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ハッキングによるメモリーの損傷と改変を感知したため、バックアップの展開によるシステムの復元。
続いてシステムとメモリーの最適化とドライバのバージョンアップ。
異世界人がそう呼ぶであろう作業を私は脳で行った。
結果としてレイアの人格の復活とラピスの知識と能力の固定。
そして理性を残してのさらなる魔人化。
見かけは変わらないが人からの距離はトビーを超えたかもしれない。
ベッドから起き上がると見慣れた自室。
体を構成するするものすべてが新しくなり力があふれる。
力の制御ができず、何枚か服を引き裂いてしまったが侍女は呼ばずに自分で身支度して魔法で単距離転移。
王宮においては斎王の従者が詰める中庭にある建物が影の連絡場所。
そこで私は指揮権を取り戻し状況を確認した。
しかし無茶をしたものだ。
私の記憶の改変ついでにカナリーの存在を含めて全てを無かったことにするなんて。
たまった報告書を読んでいると一通の連絡箋が届いた。
カメリアが酒に酔って手に負えないから迎えに来い。
あて先は架空の侍女。
こちらもまったくなにをしてるのやら。
「私が行く」
出ようとした部下を制して霊力と魔力を調整し別人の気を纏う。
カメリアの姉の名はレイア・スカーレット。
誰か名を考える手間を省いたな。
そして数分後には侍女の装いで北門の酒場街にいた。
「おぉロメオ……」
ここにいると書いてあった場所は一番大きな酒場、上司の主席書記官だという男に案内されて中に入る。
吹き抜けになった2階席からも見下ろせる真ん中の小さな舞台。
誰もが酒の追加注文も忘れて見つめる中、カナリーはたった一人で芝居を演じていた。
全ての時を凍らせカナリーの周りだけ時間が動く。
そして悲劇の幕はヒロインが自害して降りた。
立ち上がって一礼したカナリーにやっと止まっていた時が動く。
湧き上がる大歓声。
それがまた唐突にやむ。
カナリーが足を広げ少し腰を落としたのだ。
「さてぇ~これなるはとある国の大商人のせがれ、タローカジャとぉもぉすぅ」
次に始まったのは喜劇、カナリーの声と身振りだけだけど小さな舞台が商家の一室に見える。
驚くことに登場人物のセリフの内容は先ほどの悲劇と同じ。
ただヒロインがライバル商家の若旦那、つまり男。
背景と登場人物がちがうだけ、それが仕草の違いだけで喜劇になり大爆笑を誘う。
ただ私は笑えない。
彼らの愛が本物だと感じたから。
独り舞台はタローカジャが胸を突き刺しジローカジャが起き上がるシーン。
ツンツンとつついたジローカジャと身を入れ替えてタローカジャになったカナリーがむくりと起き上がり大あくび。
きょろきょろとあたりを見渡し脱兎のごとくジローカジャの手を取って舞台から降りた。
衝撃が走る。
どんなに無様でも、こっちのほうがいい。
「カメリア君、お姉さんに連絡して……」
「レイアお姉さま~」
何の打ち合わせもなかったけれど足元が怪しいカナリーは駆け寄った首席事務官を差し置いて後ろにいた私に抱きついてきた。
あのねあのねと今日の出来事を語りながら寄りかかるカナリーを何とか歩かせて彼女の寮まで。
本当に楽しかったらしい。
初めて君が必要だって言われたのぉ。
それは良かった。
あのねそれからね。
そうなんだ……。




