第13章 正体
謎の魔物・強敵・・ファルチェ・デリットを無事倒したのも束の間・・・・
それは塵とならずに、残ったモノを見たアソオス王子やアイラ達は顔面蒼白になった。ユナムたちも、それを見下ろし、青冷める・・・。
そこには、見知った人物が・・・倒れていたのだった。
ファルチェ・デリットを倒す・・前日の 自由行動時 ・・・・
俺は、ヘラジの塔の周囲に築かれた町を散策していたんだ。
ブラブラしていた市場の中で、大きな荷物を背負ってる商人風の人が、市場の屋根辺りにある何かの瓶を取ろうと必死になっていた。
・・・誰も・・手伝わないのかな?
周りの人は品物を見てたり、店の人達も忙しそうで・・・気づいてない。
俺が ひょいっ とジャンプして、取って渡すと・・その商人は
「ありがとう!少年!」と、元気な感じの女性の声だった。
帽子のせいか、髪が短いのか・・パッと見では男性かと思ったから、少し驚いてしまったが・・「どういたしまして」と言って去ろうとすると「待て待て」って言われるから、振り返る。
「助けてもらったのに、何も渡さないのはどうかと思うから・・・コレなんて、どうだい?」と普通の回復薬より、色の濃い回復薬をもらう。
・・これが『ラフマー』だ。
ご本人が調薬して作ったものらしく、普通のより効果が高いと言ってた。
俺「ありがとうございます!ホントに もらっちゃって良いんですか?!・・明日、強敵との戦いだから・・・助かります」
「ふむ?そうなのか?・・・・・じゃあ」と・・何やら肩から斜めにかけてある鞄をごそごそしてて・・・・
「少年、これも あげよう」と、鳥の羽のような形状の長い葉っぱをもらう。
俺「・・えっと、これは?」
真面目な顔で、俺を見る・・その人は続けた。
「もしも、治癒魔法でも蘇生出来ない時に賭けの要素強いけど、使いな」
・・・蘇生アイテム?
「君の身内なら君が使うかを判断すれば良い。だけどそうじゃないなら、必ず!使う相手の家族に『使うか?』と聞いて了承されたら使いなさい」
・・・それを 今、思 い 出 し た ・・・!
ファルチェ・デリットを・・倒せた。
最後は、アソオス王子の剣技で。
だけど、そいつは・・・・普通の 魔 物 じ ゃ な か っ た んだ。
” ア バ リ シ ア ”
現・アソオス王妃・・・・・その人だった。
・・・なんで? どうして魔物になってたんだ?!
ルア「・・申し訳ありません、回復魔法は もう効果ありませんでした…」
ステッラ「申し訳ございません・・王子。蘇生魔法も効果が・・ありません」
アソオス王子が、一番つらいだろうな・・・・親だし・・・・
『もしもの時は・・・使え・・・』あの人の言葉が蘇る。
・・・聞こう。 アソオス王子に。
あの人は、このアイテムを『ギャンブルリーフ(正式名称は違う)』と呼んでいた。なぜなら、使用して蘇生が出来る可能性が・・・・・
たったの・・・
10%しか 無いんだ。
重い空気を・・みんなのすすり泣く声や音を聞きながら、アソオス王子に近寄り・・・聞いた。
「アソオス王子・・・あの・・・」
・・・可能性は ある にしても、無いに近いんだ。
アソオス王子は、目だけ・・俺に向ける・・・
その様が、やや怖かった・・・・。
俺「良かったら・・・・コレ、試してみませんか?」
あの・・・光 る 葉 を、見せた。
俺の投げかけた言葉に、座り込んで泣いてたアイラも顔を上げ、ルアさんも、ステッラさんも顔を向け、遠くに居たオリクトとヘルトさんが近づいてきて、ベルクさんが、葉を まじまじと見る。
ベルク「ユナムくん、これは・・何ですか?」
俺は、町で出会った行商人の人から もらった事・蘇生確率は、10%しか無い事・蘇生可能アイテムだと説明する。
俺「その人がくれた回復薬は、レスカテ王子の体も瞬時に治したんです!」
と、小瓶を見せ・・・レスカテ王子は疲労で辛そうだったが、失ったはずの体が戻ってるのを確認。
失ってたのは数分だったかも知れないが、その部分の服は無くなっていたから、アソオス王子も俺の方へ体を向ける。
俺「・・・・使いますか?・・アソオス王子・・・・」
王子は、力が抜けたように言葉を話す・・・
「なぜ、俺に聞く?・・・おまえが勝手に使えば良いだろ・・」
俺は首を横に振る。
俺「その人との約束で、蘇生させたい人物の家族の了承をもらうまで、決して使うなって言われてるので」
ベルクさんが、王子に「使いましょう・・10%でも・・」
アソオス「・・お前たちにも迷惑をかけた母上だぞ・・・このままの方が・・」と言いかけた時、アイラが立ち上がって、泣いて目が赤くなったまま「王子!使おうよ!!」と叫ぶように言った!!
