第103話 「固定される領域」
外周。
拠点の境界付近。
昨日までとは違う。
人がいる。
戦うためじゃない。
“作るため”。
「そこ、もう少し詰めろ」
桐谷 恒一郎の声。
木材。
石材。
組み上げられていく。
壁。
単純な構造。
だが。
意味は違う。
「……これで止まるのか?」
蓮斗が言う。
腕を組む。
半信半疑。
「止まらん」
即答。
桐谷 恒一郎。
「でもな」
「遅くなる」
それでいい。
完全じゃなくていい。
“時間”を作る。
その発想。
戦闘とは違う。
だが。
確実に効く。
その時。
「……ここ」
白峰 恒一が言う。
地面を見る。
侵食体の痕跡。
「このライン」
「少しズレる」
全員が見る。
確かに。
昨日と違う。
ほんの少し。
外側に。
「……押してる?」
悠真が言う。
白峰 恒一が頷く。
「壁で流れが変わっている」
侵食体。
直線じゃない。
流れる。
回り込む。
その性質。
そこを突いている。
「……マジかよ」
蓮斗が言う。
「戦わなくても押せるのか」
「戦ってる」
黒崎 恒一が言う。
静かに。
「形が違うだけだ」
その言葉。
重い。
その時。
「ぴー!」
ぴーちゃんが言う。
「ここ回復安定してる!」
範囲確認。
問題なし。
むしろ。
前より。
安定している。
「……いいな」
悠真が言う。
確かな手応え。
その時。
外。
影が動く。
屍影。
数体。
だが。
壁の手前で止まる。
様子を見る。
「……来ねぇな」
蓮斗が言う。
「来れない」
白峰 蓮が言う。
冷静に。
「動線が変わっている」
侵食体。
壁に当たる。
流れる。
結果。
屍影の動きも変わる。
「……なるほどな」
悠真が言う。
「まとめて止めてるわけじゃない」
「ズラしてるだけだ」
それでいい。
完全じゃなくていい。
崩れなければ。
その時。
美月が言う。
「……なんか安心するね」
小さく笑う。
その言葉。
場が少しだけ柔らぐ。
その時。
黒崎 恒一が言う。
「安心するな」
短く。
だが。
優しく。
「これは始まりだ」
その通りだった。
まだ。
完成じゃない。
ただ。
形になり始めただけ。
その時。
奥。
重殻。
あの個体。
動かない。
だが。
見ている。
壁を。
構造を。
そして。
ゆっくりと。
一歩。
動く。
「……来るな」
悠真が言う。
確信。
このままでは終わらない。
対策される。
必ず。
その時。
白峰 恒一が言う。
「いい」
短く。
「それでいい」
全員が見る。
「対策されるということは」
「効いている」
その言葉。
確信に変わる。
このやり方。
間違っていない。
だから。
進む。
積む。
強くする。
その時。
悠真が小さく言う。
「……次だな」
次の段階。
守りが。
形になった。
なら。
次は。
止める。
その準備。
整い始めている。
領域は、固定され始めた。
それは。
守りが機能し始めた証だった。




