第30話 「限界の先」
ぶつかる。
速度。
力。
判断。
全部を使って。
でも。
足りない。
影は、止まらない。
速い。
変わる。
対応する。
「……くそ!」
蓮斗が叫ぶ。
叩く。
でも。
浅い。
玲奈が入る。
当たる。
でも。
決定打じゃない。
白峰が叫ぶ。
「まだ足りない!」
分かっている。
全部使っている。
でも。
届かない。
影が動く。
速い。
「――!」
蓮斗が弾かれる。
玲奈が避ける。
でも。
完全じゃない。
かすめる。
「……っ」
血。
ぴーちゃんが光る。
「……だめ!」
回復。
でも。
追いつかない。
祖父が言う。
「時間切れだ」
その一言。
冷静。
でも。
現実だった。
白峰が言う。
「適応が完了する」
「そうなれば」
「終わりだ」
つまり。
今しかない。
でも。
今でも。
足りない。
「……どうする」
蓮斗が言う。
「このままじゃ無理だぞ」
その通りだ。
考える。
全部試した。
連携。
単独。
環境。
崩し。
全部。
でも。
届かない。
「……なら」
言葉が、自然に出る。
「まだ使ってないものを使う」
全員が、止まる。
視線。
俺の手。
因子。
「……おい」
蓮斗が言う。
「マジかよ」
白峰が、静かに言う。
「リスクがある」
「分かってる」
祖父が言う。
「必要か?」
その問い。
答えは。
「……分からない」
正直だった。
でも。
「これしかない」
玲奈が、静かに言う。
「……止めない」
ぴーちゃんが、強く揺れる。
「……だめ」
その声。
震えている。
分かっている。
危ない。
でも。
今は。
それしかない。
手を見る。
因子。
力。
選ぶ。
ここで。
使うか。
それとも。
積み上げるか。
時間はない。
影が動く。
来る。
決める。
今。
この瞬間に。
選ぶ。
俺は。
――
(続く)




