表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
451/451

第458話「いつもの朝へ」

朝。


神城家の台所から、炊きたてのご飯の香りが静かに広がっていた。


味噌汁の湯気が立ち上り、美月は焼き魚を皿へ並べる。


玲奈は窓を開け、朝の風を家の中へ迎え入れた。


庭では、ぴーちゃんが小さなじょうろを抱え、昨日植えた苗へ嬉しそうに水をあげている。


「お兄ちゃん、みずあげたよ!」


元気な声に、悠真は優しく笑った。


「ありがとう。きっと大きく育つよ。」


「ほんと?」


「ああ。」


その短いやり取りだけで、十分だった。


食卓には、いつもの席。


いつもの笑顔。


いつもの「いただきます」。


誰一人欠けることなく、穏やかな朝が流れていく。


世界病は消えていない。


空を見上げれば、白影は今日も静かに浮かんでいる。


けれど、その存在に怯えていた日々は、もう過ぎ去っていた。


恐れるのではなく、受け入れる。


諦めるのではなく、生きていく。


それが、この世界で暮らす人々の答えだった。


朝食を終えると、悠真は工具箱を持って玄関へ向かう。


「今日は橋の点検だったね。」


美月が声を掛ける。


「夕方には戻るよ。」


「気を付けて。」


玄関の戸が開く。


柔らかな朝日が町を照らし、遠くでは畑へ向かう人々が笑顔で挨拶を交わしていた。


子どもたちは元気よく走り、誰かが井戸をくみ、誰かが屋根を直している。


特別な一日ではない。


だからこそ、大切な一日だった。


悠真は一度だけ神城家を振り返る。


縁側では恒一がお茶を飲み、玲奈は洗濯物を干し、美月はぴーちゃんと笑い合っていた。


守りたかったものは、ずっとここにあった。


悠真は静かに歩き出す。


その背中を、朝の光が優しく包み込む。


町も、人も、季節も、今日という日をまた歩き始める。


神城家の一日は、これからも変わることなく続いていく。


――完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