七十三話 掘るのです掘るのです掘るのです掘るのです
無表情おじさんの村についた。
歓迎された。
サプライズに驚いた。
深夜。
ドーン……!
濃い眠りについていたところを爆発音で起こされた。
「に゛ゃ!?」
「いっ、痛い。シノ、爪刺さってる」
「凄い音がしたのです!」
「私の眠りを妨げるなんて命知らずね……。グルル……」
「まって、ツバーシャ抑えてくれ」
ツバーシャが飛竜になったらテント壊れちゃう。
とにもかくにも状況を確認しよう。
俺たちは多少混乱しつつもテントの外へと急いだ。
「敵襲だ! 伏せて頭を低くしろ!」
「女子供は地下に隠れろ!」
「踊り子を起こすのだ!」
何だ?
敵襲って何?
魔物か?
「慌ただしいな。これじゃあ、何が起きているのかさっぱりわからん」
「わぁが探りをいれてくるのじゃ」
ドーン!
「に゛ゃ!?」
「尻尾がまたぼーぼーになってるじゃない。私がどうにかするわ……。グルル……。ルガアアアアア!」
ああ、飛竜になって飛んで行ってしまった。
村の人が驚かなければいいけど……。
いや、微塵も驚いてないわ。
この村の人たちは冷静すぎる。
「掘るのです掘るのです掘るのです掘るのです……」
バババババ……。
「ラビは何をしているんだ?」
「ラビは女子供なので穴を掘って地下に隠れるのです!」
「とてつも無い早さじゃのう。手が千手観音の様なのじゃ」
いるんだ千手観音。
いや、それよりもラビのお手てで穴が掘れるとは驚きだわ。
それにこの早さ。
非力なラビッ種が生き延びられる理由がまたひとつ垣間見れた。
ドーン!
ズビシッ!
「痛っ! 何か飛んできた?」
なんだこれは──。
石ころ?
「おお。我らが友人の頭に敵の銃弾が当たり穴が空いた。空いてなかった。ツバサの者とても固い」
ああ。
これ銃弾なのか。
やはり銃があるんだな……。
しかし、石ころ?
火薬でそんなものを飛ばしたら割れて拡散しそうなものだが。
「敵は魔法で石飛ばす。銃を使うことでより遠くに正確に飛ばせる。あれは驚異的」
ああ、そう言う事ね。
確かに魔法を飛ばすのにそうした方が飛ばしやすそうだ。
通りで難破船にあった銃には火をいれるところが無かったわけだ。
しかし、この程度なら俺には驚異にならなそうだ。
銃の数も大した事が無いようだし。
ドーン!×30
そんな事はなかった。
そりゃ、筒だけあれば飛ばせるんだし数は用意できるわな。
「ラビとシノはここに隠れていてくれ」
「ご主人さまはどうするのです?」
「ちょっと行ってぶっ飛ばしてくる」
この村の人たちが正義なのか。
はたまた襲撃者が正義なのか。
俺が荷担する事によってどんな影響がでるのか。
どれもこれも知ったこっちゃない。
俺は俺の正義で戦うだけだ。
飛んで逃げるのも悪くはない。
でもまだポップコーンの種もらってない!
「これは我らの闘い。ツバサの者を巻き込めない」
「既に巻き込まれてるし、俺にも戦う理由がある」
「おお。なんと決意に満ちた姿か、分かった共に戦おう」
そんなやり取りをして、俺は無表情おじさんと共に前線へ向かった。
しかし、前線にあったのは想像とはかけ離れた光景だった。
こ、これは。
これが戦争……。
現実だって言うのかよ!
鳴りやまない銃声。
飛び交う銃弾。
男たちの雄叫びが響き渡る。
しかし、最も前に立っていたのは軽装の女性だった。
しかも──。
「いや、何で踊ってるんだよ!?」
「あれは我が村の踊り子。踊りを極め弾丸を踊ることで打ち落とす」
「んなバカな……」
どれ。
むう、暗くてイマイチ良く見えないな。
暗くなくても弾丸が見えるか怪しいが、俺には【風見鶏】がある。
「見える!」
風を伝い鮮明になった視界によって何が起きているのかハッキリと見てとれた。
マジかよ。
手に持ったヒラヒラした布で銃弾を打ち落としてる。
しかも、踊りのリズムを崩さずに……。
いいな。
カッコいいし綺麗だ。
ちょっとあこがれてしまう。
「ツバサの者。我らも前に出る」
「ああ、そうだな。肉弾戦に切り換えてきたみたいだしな」
そして俺は無表情おじさんと共に戦った。
銃による驚異には驚いたが肉弾戦は大したことはなく呆気なく片がついた。
格好良く参戦決めてみたものの、俺がいなくても結果は全く変わらなかった気がしてなら無い。
しかし、この経験はきっとのちに役に立つだろう。
こんなんでも戦争を経験しているのと経験していないのじゃ大違いだ。
踊り子による弾丸防御と巨体によるパワープレイ。
うん。
微塵も参考にならんわな。
ずっと城なしで平和に暮らしたいわ。
あれ?
そういや、ツバーシャどこいった?




