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第276話「祖父の仕事」
昼前。
拠点区画。
黒崎恒一は歩いていた。
年を取っている。
だが。
止まらない。
補修班。
配給班。
見張り班。
順番に回る。
声を掛ける。
確認する。
特別なことはしない。
ただ。
拠点を回る。
それだけだった。
だが。
それが大切だった。
その時。
若い補修員が言う。
「怖くないんですか」
掠れた声。
恒一は少し考える。
そして笑う。
「怖いぞ」
短く。
若い補修員が驚く。
恒一は続ける。
「怖いから確認する」
静かな声。
「怖いから準備する」
短く。
「怖くない方が危ない」
補修員は少し黙る。
そして。
小さく頷いた。
その時。
風が吹く。
外壁布が鳴る。
恒一は空を見る。
北。
見えない。
でも。
確かにいる。
だからこそ。
今日も拠点を回る。
それが自分の役目だった。
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