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付与魔法使いは迷宮へ  作者: 灯絵 優
付与魔法使いにできること
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第四話

 シャリオスは帰宅してから様子のおかしいミルを窺う。

 ずっと調べ物をしていたかと思えば、手紙を書いて出しに行き、かと思えば時空魔法について勉強している。話しかけても上の空だ。

「どうしたの?」

 顔を上げたミルはじっとシャリオスを見た。まるで目に焼き付けるかのように真剣な表情をしている。

「自分にできることが見つかったかもしれません。いえ、できる方法がでしょうか」

「手伝うよ。どうすればいい?」

「では、謎の部族について調べていただいても良いですか? それと作りたい魔法があるのです」

「わかった」

「そりゃワシも必要かの?」

 ひょこっと現れたヘテムルに、大きく頷いた。


 出した手紙の返事は三日後に来た。

 蝋封には教会の紋章。白銀の枢機卿からの返事だった。



 白の塔に赤い旗を立てたその日の夕暮れ。

 ミルは橋の上で待っていた。

「こんにちは、お嬢さん。悩みごとをお話しいただけるのですかな」

 落ちくぼんだ顔の男はそう言って少しだけ口角を上げる。だが、以前とは明らかに雰囲気が違う。

(人形使いがいる)

 禍々しい気配に見られていると感じた。

 人形使いを前に、乾いた唇を湿らせながら口を開く。

「見ていただきたい物があります」

 杖で地面を二度打ち付ける。足下に広がる魔方陣は青い光を放ちながら男を超え、橋を覆っていく。

「<逆行魔法(ミーク)>」

 瞬間、魔方陣の中が歪みだした。

 陣の中に人が現れ、後ろ向きに進んでいく。

 逆行魔法はその名の通り、時間を巻き戻す魔法。暗黒魔法の記憶を消すためにずっと研究していた内容を、白の塔の魔法書を頼りに作ったものだ。製作はシャリオスやヘテムルが手伝ってくれた事が大きく影響している。

「今から二百年前の景色を、お見せします」

 高速で動く人々。老人が若く、騎士の服装が古めかしく、橋が新しく、人々の暮らしが今よりも不便になっていく。水グミを噛みつぶし魔力を補充しながら待てば、女性が一人、転げ落ちるところで止まる。手には花束があった。

 男は目を見開いたまま固まっている。

「事故だったそうです」

 手すりが崩れ、目の見えなかった女性はそのまま落下し、瓦礫に頭をぶつけて死んでしまった。

 教会に残されていた古い記録を調べ上げた。

「落ちる直前まで、笑っていたのが見えましたか? 彼女はたくさん傷つきましたが、あなたが親切にしてくれようとしたのをわかっていたそうです。お礼を言って、それで過去を忘れようと思っていました。お花は、あなたに差し上げるつもりだったのではないでしょうか」

「記録が残っているわけがない」

 これは男の言葉ではない。

 直感的にそう思った。

「エルフはとても長く生きます。当時、ここで働いていた方を探して話を聞きました」

 一歩進むと、鬼灯の印が歪んだ。

 やはり見ているのだ。

 睨め付けるように睨んだミルは声を張り上げる。

「人形使い、あなたは彼に嘘を吐きましたね」

 現れたのは何だったのだろう。歪んだ鬼灯の印が驚愕に口を開ける人の顔に見えた。

 まるで後ろめたい事を見られた犯罪者が、気付かれないと信じ切っていた犯罪を暴かれたかのようだ。

「彼女が騙されて失意のうちに死んだと、彼を恨んでいたと嘘を吹き込んだのではありませんか。そうして心の隙間につけ込み、彼の人生を奪った。多くの人を弄ぶように操って、一人で楽しんでいる!」

 ぎゃあ、と声なき悲鳴が木霊した。

 怒りを表すように杖を地面に打ち付け、更に続けた。

「この方が本当に救いたかったのは、あの女性でした。しかし彼女は死んでしまい、永遠に救うことができない。彼はそのことに気付かず、貴方の滑稽なお人形になった! 解放されないと知らずに懸命に踊る姿を、長い長い時間、嘲笑い続けていたのではありませんか。あなたが見たかったのは滑稽な人形劇。騙されているとも知らず踊る姿は楽しかったでしょう。でも嘘は暴かれました」

