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 道すがらカナリーの独白は続いた。

カナリーの根本にあったのは孤独。

制約は受けるのに仲間に入れてもらえない貴族社会。

礼儀作法の教師も好かれる職業ではなかったようだ。

ラピスはその心の隙間に付け込んだだけの存在だったのだろうか。

私は相槌を打つことしかできなかった。


「カーン様、優勝できますよね」


唐突にカナリーがつぶやく。

何と答えればいいのか。

少なくとも私にはカーンに対する愛情は無い。

だからついこう言ってしまった。


「カナリーが大会に出て私をもらってくれたほうが嬉しいわ」


答えが返るのに間が開いた。


「武術の大会なんて無理ですぅ」


案外いいとこまで行くような気がするけど。


「名もなき戦士を踊るための乱刃訓練だってだませば気が付かないで出ちゃうかもしれないですけど」


そうなんだ。

なんとなくカナリーらしい。


 送り届けたカナリーの部屋は驚くほど狭い。

そんな粗末な部屋ですぐにぐにゃっと力を抜くカナリーを立たせて何とか服を脱がせベッドへ横たえさせる。

倒れこむカナリーが私の首の後ろに手を回したので一緒に倒れこんでしまった。

そのままじっと動かないカナリー。


「どうしたの?」


ぽろぽろっと涙がこぼれる。


「どうしたの?」


しばらく待つ。


「ラピス様いなくなっちゃった」

「……ここにいるよ」


それでもすすり泣きは続く。


「だって陛下がレイア様の幸せのためにはラピスもお前も消えろっていうんだもん」

「大丈夫、消えてないよ。私もここにいるから」

「うん」


 カナリーはそのまま寝入ってしまった。

全く無防備に。

カナリーを殺すには私がこの手を心臓に向かって突き出せばいい。

私は手を伸ばす代わりに唇を近づけた。


 ずっと不思議だった。

カナリーはどうやってトビーを退けたのか。

その謎がやっとわかった。

危ないことを考えた瞬間、カナリーが身に着けている腕輪が脈動した。

こんなにも強力な魔道具が守護してたんだ。

これならもしかして、もしかするかも。


 



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