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第263話「見られている朝」
朝。
蒼月残存区域。
誰もが。
昨夜の影を覚えていた。
見た者。
見ていない者。
関係ない。
空気が違った。
北に何かがいる。
それだけは。
全員が知っていた。
風が吹く。
冷たい。
だが。
以前のような安心感はない。
見張り兵たちは。
いつも以上に北を見ていた。
その時。
悠真が外壁へ上がる。
白い息。
北。
黒い空。
遠い脈動。
まだ続いている。
だが。
以前より近い。
以前より重い。
その時。
白峰 蓮が記録紙を見る。
「反応増加継続」
短く。
「観測範囲拡大」
沈黙。
数字だけなら分からない。
だが。
皆。
感覚で理解していた。
近づいている。
玲奈が目を閉じる。
少しだけ震える。
「……見てる」
小さい声。
昨日と同じ。
でも。
今日は違った。
迷いがない。
雪那が聞く。
「まだいる?」
玲奈は頷く。
小さく。
確実に。
その答えだけで。
外壁上の空気が冷えた。
下。
避難区画。
子どもたちが洗濯物を畳んでいた。
笑い声。
小さい。
普通の朝。
でも。
大人たちは。
皆。
北を気にしていた。
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