アーチャ観察日記
○月△日
家事と書類仕事以外ですることがなくて暇そうにしていたら、アーチャに日記帳をもらった。
せっかくなので今日から日記をつけてみる。
騎士団の日誌以外で個人的に日記をつけるのは初めてだ。
何を書いたらいいのか、思いつかなかったのでアーチャを観察してそれを記録してみようと思う。
アーチャも毎日日記を書いているようだ。
仕事前の空いた時間に書く事もあるが、大抵寝る前に酒を飲みながら書いている。
一度チラッと覗いたことがあるが、他人の日記を覗き見るものではないと思いなおして、みないようにしている。
彼女は変わった人だと思う。
彼女を初めて見たのは、一度目の召喚の儀の時だ。
あの時はやや取乱していたし、言葉も荒っぽかったが、基本的には冷静に見えた。
泣き喚くでもなく、自身に必要な情報を得ようとしているのが、見ていて分かった。
アレは不細工と称したが、そんなことはない。
確かに綺麗でも可愛くもないが、浅黒い肌は健康的だ。鼻は低いし目元はきつそうだし眉毛も薄くてちょっと怖い顔立ちだけど、黒目がちな目を覆う睫はそこそこ長いし、唇もプックリしている。
基本的には僕らの前では馬鹿笑いとか、皮肉な笑いくらいしか見せないけど、普通に笑ったら愛嬌があっていいと思う。
店主のガディさんやお店に来る客達には、普通にニコニコしている。
笑うと目元や口元に皺が寄って、人のよさそうな顔になるから不思議だ。眉間に皺を寄せたら、かなり怖くなるのに。
アーチャは基本的に他人に対して無関心のようだし(一緒に暮らしている俺自身のことは興味がないのか、全く聞いてこない)、そのくせ妙なことを面白がる節がある。(たまに悪だくみをするケディと同じような表情をしている)ひどく冷めているかと思えば、激しく感情を露にする。
が、基本的にはどうでもよさそうな諦めたような面倒くさそうな感じだ。
彼女の外面も一緒に働きながら見ているため、素の彼女との落差に中々慣れない。
好きなものは煙草とお酒みたいだ。毎日、それなりの量を美味しそうに消費している。
食事に拘りはないのか、割となんでも食べているようにみえる。彼女自身が作ってくれる食事は、少々変わっているが美味しい。
僕自身は野営料理位しか作ったことがないが、何を出しても文句は言わずに黙々と全て食べてくれる。感想が欲しい所だが、彼女に聞いても、「問題ない」や「食えるよ」くらいしか応えてくれない。
(このことをウィルに話したら、亭主関白の夫婦かっ!と叫ばれた。意味が分からない)