IF~いつかの再会の直前
解る人だけは判ってしまう、ただいま連載中の~もしも~編です。
解っても苦情は×でお願いします。
今日は待ちに待った年に一度の特別な日。
本来ならば永遠に逢えず赦されないであろう特別で大切な人と、直接会話を交わせる日。
「陛下、その様なお顔では、あの御方が怯えてしまいますわ。」
折角の逢瀬なのです、その様に緊張などなさらずとも良いのです。との、妃の助言に幾許か心を落ち着かせる事が出来たこの国の王でもある男は、弱々しい笑みを己が正妃に向け、頷いた。
そうだ。
緊張しなくてもいいはずなのだ。
彼女と会話が直接会話が出来ると言っても、それは所詮子供達だけであって、彼女の瞳が自分を映す訳がないのだから。
あの日からどれだけ時が経とうとも、彼女は自分達を永遠に許さないし、この世には戻ってはこない。
それでも年に一度だけ直接言葉を交わせるのは、ひとえに彼女が産んだ子供たちの成長を彼女が直接確かめ、その日までのことを子供たちが報告する場を設けた為。
そこに付き添いの騎士がいてもおかしくはない。
自分はその騎士として我が子に付き従い、二言三言義務的に言葉を交わすだけ。
それだけのことなのに、この時期が近付く度、自分は愚かな幻想を願い、夢見てしまう。
一度だけ、それも彼女の意識と記憶がかろうじて残っていた時に、最初で最後の口づけを交わしたからこその、愚かしくも卑しい幻想。
彼女が再び自分をその美しくも気高い澄んだ瞳に映し、名を呼んでくれるのではないかという叶わぬ夢。
そんな自分に掛けられる、冷たくも厳しい青年になりかけの少年の声。
「急いで下さい。母上はお忙しいのですよ。貴方のようにへらへら媚び諂う有能な部下はいないのですから」
「あら、アナタったら、お父さまにスゴい皮肉を言うのね。仮にも貴方の父親でこの国の王なのに」
「父?私の父はフェルテシオ王家の王族で、この人は私の父ではない。」
きっぱりとした拒絶は、男の心に深い傷を負わせたが、それくらいは当然のことだと男は自覚していた。
この国が彼女が願う本物の【平穏】を手に入れる事が叶ったのは、今からほんの2年と少し前で、それも彼女の命懸けの根回しがあったからこその国の再興だった。
一度は東の大陸の軍事国家に併呑されかかった自分達の国。
それを回避できたのは、彼女の残してくれた最後の情けだった。
それらの過去の事をふぅーっと、深く吐息を吐いて整理し、呼吸を整えてからその男は自分達の子供に跪き、頭を垂れた。
自分と瓜二つのこの国の次期国王である息子と、男が失った女と生き写しの娘に・・・。
「どうか、私をお連れ下さい、両殿下。」
女の愛した白いバラが、秋の空に舞い散る中、男はそれでも叶う筈のない、起きる筈のない奇跡を願い続ける。




