奥地の慟哭
エンディングが見えてきました。
森の中腹以降 、ここから先は私達にとって未知の領域に成る。
嫌に心臓の鼓動がうるさく成って来た。
ふと可笑しくなたよ。チートだと思った時からこんなに緊張したのは久し振りだなって。
うん、良い感じで緊張がほぐれたな...。
魔物さえ出なければ至って普通の森。
奥に進んだからといって別段異様な空気が流れるなどという事もないから逆に厄介だと思う。ずっと緊張し続けるのは正直言ってしんどい。私はずっと前から『調査』を発動しているから。
途中休みながら進む。
『癒し』では疲れは回復出来ないし緊張で張り詰めた感覚も治せない。
中腹に入ってから流石に魔物の数も格段に増えて来ている。
ここまで来ると動物などの死骸だけでは無く、虫、枯木、有りとあらゆる骸達が現れてくる。
それどころか、取り付くものが無いそれらはそのまま紫色のアメーバ状態で現れだした。
しかも逆にそのスピードは取り付いた後よりも数段早く厄介だった。
何故なら臭いがしない事や、音も無い事に、大きさも様々なのだから。
それらが生きた者に取り付いて居る処を見ていないと言う事は、やはり死骸などにしか取り付け無いのだろうか?
嫌、違う。
ママ様は襲われたと言っていた。そのせいでパニックに成り壊滅的打撃を受けたのだと...。
バリーパパ様のあの情景が脳裏を横切る。 駄目だ今は集中しないと。
どれ位歩いただろう魔素溜まりとはどんな物なのだろうか。
樹々を切り避けながら歩いて行く。
すると、いきなり視界が開けてそこに合ったものは....。
「なに、これ....」 「なん、だ、これは」 「すげぇ、でけぇ」
そこに有ったものは魔素溜まりなどでは無く大きな骸...。
その骸から湧き出るかの様に紫色のそれらは這い出てくる。
まるで紫色の蛆の様に、激しい怒りと悪意を撒きながらポトリと生まれてくる異様なそれに吐き気がしてくる。
「ルーク、ゼス、ごめん一度退却を...吐き気が...」
「大丈夫かアリー、すぐ戻ろう!ゼス後退だ!」
「お、おう」
2人は直ぐに私に駆け寄り手を握る『瞬間移動』「うグェ」キーセントシアの門近くに着いた瞬間私は吐いた。
今まで感じたことも無い嗚咽、嘆き、怨み、憎しみ、憤怒、それらが一瞬で私を襲って来たからだ。
それらは、あの大きな物体から確かに感じられたものだ。
「「アリー、大丈夫か」」 私はそのまま気を失った...。
気が付いたのは、もう夕刻近くの宿、私の部屋のベットの上だった。
「アリー、良かった気が付いたか。心配したゼ 水飲むか?」
「うん」 ゼスはコップに入った水を私に渡しながら心配そうに顔を覗きこむ。
「ごめんね、心配かけて もう大丈夫だから」
「お前の大丈夫程当てにならねぇもんはねぇよ」そう言う彼の顔は苦笑いだ。
「ふふ、そうか。そんなに心配掛けちゃったんだね」
「あぁ、ルークもさっきまで付いてたがアリーが起きたら腹減るだろうからと飯買いに行ったゼ」
「そか」
あれは、何だったんだろう?確かに骸だった。
色々な物が集まり固まったそれは大きな。
その姿を認めた途端に私の頭の中に押し寄せて来た感情に吐き気を抑えられなかったんだ。
あのアメーバみたいな物が、あの骸から湧いてるのか。
それとも逆に骸に取り付こうとしてるのか。
どちらにしてもこれはヤバイかもしれない。
この国に入ってからの危険を察知したオバちゃんの感はこれなのか?
早く、速くと急かされる様なあの感じは、リゼッタ様の容態では無くそれは危機感。
何故かはわからないけれど、 感情、気持ちが急げと急かしてる。
焦るからと言って物事の順番を間違えてはいけない。
まずリゼッタ様に報告し、するべき順番を話し合う事にしよう。それからだ。
その後帰って来たルークを交え、私の部屋で夕飯を食べながらこれからの順序立てを考える事にする。
もしもあれが逆に大きな骸に取り付いて来ているのだとしたら、その内に大きな骸は動き出すのだろうか...。(たおせるの?私達で)
この事実を各国に伝えた方が良いのか、考えれば考える程わからなくなる。
「私達がここで考えても良い案件が浮かぶとは思え無いしね。取り敢えず明日リゼッタ様に報告と、これからすべき事を話し合おう」
「そうだな。見た事の全てを話しどうするか だな」
「あぁ、俺は動くのは得意だがよ、頭働かせるのはどうも苦手だゼ」
夕食を食べ終わりそれぞれ休もうと成ったけど、夫達は心配だと言ってルークもゼスもそれぞれ部屋が有るのにわざわざ寝袋を持ち寄り私の部屋で休んでる。
本当に優しい旦那様達で嬉しいね。(心配かけてごめんね)そう心の中で謝るがニヤケ顔は隠せそうも無いや。
朝になり、3人で階下に降りいつもの様に朝食を取ると『瞬間移動』で宮殿の門前へ飛ぶ。
上手くあの情景を説明できるだろうか。
多分これからの事はこの国だけの問題では無くなりそうな予感が追加されたよ。オバちゃんの感にね!
門番さんに取次の依頼をすると直ぐに執務室に通された。
そこにはすでに、顔色も良く動きも軽やかに成ったリゼッタ様が居た。
「アリー、ようこそ...その顔では余り良い話は聞けそうにも無いわね。」
(聡い人だ、流石女王陛下だね)
「そうですね、出来れば良い報告がしたかったのですが そうも行かなそうです。事は思った以上に緊急を要するかも知れません。リゼッタ様のご意見をお聞きしたくてきました」
「わかりました、アリー話してください」
さぁ、これからどう対処して行くのが正しいのか話し合いましょう!
次回南へ殴り込み




