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あるだけ盗め!  作者: けら をばな
第二章・闇に照らされて盗め
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二十五、『とりあえずここまで』

 美矢実と綾音は、馬に荷物を括りつけて、二人、街を出た。ここから馬は荷物運び専用で、二人とも自らの足で歩かなければならない。美矢実ははあっと溜息をつく。

「さよなら、ふかふかお布団」

「居心地良かったからね。また大変な旅の始まりだよ。しっかりしなきゃね」

 綾音はいつも通り、説教臭い事を言う。美矢実は綾音をじとっと睨みつける。

「……あんた、いいの? あの女置いて行って」

 綾音は、ついさっきの出来事だったのに、遠い昔を懐かしむような笑みを浮かべる。

「いいよ。ずっと苦しい思いしてたんだから自由にさせてあげたい。……出来るよ、リコなら」

「……やったの?」

「ん?」

 美矢実の質問の意味が分からず、微笑んだまま首を傾げたが……その意味が分かると、いきなり顔を真っ赤にし、目を尖らせて怒ったような顔と口調で、

「何で突然そんな話になんの!? やってない、やってないから!! 最初に言ったでしょ、そんなんじゃないって!!」

 と慌てて否定した。美矢実はそんな綾音を見て、

「ああーそっかー、そいつは失敗だったかなー。一度抱いちゃえば大人しく諦めてくれたのかも知んないのにねー。まーそーゆー経験ないから分かんないけど」

 もう一度、はあっと大きく溜息をつく。

「ミヤ姉、何言ってんのか全ッッッ然分かんない!! っていうか、何度も言っている通り僕は別にそーゆーふうにリコのことを――」

「綾音!! 待ちなさーい!! アーヤーネー!! コラー!! 置いてくなー!!」

 街の方から、自分を呼ぶ女の声が聞こえる。

「……え?」

 振り返る。真っ白で大きな馬に乗り、荷物を背負ったリコが目に入る。

 綾音、びっくり。美矢実、三度溜息。

 リコは二人の側まで走り寄ると、馬を降り綾音に詰め寄った。

「こら綾音!! 君は私を盗みに来たんでしょう!? なら責任取ってちゃんと私を連れていきなさいよね!! まったく!! 折角盗み出したものを置いて行くなんて、泥棒がそんなんでどうするの!!」

「え、え、えー!! ちょっと!! 何言ってんの!? 自由にしていいって言ったでしょう!?」

「じゃあ、私を連れていきなさい!!」

「えー!? 横暴!! ちょっと、ミヤ姉助けて!!」

「盗んだのはあんたよ。責任はあんたが取りなさい」

「えーっ!?」

「よろしくお願いしますお姉様!!」

「あー、『様』はやめてくれる? 目立つのあんまり好きじゃないから」

「分かりましたお姉さん!!」

「えーっ!!」

 先を行く美矢実にリコは従い、あまりの事に固まっていた綾音も、急いでその後を追った。


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