大親友テルの登場
同年代にこそモテないが、壱は結構なマダムキラーだったのだ。
人当たりのいい、愛想のいい性格なので、年配の女性や年上の女性には好かれる。
女性は特に相手の態度を気にするので。
しかも甘え上手ときたら、女性の心を鷲掴みにしてしまうのだろう。
狙ってやっているのではないが、彼女らに好かれているのを壱は自覚している。
団子が好きすぎる性格と妹を可愛がりすぎる性格さえどうにかなれば、壱にも春がくるかもしれない。でもそうまでして彼女が欲しいとは思っていない。
好きな人がいないと、こうなるのだ。
壱はため息をついて、とぼとぼと歩く。
「団子の山の、壱さんやーい」
「ぉわっ」
無理やり高くした微妙な声。
変な声の何者かに後ろから突進されて、壱は危うくこけるところだった。
つんのめったくらいですんでよかったものの、壱は若干怒りを覚えた。
振り向いて犯人の顔を確認すると、
笑顔の大親友がいた。
「テ……テル……」
ツンツンした茶髪が特徴の、悪戯好きでお調子者の少年。口田照三、通称テル。
テルは頭の後ろに手をやり、にひっと悪戯っぽく笑った。
「警察になりたいやつがそんなんじゃ、将来が不安だなー」
そしてテルは壱の頬や脇腹や背中をつんつんして、壱を煽る。壱はわなわなと震える。
「不意打ち食らったら、誰だってそうなるわ!」
壱が拳を脇腹に突っ込むと、テルはぐふっと声を漏らして悶絶した。
これぞ、物理的な突っ込みとテルは脇腹を押さえつつ、呟く。
壱は額を押さえて、やってしまったとばかりに表情を暗くしてテルに謝った。
「……わ、悪い。けど、俺の後ろを取るな。悪戯もするな。仕返ししちゃうから……」
「や、やるな、壱……。ぐふぉ」
「一応加減はしてる……。だって、お前に大怪我させたら俺は豚箱いきになるからな……」
壱の年齢なら、少年院だ。そうなったら、警察の話はおじゃんだ。
誰が好き好んで前科持ちの人間を公務員として雇うというのか。
テルは顎に手を当てて、唸る。テルのほうが、探偵っぽいと壱は思った。
「確かに、不意打ちは避けられないな……」