その声に、アソオス王子は・・目を開き、驚く。
仲間たち、俺たちを見て・・・俺の手から受け取ると、王妃の胸に置く。
「『戻って来て』と願って下さい!それが成功率を上げるって言ってました!!」と、俺は大きめの声で言う。
みんなが、俺も・・・それぞれ、願 っ た ! !
『王妃・・戻ってきてください』・・・・と。
すると、ボウゥと光ったかと思うと、ガラスが割れるようなパリンッと小さい音が鳴ったかと思ったら・・「ぅ・・」と小さな声が!
ベルクさんは、すぐさま『プチクロワ』を取り出し、王妃を仕舞うと・・それぞれ拠点に戻り、アソオス王子たちは・・その夜には王都に戻っていた。
・・・そして、俺たちも呼ばれた。城に。
真正面に王が居る右側に、アソオス王子のメンバー
左側にレスカテ王子のメンバー・・王子が先に座るかと思いきや・・
アソオス王子に促されて、アソオス王子の正面に、俺が座る事になった・・・・何で?!
緊張する・・・
みんなが、席に着くと おもむろにベルクさんが口を開く。
ベルク「聖竜のみなさんも、知っての通り・・あの鎌女・ファルチェ・デリットは・・・この国の王妃、アバリシア様の変化されたお姿でした」
ルア「それって、結局・・どういう事なのですか?」
「それは俺から説明しよう」と、アソオス王子。
アソオス「実は王妃は、闇の魔法が得意な一族で・・王都に保管されてた禁術と呼ばれる、解読不可の暗号化された書籍を解読して魔物に変化する魔法を使っていたようなのだ」
え・・・変化する魔法?
王「禁術は、その特異性と心身に与える影響と狂暴性を考慮し、使わないようにと封印されていた術なのだ」
ベルク「主に、闇の魔法ですね。あの時…ファルチェ・デリットの時に放ってた魔法の『カウフ・ザラーム』や『ディーフェクトゥス』が 禁術 です」
王「魔法の名前を知ってるだけでは、使えんがな・・」
アソオス「名前と、闇の魔法に耐性を持つ体と、術式を理解して魔力を込めねば使えぬそうだ」
ルア「しかし、なぜ・・そのような術を?」
「それは・・・」と言いかけた時、ドアが開き・・ステッラさんが来た。
ステッラ「・・王妃様は、無事・・・回復なされました!!」と、やや疲れ気味に話す。
アイラ「!・・良かったぁ~・・。良かったですね!王子!!」と満面の笑顔のアイラを見て、アソオス王子も・・少し、表情が和らいだように思った。
ステッラさんも、イスに腰掛ける。
息を整え、報告があります・・と、話 始める。
ステッラ「・・ユナム・・様」って言うから、えっ?!って勢いよく、ステッラさんを見てしまった・・・。
ステッラ「ユナム様から頂いた蘇生アイテムによって蘇生し、ベルクさんのアイテムで、すぐこちらの治療院に運ばれ、治療院と共に回復魔法で治癒したお陰で・・王妃様は、意識が戻っております」
ステッラさんは、話を続ける。
それは、王妃が語った話で・・・
王「つまりは、こういう事か?・・あやつは・・」
ルア「あの時、あんな所で遭遇したのは・・レスカテ王子を亡き者にしようとしてた・・・?」
ヘルト「俺らが遭遇した時に『間違えた』とか言ってたのも‥全部・・・」
アソオス王子は、溜息まじりに「母は・・」
そう。つまりは・・・王妃は、儀式を有利に進める為・・
アソオス王子が<賢王>に選ばれるようにする為・・・・相手国である・・レスカテ王子を・・襲った。
・・・俺が、王子と 出 会 っ た 時 の・・・あの魔物も、王妃が変化した姿だった・・って事だ。
ベルク「次に遭遇したのは、自分たちでしたが・・なぜか、レスカテ王子の居ないヘラジの塔で、自分たちが遭遇。その際『間違えた』とか言ってたのは、レスカテ王子ではなく、自分の息子だったという事・・で・・・」
アイラ「でも待って。なんで分からなくなってたの? 自分の息子なのに・・」
王「・・・それが、禁術の 恐 ろ し い 所 よ・・・・」
最初は、意識も かなりハッキリしてるらしいが、2度3度・・と繰り返してる内に『王子=敵』と思っていったらしい。
王子だと、すぐ分かるようにと・・・王子たちは、気候に関係無く・・マントを付けてた事が、逆に仇となったようだ。
アソオス王子も、そういや・・マント・・付けてるもんな・・・・。
アソオス王子は、すくっと立つと・・勢いよく頭を下げるっ!
