女子生徒
一条 翼先輩は、私にとっての「女神様」だった。
美しく、気高く、誰よりも強い。学園のトップに君臨する彼女は、私たち女子生徒にとって憧れの的であり、絶対に手の届かない不可侵の領域。
男になんて媚びず、常に冷徹で完璧な判断を下す生徒会長。私は彼女のそんな「誰にも屈しない圧倒的な強さ」を心から崇拝していた。
だからこそ、あの日。
旧校舎の使われていない資料室の前を通りかかった時、私は自分の耳を疑った。
「……あぁっ、あきと……もっと……っ」
「……お前、マジで加減わかんねぇぞ。痛くねぇの?」
「痛いのが……いいの……。もっと乱暴に……私を、壊して……っ♡」
鍵のかかっていないドアの隙間。
そこから漏れ聞こえてきたのは、私が毎日うっとりと聞き惚れていた、あの凛とした翼先輩の声。
だが、その響きは信じられないほど甘く、濡れそぼり、誰かにひれ伏すように震えていた。
(嘘……でしょ……?)
心臓が嫌な音を立てる中、私は恐る恐るドアの隙間から中を覗き込んだ。
そして――私の世界は、一度完全に崩壊した。
薄暗い資料室の壁に押し付けられていたのは、首輪を付けて全裸の翼先輩。
そして、彼女を乱暴に見下ろしているのは、あの学校一の嫌われ者の不良・音村暁人だった。
「……っ! なんで……なんであんなゴミみたいな男に……!!」
私は声を出さないように口を両手で必死に塞ぎ、絶望の涙を流した。
私の完璧な女神が、気高き白鳥が、あんな泥にまみれたクズヤンキーに汚されている。しかも、無理やりじゃない。
「ほら、お前が誰の何かを、ちゃんと言えよ」
「ぁ……はぁっ……私は……一条翼……生徒、会長で……あきとの、奴隷……です……っ♡」
「……バカじゃねぇの」
「はいっ♡バカですっ♡……ねぇ、もっと蔑んで……? あなたのその冷たい目で、私をゴミみたいに見下して…ッ♡」
暁人が冷たくあしらえばあしらうほど、翼先輩の熱は上がっていく。
普段、私たちの上に立ち、教師すらも平伏させるあの絶対的な権力者が。
今、ただ一人の男の足元にすがりつき、ゾクゾクと全身を震わせて「もっと乱暴にして」と懇願しているのだ。
(嫌だ……見たくない……こんなの、私の翼先輩じゃない……っ!!)
絶望と嫌悪感で吐き気がした。今すぐこの場から逃げ出さなければ。
そう思ったのに。――私の足は、一歩も動かなかった。
「……ぁ……」
隙間から見える、翼先輩の顔。
涙と汗で濡れた、信じられないほど色っぽい表情。
男に完全に主導権を握られ、命令されるたびに、彼女の端正な顔がビクンッと快感に歪む。
乳首にはリング型のピアス…胸の上部にあいつと同じタトゥー、完全にあのヤンキーの所有物だ
強くて完璧な人間が、ただの「発情したメス」に堕とされ、完全に支配されているその圧倒的なギャップ。
(……あれ? 私……なんで……)
絶望で流れていた涙が、いつの間にか止まっていた。
代わりに、私の下腹部の奥底に、今まで感じたことのないようなドス黒くて、熱いマグマのような塊が生まれ始めていた。
「んぁっ……あきと……好き……もっと、私をグチャグチャにして……っ♡」
暁人の胸に顔を擦り付け、だらしなく舌を出して悦ぶ翼先輩の「究極のドM顔」。
それを見た瞬間、私の中で、絶対に開けてはいけない重い扉が、ギィィィッと音を立てて開いた。
「……っ……はぁっ……ぁ……」
私はドアの隙間にへばりつきながら、無意識のうちに自分の太ももを強く擦り合わせていた。
顔が異常なほど熱い。呼吸が荒くなる。
ショックだったはずなのに。あんなに憎かったはずの音村暁人に、今、猛烈に感謝すら抱いている自分がいた。
(すごい……なにこれ、すごい……っ)
完璧なお姉様が、男に雑に扱われて、アヘ顔を晒し悦んでいる。
あんな惨めで、汚らわしくて……最高に興奮する翼先輩を引き出せるのは、この世界で音村暁人ただ一人なんだ。
「もっと……もっと見せて……先輩……っ」
私は暗い廊下で頬を真っ赤に染め、息を荒げながら、二人の背徳的な行為を瞬きすら忘れて凝視し続けた。
あの日。
私は、気高き生徒会長への純粋な信仰を失い。
代わりに――彼女が堕ちていく様を泥沼の底から見上げて興奮する、狂った信者へと生まれ変わったのだった。




