は走りながらメッセージ送っていた
(暁人から返信はない…うう…心配だよぉ)
(暁人に連絡つかない時は…あの人達に……」
「いたぞ!あそだ!!」
「!!」
(怖い…怖いよお…暁人助けて……)
空は涙目で、また走り出した
ーーー
「はぁ……はぁ……もう逃げらんねぇぞ……!」
「はぁ…はぁ…足早すぎんだろ」
「………はぁ……はぁっ」
空が逃げ込んだのは、巨大な橋の上だった。
(ここなら来てくれるかも知れない…もし来なくてもここなら……)
「大人しくしてれば優しくすっからよw」
「近づかないで! それ以上近づいたら、ここから飛び降りるから!!」
空が橋の欄干に身を乗り出すと、男たちはせせら笑った。
「おいおいw 空ちゃん駄目だよー、命を粗末にしちゃあ」
「それに……空ちゃんw これw 見てw」
クラスメイトの男が、スマホの画面を見せつけてきた。
そこには……血まみれで倒れている、暁人の姿が映っていた。
「暁人……!! アンタら……!!」
「空ちゃ〜んww 空ちゃんが俺らの言う事聞けば、暁人を解放してやるよw もし断れば……わかるよな?」
空は、静かに橋の欄干の上に立った。
「え? は? 空ちゃん何してんの?」
「死ぬ」
「は?」
「アンタらみたいなゴミに身体触れられるくらいなら、死ぬ」
「いやいや! お前が死んだら、暁人もヤベー事になるんだぞ!!」
「別に、いいよ。……一緒の日に死ねるなんて、最高に幸せ」
空は、うっとりとした笑顔で夜空を見上げた。
(私は暁人のモノ……。髪も、顔も、身体もぜーんぶ暁人のモノ。暁人も、自分のモノが他人に穢されるくらいなら、無くなった方がいいよね? ふふ……待っててね、暁人。綺麗な身体のまま、そっちに行くから)
「クソッ! おい! あの女を早く捕まえろ!!」
男たちが一斉に欄干へ向かって飛び込んでくる。
(暁人……好き……大好き……。あっちなら、ずっと二人きりになれるかな?)
空が、ふわりと宙へ身を投げ出そうとした――その瞬間
「空ちゃんんん!!」
ドガァァンッ!!
聞き覚えのある声と共に、男の一人が顔面を蹴り飛ばされて吹っ飛んだ。
「…蓮二!?」
「あぶねぇッ……! 間に合わなかったら、俺ら暁人に殺される所だった……!」
「幹也も……!」
不良仲間たちが、息を切らして駆けつけてきた。
「なんだ! てめぇらは!! ぶっころ――ガハッ!」
「蓮二……早くやっちまおうぜ。姫の不安を早く取り除かねーと」
「だな……。魔王の怒りだけは、絶対買いたくねーしな」
⸻
「二人とも、ありがとう……」
数分後。男たちを全員地面に沈めた蓮二たちが、息をついた。
「気にしないでー。空ちゃん怪我ない? 遠慮なく言ってね」
「大丈夫だよ……」
「マジで? 本当に?」
「本当に大丈夫……」
「なら良かった……魔王の所有物に傷でもついてたら、俺らの命が終わるからなw」
「そんな事より、暁人が……!」
空が青ざめた顔で訴える。
「あー、それね……俺らも全部は把握してなくてさ。とりあえず暁人から『空たちを助けてくれ』って短いメッセージがきてさ」
「私はもう大丈夫だから、暁人の事助けて! お願いします……ッ!」
「そりゃあもちろん。親友を助けない奴は居ないっしょ。……でも、その親友から頼まれた事もしっかり守らねーといけないのよ。とりあえず、空ちゃんを安全な場所に送ってから、暁人を助けに行くよ」
「いやっ! 本当に私は大丈夫! 早く暁人を!」
「空ちゃん……暁人は、君が本当に大切なんだ。もし空ちゃんの身に何かあったら、暁人は自分を追い込んで、最悪……自殺するかもしれない。空ちゃんだってそうだろ?」
「うん……でも……」
「つか、空ちゃんの身に何かあったら、俺らが暁人に殺されちまうんだよ!! 空ちゃん頼む!! 絶対暁人は助け出すから、大人しく車に乗って!!」
「……わかった……絶対だよ?」
「おう! 任せてよ」
⸻
「マジで早く見つかって良かったわ……」
車を走らせながら、幹也が安堵の息を吐く。
「……アイツらに襲われている時、助けてくれるかも!と思ってこっちの橋に走ってきたの」
「なるほどなー、前はよく、暁人とこっち来てたからねー、さすが空ちゃん」
「もし助けが来なくても、ここなら飛び降りれるし……完璧だよ」
「中学の頃、空ちゃん『暁人以外に触れられるぐらいなら死ぬ!』って言ってたけど……マジだったんだな……」
「当たり前じゃん! 私は暁人だけのモノなんだから!!」
「はは……相変わらずだねー、空ちゃん。もーさっさと結婚してくれよw」
「えへへ」
「あっ……そういえば京介ちゃんは?」
「あーー。なんか、岸辺桃花って奴を助けに行くって、すぐに行っちまった」
「へー、そうなんだ……」
車が、見知らぬマンションの地下駐車場に滑り込んだ。
「よし、着いた。ここ、◯麻栽培用マンションで一棟丸々俺らグループの物だから安全だよ。806号室は何もない空室だから、そこにいてねー」
「中にカップ麺とかお茶とかあるはずだから、お腹空いたら食べていいからね」
「うん、ありがとー」
蓮二が鍵を渡す。
「んじゃ、これキーね。あと、インターホン鳴っても絶対に出ないでね。理由は……」
「うんw なんとなくわかるよ」
「ならおっけー! それじゃ、行ってくるわ!!」
「……絶対に、暁人を助けてね……」
「おう!!」