アソオス「本当に・・すまない!!」
・・・王子は、悪く無いと思う。だけども・・自分の母親が招いた事だ。
だから・・・謝ったんだろうけど・・・・
王子も、被害者だと思う。
訳が分からなくなった・・・魔物化した親に、散々攻撃されてたんだし・・。
レスカテ王子が、アソオス王子の謝罪を受け取って・・・・
レスカテ「・・王妃様は、どうなさるのですか?」
アソオス「しばらくは、軟禁しつつ療養だな」
・・・勝手に魔物化しないとは限らないくらい、何度も変化してしまっていたから・・・・と。
帰りの馬車を手配してくれようとしたが、ルアさんの魔法で一旦・・塔の拠点に戻り、次の儀式へと出発する・・と、アソオス王子と王に伝えていた。
アソオス「レスカテ王子・・本当に・・」
レスカテ「気にしないで下さい。まだ儀式は続くのですから、次は聖域で・・・」
アソオス王子は、不敵に笑って・・・(アイラがそれ見て♡な目になってたが)
アソオス「聖域より前に会うかもだがな・・」
今度は、レスカテ王子も軽く笑って・・相槌をうっていたようだった。
ルアさんの魔法陣展開中に「ユナム!」と声をかけられる。
・・・アイラだ。 ・・・何だ?
アイラ「なんか・・いろいろ、ありがとね。王子・・元気になったのも、あんたのくれたアイテムのお陰だし」
俺「アイラがお礼言うなんて意外だな・・」
アイラ「王子に関わる事だから、お礼、言っただけだもーんっ!」
と、ふてくされている・・・。
俺「じゃあな」
アイラ「うん。あんたの王子も、儀式・・頑張ってよね」
光に包まれ始めると・・
「アソオス王子が 絶 対 勝 つ け ど ー ー ー ー ー ! 」
って、魔法陣に乗って転送される直前まで声が響いていた・・・
塔に着いた早々に「アイラの奴が、すみません・・」と王子に謝るはめになった・・・。王子は、気にしてない様子だったけど。
夢で・・そう、この”ミルゼア”の力で見た 夢 が、キ ッ カ ケ となった
今回の一連の話。
アイラやアソオス王子のピンチは、回避出来たし・・
謎の魔物の討伐中も後も、散々だったけど・・・解決出来たし・・・
これで、やっと・・・王子の本来の目的、儀式の旅の再開が出来るんだ。
でも・・・・
俺「あの・・コロモス国へ行くんじゃ?」
ルア「うん・・その予定だったんだけどね・・・」
オリクト「なんだ?聞いてなかったのか?」
王子「ユナムは、少女と話していたから聞こえてなかったんじゃないか?」
オリクト「あぁ・・そうか」
・・・話は、俺の知らない所で進んでいたらしい。
当初の予定は、レスカテ国に戻って別の港から、コロモス国へ行く予定だったけど・・・塔・・行ったじゃん・・・
塔での事が解決したら・・イムベル国へ・・・・と考えてたのに、アソオス国の王子一行が、次に目指してるのがイムベル国・・・と聞いて、最終的に・・来た時の港へ戻って、フィエルテ国に向かう事になったらしい。
そんな訳で、カイーブ港・・・再び。
そしてすぐ、船に乗って・・フィエルテ国に向かっている。
・・相変わらず、予定通りにならないな・・・レスカテ王子の旅は。
王子「港に着いたら、今後の目的地などを確認するぞ」
今度は、フィエルテ国か・・・・
寒い所って事しか・・知らないな・・・
海上の船の上・・・船室のベッドで、ぐっすりと・・眠った・・・・
【女行商人】名前不明・各地を旅している”戦える行商人”として有名。冒険者ランキングにも居るらしいが? サバサバしてるが真面目なのにマイペースな人。自分に親切にしてくれた人への恩は返すが、攻撃(言葉含む)した場合はキレて恐ろしい体験をすると噂がある。
【ギャンブルリーフ】別名で行商人が茶化して言った名前。
正式名称は、スウシン(中国・蘇生)。鳥の羽(カラスの羽を想像して欲しい)のような形の葉。淡く光っている。魔法で作られた”蘇生アイテム”の試作品。少ない魔力しか入ってない為、10%程度の確率しか発動しない。なお、復活出来なかったとしても壊れてしまう消耗品。確率を上げるのは、一人ひとりの『願い』が魔力変換して%を上げる機能が備わっている。もしも、勝手に使ってたとしても、確率は10%のままでした。非売品※ちなみにこの世界では、基本は魔法による蘇生しか出来ない。
【アバリシア】(スペイン語・強欲)
現・アソオス王妃その人。儀式の話が出た際は、大いに喜んだのも束の間、レスカテの王子も旅立つと聞き、禁術を唱えて魔物になり、旅立つ前の試しの洞窟で王子たちと戦う。あの時、逃げ出したのも倒されそうになったから。ちなみに、制約があり・・街中では変化出来ないので、ダンジョンに出現する。使う度に精神がおかしくなり、判断も出来なくなり、ただ”マントを付けてる者”を攻撃していた。
王子2つのグループによる共闘の結果、倒したものの・・亡くなってた可能性もあった。
【ミルゼアの力】※8章・後書き参照
ユナム・固有スキル。ユナムに関わり合いになる相手に関連した夢を見せる。そこにユナム自身は登場しないし、夢は断片的なもの。主に悪夢。夢と割り切って行かない場合の話は書きません。
次回、フィエルテ国の儀式へ向かう。すんなりと城へは入れず・・・・




