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地下闘技場

今回のみ、第三者視点になっております。

ご了承ください。

「中々に良い眺めだ」


 アステルを買った貴族のランズベルク伯爵は屋敷に着くと、地下にある闘技場の中央で彼女を晒した。

 両手首に枷を嵌められ、上から伸びた鎖で両腕を拘束されている。


 ずっとつま先立ちで腕とか足の感覚が無い。

 もう限界だった。


「ランズベルク様、お許しください……」


 アステルは本当に反省したような口調で言う。


(ブラックさんに買われなかったことは死ぬほど悲しい。でも、だからって絶望してばかりもいられない。どうにか気に入られて、生きないと……生きていれば、また幸せになる機会が巡ってくるかもしれない)


 アステルはこんな状況でも前を向く。


「そうか、そうか、少しは反省したか。だが、まだ足りないな!」


「!?」


 ランズベルク伯爵はナイフでアステルの服を引き裂いた。


 その瞬間、観客から歓声が上がる。

 ここは闘技場であり、観客席から多数の貴族がアステルへ視線を送っている。


 その殆どは談笑や飲食を楽しんでいた。


「ランズベルク様、恥ずかしいです」


 アステルにはこんなことをして何が楽しいか分からなかった。


「気にすることは無い。すぐにそんなことを言っていられなくなるぞ」


「えっ、それはどういうことですか?」


 ランズベルク伯爵はアステルの問いに答えなかった。


 ランズベルク伯爵の私兵が来て、アステルの拘束を解く。


 その代わりにランズベルク伯爵の私兵がアステルの両腕を掴み。行動を制限した。



『さぁ、皆様! 今宵も集まって頂き、ありがとうございます。今回も奴隷がどれだけ生き残れるか、賭けをお楽しみください!』



 声を拡張する魔道具を使って、ランズベルク伯爵が観客席に向かって、しゃべった。


「えっ? 生き残る? 賭け?」


 アステルは不吉な言葉に動揺する。


「水に落ちて死ぬに金貨五十枚」

「ゴブリンに嬲り殺される金貨三十枚!」

「魔狼に食い殺される金貨二十枚!」

「大穴だ! オークに殴殺されるに金貨二十枚だ!」


 アステルは狂気じみた貴族たちの声に恐怖する。


「なに? 一体、何が始まるの!?」


『それでは一応、ルールを確認します。これより次々と魔物をこの闘技場に放ちます! 魔物の強さは徐々に上がっていきます! この奴隷がどの魔物に殺されるか投票してください! 投票終了まで残り五分です!』


 ランズベルク伯爵の言葉にアステルは絶望する。


 大衆の目前で辱められるくらいは覚悟していた。

 でも、まさか殺されるなんて思わなかった。


「待ってください! ランズベルク様!」


 アステルは必死に叫んだ。


「なんだ? 少しでも長く生きたければ、体力を使わない方が良いぞ」


 ランズベルク伯爵は楽しそうに言う。


「私は結構、良い身体をしていると思います! ランズベルク様を満足させられます!」


 みっともないとか、恥ずかしいとか、思っている余裕はなかった。

 アステルは生きる為に必死になる。


「ああ、別に私はお前を女と見ていない。奴隷など言葉をしゃべる家畜と同じ。臭くて一緒の部屋にすらいたくない。だが、ここへ連れて来られた奴隷が焦り、そして、絶望する顔は何度見ても楽しいな。その瞬間だけ、お前たちのような奴隷を買ってきて良かったと思える」


 そんなアステルの必死さを、ランズベルク伯爵は嘲笑った。


「それにしても今回は二度楽しめる。お前を買おうしていたあの男の悔しがる顔。そして、今のお前が見せる絶望の表情。お前があの男と楽しそうに話すのを道で見かけて、壊すのが面白いと思ったのだ」


 アステルはランズベルク伯爵の言葉を聞いて、全身から力が抜けた。


「おっと、水には落ちるなよ。おい、こっちへ連れてこい」

とランズベルク伯爵が指示をする。


 ランズベルク伯爵の私兵たちが闘技場と観客席の間、堀になっているところへアステルを連れて来た。

 

 堀には水が張られている。


「良く見ていろ」


 ランズベルク伯爵が肉の塊を水の中へ落とした。

 すると無数の魚が肉へ群がる。


「この魚は獰猛で強靭な顎を持つ。骨すら噛み砕くぞ。頑張って少しでも長く生きてくれ。その方が観客も盛り上がる。前回は二体目の魔物『魔狼』に食い殺されて終わってしまったからな。…………さてと」


 ランズベルク伯爵が合図をすると一時的に観客席への階段が掛けられた。


「では、精々、私たちを楽しませてくれ」


 初めにランズベルク伯爵が 続いてアステルの腕を放した彼の私兵たちが階段を登っていく。


「ま、待ってください」


 アステルも後を追いかけようとするが…………


「お前が来たら、見世物にならないだろ。おい、蹴り飛ばせ」


 ランズベルク伯爵が指示を出すと私兵の一人がアステルを蹴り飛ばした。


 階段を転がり落ちて、アステルは地面に叩きつけられる。


「…………!?」


 アステルが痛みに耐えて起き上がると闘技場の地面から檻がせり上がって来た。

 檻の中には一匹のゴブリンが入っている。


『さぁ、舞台の開幕です!』


 ランズベルク伯爵が宣言し、カチッという音をすると檻の鍵が外れた。


「グググ……」と唸り声が漏らしながら、ゴブリンが外へ出て来る。


「おい、頑張れよ!」

「ゴブリンに殺されるな! 魔狼に殺されろ!」

「俺は大穴に賭けているだ!」

「即死はつまらない! 嬲り殺されろ!」


 観客席は大盛り上がりだった。


 しかし、そんな騒音はアステルの頭に入って来ない。


「えっ? 私、死ぬの?」


 アステルはきちんと現実を認識できなかった。

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