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七十二話 無表情おじさんの村

良い子は真似しないでください。

大変危険です。

手順を守って作りましょう。

 ラビが迷子になった。

 ラビがお友だちを連れてきた。

 みんなでお友だちになった。



 無表情おじさんの村は、村と言うよりは町と言っても良い位たくさん人がいた。

 そんな中、俺たちは無表情おじさんの肩に座ったまま中心部へと進んでいく。


 スゴい量のテントだな。

 遊牧民とかいう奴か。

 あっ、子供や女性もいる。

 おじさんしかいないのかと思ったぜ。


 おっと、そろそろ袋を被らないと発作を起こすな。

 ツバーシャも被った見たいだ。


「ご主人さま! 真っ白な馬がいるのです!」


「角も生えているが、午よりちと小さいのう」


「それは馬では無くてヤギよ……」


「くっちゃくっちゃしてるな」


 酪農かあ。

 城なしでもやってみたいが──。

 ニワトリ位なら何とかなるけど、この位だと城なしで育てる自信がないな。

 と言うか、食わせる草をつくる所から始めにゃならん。

 ちょいと難しいな。

 あと、確実に情が移って食えん。

 魔物なら容赦せんのだがなあ。


 しかし、テントの数に比べて家畜が少なすぎる気がする。

 食料事情が悪いのか?


「我らが友人ツバサの者を歓迎する」


「「「我らが友人ツバサの者を歓迎する」」」


 村の中心部へたどり着くと、俺たちを担いでいる無表情おじさんがそう言い、村の人たちが集まってきた。


 ひとり、ふたり、さんにん……。

 ごにん、じゅうにん、じゃうごにん……。


 うっ、まだ増える。

 袋をしてても発作が……。


「ぐっ……」


「ご主人さま。しっかりするのです!」


「ツバサの者。どうしたのだ」


「主さまは人の視線に弱いのじゃ」


 そんな俺を気づかって、シノが事情を説明して、ある程度下がらせてくれた。


 助かった。

 無表情だから、視線の攻撃力が高いわ。

 どうしてこの村の男たちは無表情何だろう。

 子供や女性には表情があるのに。


「すまないツバサの者。改めて我らは──」


「女の子に首輪良くない。女の子に鎖良くない」


 あっ、またそこからなのか。

 このおじさんたちは初見だもんなあ。

 まだ、しばらく回復しそうにないから、もう一度弁明する気力はないぞ。

 どうしたもんか。


「ツバサの者我らの友人。良き友人」

「女の子に首輪良くない。女の子に鎖良くない」

「ツバサの者我らの友人。良き友人」

「女の子に首輪良くない。女の子に鎖良くない」


 ナンダコレ。

 会話になっているのか?

 いつまでも繰り返されてるんだが……。


「ツバサの者我らの友人。良き友人」

「女の子に首輪良くない。女の子に鎖良くない」

「ツバサの者我らの友人。良き友人」

「ツバサの者我らの友人。良き友人」


「「「ツバサの者我らの友人。良き友人」」」


 統一された!?

 一体どういう事だよ!


「うっ、お目めに涙がたまってきたのです。ご主人さまの為に必死に頑張って説得してくれたのです……」


 いや、ずっと同じこと言ってたし!

 一体ラビにはどんなやり取りがうかがえていたんだ?


 ともあれ、論争に決着がつき、宴が始まるみたいだ、


「我が村の歓迎の料理を振る舞う。心臓に悪い。心してほしい」


「そんなぶっ飛んだ料理出てくるの!?」


「はー。楽しみなのです!」


「うむ。どんな料理かとても楽しみなのじゃ」


「そうね。ふふっ。心踊るわ……」


 えーっ。

 びびってるの俺だけなのか。

 料理だけはとんでもないのはとんでも無いのが出てきかねないからなあ。


 そんな風に身構えていたのだが、出てきたのはただのトウモロコシだった。

 焚き火を囲んだ俺たちの前にプスプスとトウモロコシを刺していく。


 まあ、一品目からぶっ飛んだ料理を出すもんでもないか。

 しかし、やはり食料事情が悪そうだ。

 トウモロコシも痩せこけてる。

 宴なんてしてもらって良いのだろうか?


「いいニオイがしてきたのです!」


「これは香ばしいのう。どんな味がするのか楽しみなのじゃ!」


「そうだね。俺も楽しみだ」


「実が小さいから食べるのが大変そうだわ……」


 懐かしい香りだ。

 しかし、これも醤油があればなあ。

 どうにかしたいなあ。


 しかし、このトウモロコシどっかでみたような……。


 なんて考えていたりしていると──。


 パパパパパパパパパパパパパンパンパン!!


「ひええええ!?」


「なっ、なんなのじゃこれは!?」


「おもしろいわねこれ……」


「コーンはコーンでもポップコーンかよ!?」


 確かに心臓に悪いわ。

 そうだよな。

 知らなきゃこれ程驚く不思議な食いもんそうはないわ。


「我らは客人の驚く顔が好きだ」


 無表情なのにずいぶんとご機嫌なサプライズをしてくれる。

 ラビが貰って食ってたのもこれだったのか。


「最初はビックリしたけど、楽しくておいひいのれふ!」


「そうだな。おやつに丁度いいかもしれない。帰る時に少し譲って貰って城なしでも作ろう」


 無表情おじさんたちみたいにお客さんにサプライズをするのもいいな。


「シノ。尻尾が出ているわよ。そんなにぼーぼーになるものなのね……」


「ふっ、不覚。ビックリして毛が逆立ったのじゃ」


 あー。

 ネコって破裂音苦手なんだっけか。

 作るときは気を付けないとな。



 そんな驚きから始まった宴は夜遅くまで続き、皆が眠りについてしまったのでこの村に泊めて貰うことにした。


 多分城なしも一泊ぐらい許してくれるだろう。

 今までも俺が戻らなければ移動はしなかったしな。


 さて、俺も寝ようかな──。

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