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第272話「配給区画の昼」
昼前。
配給区画。
湯気。
白い灯り。
温かいスープ。
いつも通りだった。
少なくとも。
見た目は。
人々は列を作る。
器を受け取る。
席へ座る。
食べる。
普通。
本当に普通だった。
その時。
老人がスープを飲みながら言う。
「昔な」
ぽつり。
近くの子どもたちが見る。
老人は少し笑う。
「雪で家出られん時あった」
短く。
「三日」
子どもたちが驚く。
「三日!?」
老人が笑う。
久しぶりの笑顔だった。
周囲も少し笑う。
小さい。
でも。
確かな笑い声。
その時。
美月がその光景を見る。
少しだけ安心する。
影はいる。
侵食もある。
でも。
人はまだ笑える。
それが大事だった。
ぴーちゃんも薬袋を抱えながら見ていた。
戦うだけじゃない。
生きる。
それがこの場所の仕事だった。
外。
風が吹く。
でも。
配給区画だけは。
少しだけ温かかった。
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