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七十四話 ツバーシャがいなくなった

 夜襲を受けた。

 踊り子さんが綺麗だった。

 そして決着がついた。



 ツバーシャがどこへ行ってしまったのか気がかりではあるけれど、ツバーシャは俺よりずっと速い。

 それに夜ということもあって探しようが無かった。


 それでも、無表情おじさんの村の中を探し回ってみたが見付からなかった。


 空飛んでったきり姿見かけなかったし、ほんとどこいった?

 迷子になっていなければ良いけど。


「朝になったら、ツバーシャを探しに行く。だから、今は寝て体力を回復させよう」


「ツバーシャちゃん心配なのです」


「そうかのう。わぁはその内ふらっと戻ってくると思うとるのじゃ」


 ツバーシャは引きこもっても飛竜だもんな。

 きっと元気に帰ってくる。

 そう信じよう。


 そうと決めると、睡眠をとろうとあてがわれたテントに向かった。

 が、その途中──。


「こ、殺せよ! 俺達だって覚悟して戦いにやって来たんだ。だから、ひとおもいにやれよ!」


「「「……」」」


 捕虜と思わしき男たちが縄で縛られて、無表情おじさんに囲まれていた。


 何をしているんだろう?

 捕虜はどういう扱いを受けるんだろうか。

 ラビやシノにそんなん見せたかない。

 でも無表情おじさんは武器や道具を持ってないし。


「見ちゃダメ。ツバサの者も染まってしまう」


 横目で眺めて通りすぎようとしたところで声を掛けられた。


 あっ、踊り子さんだ。

 やっぱりきれいな人だなあ。


「染まってしまうってどういう事なんだ?」


「朝にになれば分かる。だから、ツバサの者はもう寝る」


 うーん。

 そんな事を言われると余計に気になってしまう。

 でも、いうことを聞いておこう。


 ラビもシノも眠くて限界みたいだ。

 ウトウトしてる。

 早く寝床に向かわなきゃ。


 不安は残るものの何とか眠りについた。


 そして、朝になった。


 しかし、ツバーシャは帰って来なかった。


「よし、探しに行こう!」


「頑張ってツバーシャちゃんを探すのです」


「やみくもに探し回っても仕方あるまい。まずは聞き込みからかのう」

 

 全くだ。

 せめて方角ぐらいは見当をつけたい。


 誰に声を掛けようかと迷っていると、昨日の捕虜が捉えられていた場所が目に入った。


 そう言えば、朝になれば分かるって言っていたっけか。

 どれどれ。


「我らは勇敢なる戦士。我らはこの土地を守り抜く」


「「「我らは勇敢なる戦士。我らはこの土地を守り抜く」」」


 うおおおお!?

 無表情おじさんが増えてる!?

 えっ、何?

 染まるってそう言うこと!?

 しかも、体格まで変わっちゃてるよ。

 怖っ。


「これは一体……」


「おじさんがいっぱいなのです!」


「むう。これは恐ろしいのう。わぁも見詰められたらごっつくなるのかのう」


「ならない。なるのは男だけ」


 あっ、昨日の踊り子さんだ。

 男だけと言うことは俺もああなるのか。

 屈強な肉体に憧れん事もないが重くて飛べなくなりそうだ。


「あまり長居はしない方が良さそうだな」


「見すぎなければ大丈夫。ツバサの者を我らは染め上げたりしない」


「そ、そうか?」


 いやでも、昨日出会ったときにラビの首輪と鎖を責められた時に結構見つめあったような……。

 心なしか、体が引き締まった気がしないでもない。


「しかし、襲撃者は何者なのじゃ? 言っては何だが随分と文化に差がある相手と戦っておるようじゃが」


「詳しくは知らない。海の向こうからやってくる」


 開拓者かな?

 じゃあ、これは開拓戦争なのか……。

 一方的にやられていると訳でもなさそうだが、うーん。

 これ以上は首を突っ込むべきじゃないな。

 ツバーシャ見付けてさっさと帰ろう。


「そうか。ところで──」


『敵襲だ!』


 またか!


「こんなに頻繁に襲われているの?」


「普段はあまり襲ってこない」


「そっか」


 そっかそっか。

 あまり襲ってこないのに二度も出くわしたのか。

 随分と運命的な出会いですこと。


 ツバーシャの情報がほしかったところだが、それどころじゃ無くなったみたいだ。


 ともあれ様子を見に行くと──。


「げっ、何だこの量は!? 総力戦でも始める気か?」


 離れた丘にずらりと並んだ人の群れ。


 昨夜の襲撃者たちの比じゃないぞこれ。

 夜だったから問題なかったけど、こんなに人の視線があったら発作起こして戦いどころじゃあないわ。

 

 どうしたものかと頭を抱えていると、丘から一人の男が駈けてきた。


 あれは白旗か……?

 良く見れば、丘の一団には兵士だけでなく、一般人まで混ざっているじゃないか。

 一体これは──。


「助けてくれ! 悪魔が! 悪魔がやって来て街を滅茶苦茶にしているんだ! 船は沈められてどうすることもできない! 何でもするから助けてくれ!」


 それで逃げてきたのか。

 それにしても凄い話だな。

 戦争相手に泣きつくなんて。

 悪魔と言うのはそれほどのものなのか?


 悪魔という存在に出会った事が無いから全く想像がつかない。


「一匹は空飛んで火を吹いて暴れるし、一匹はヌルヌル、ヌメヌメ撒き散らして暴れるし俺たちはもう終わりだ……!」


 うっ。

 どうしよう想像がついてしまった。

 いやでも、勘違いかもしれないし。


 しかし、無情にもその時、丘の奥から雄叫びが響いた。


「ルガアアアアア!」


「ンガアアアア!」


 悪魔身内だこれー!?


 なにやっちゃってくれてんですか!


 俺は目の前がまっしろになった。

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