 救済という脚本。

 誰か一人、心から救えたと思える人が出来れば、彼は呪縛から解き放たれる。

 話を聞いて彼が本当に救いたかった人は死んでいるとわかったが、できないことをやれと人形使いは囁き、騙された男をおかしいと嗤っていたのだ。

 その証拠に、男の体が灰色に崩れていく。

「私は騙されていた?」

「彼女を救えていました。あなたにも、誰にも落ち度はありませんでした」

「そうか……よかった、よかった」

 ボロボロと泣いていた男は服だけを残し、灰の山となった。その灰もすぐに消えていく。

 ミルは魔法を解いた。鈍痛に顔を顰めると頬をペロリとアルブムが舐める。頭から背中を指先で撫でながら残った帽子を拾い上げた。

「……楽しいのは自分だけじゃありませんか。酷い」

「そうだね」

 タキシード姿の男が眼前に立っていた。

 音も無く現れたのは、ピエロの面を被った不審者だ。長身痩躯で、爪先がくるりと丸くなった靴を履いている以外は、どこにでもいそうな風体であるが。

「だが、それが人間というものだろう? 優しい者が世間に揉まれ鎧を身に纏うようになるのは悪意から身を守るためだ」

 下ろされた仮面の中に隠されていたのは、優しげな顔立ちだった。けれど大きく開けた口から見える舌に鬼灯の印があった。

 【遊び頃(タドミー)】だ。

「あなた達はどこにでもいるのですね」

「年々増えるばかりだよ。我らを滅ぼせる者などいやしない。奴は長く生きすぎて、飽きたからと余興を求めるのさ。まるで食欲さ」

「人をはめる理由にはなりません。あなたがいくら言葉を弄しても否定します」

「課程は必要ない? 本当にそうだろうか。我らは生まれ生きている。人生には超えられない壁がいくつも存在し――」

「<浄化(ソーンメス・ルクス)>」

 付き合うつもりはないとばかりに放たれた浄化魔法が、男を包む。

 浄化魔法を浴びた【遊び頃(タドミー)】は体から煙を上げてなお悠々と立っていた。少しはダメージがあったかもしれないが、目に見えるほどでもなく、一瞬で治ったのかもしれない。

「酷いな、まだ話の途中だというのに。いいさ、君には礼を言いたかったのだし」

「お礼?」

「気付かないか? ここら一帯の人形から、人形使いの目が離れている。我らはつかの間の平穏を得て、物珍しさに君の前に現れたというわけだ。今ならば君の質問に答えられるだろう」

 嘘を言っている様子はないが、真実を得られるとは限らない。

 それでも問いかけなければ何も始まらないのだろう。

 一先ず攻撃を止めて杖を引くと男はほっとしたように上げていた両手を下ろす。

「人形使いのことが知りたいのです」

「今の我らには答えられないが、答えられる存在の元へ君を連れて行くことならできる」

「ススルさんもいらっしゃいますか?」

「確かめてみると良い」

 迷い無くミルは願った。

 ピエロの仮面を付け直した【遊び頃(タドミー)】は、大仰に手を振ると芝居がかった口調で言う。

「第二章の開幕だ!」

 指先を滑らせて空間を開いた男は、そこから扉を取り出した。古い木製の木戸で、ノブは錆びている。

 【遊び頃(タドミー)】はノブを捻ると手招いた。

 中は薄暗く、塗りつぶしたように黒かった。

 何も見えない中に、小さく光る物が見え、導かれるように入り込む。


「久しぶりだね。あれから一年も経っていないけれど」

 扉の中にいたのはよく知る――とは言えないが懐かしい男性だった。

 ススルは最後に見た時と同じ服装をして立っていた。落ち着いた表情で静かに佇んでいるような不思議な雰囲気になっている。

「どうぞこちらへ。ここは第一章を終わらせた人形達が集められる場所。今、彼らは眠っているけど」

 奥に進むほど明るくなっていく。それと共に大量の棺が見えた。石でできた棺の中に、黄金の花束を持った人形達が眠っている。その周りには棺に納めきれないほどの、同じ色の花で埋められている。

 静かな眠りの気配にススルを窺い見る。

「以前は常闇の中で暴れ回って大変だった」

「何かあったのですか?」

「この花が――黄金の花が落ちてきた」

 闇の中で人形達はずっと争っていた。頭がおかしくなったかのように怒りや悲しみが止まらず、狂ったように騒ぎ立てる。痛みはないが、永遠に逃れられないという狂気が渦巻いていた。

 けれど一輪の花がススルの頭に落ちてきて、その花に触れた瞬間、正気を取り戻したかのように負の感情から抜け出した。

 他の人形達は狡い狡いとススルを妬み、襲いかかった。

 だがススルに触れられても花に触れることができなかったのだ。

「これは僕への贈り物だから、誰にも奪えないとすぐにわかった。送り主もわかった。……だから、これを他の人形にやった。彼はすぐに眠ったよ。その花は永遠に彼の物になったんだ」

 そしてまた少しして、ススルの元に花が落ちてきた。

 毎日毎日続き、彼はそのたびに別の人形へ差し出した。

「最初は酷い争いになったし、懐柔してくる奴も出たけど、すぐいなくなった」

 順番が来ればもらえるという安心が、彼らの狂気を薄めたのだという。

 すると、他の人形の上にも花が落ちてくるようになった。

 行き渡っても花は終わらず降り続けている。

「君が僕らにくれたものだよ」

「私が?」

「こんな僕のために、毎日祈っていただろう? 触ると送り主がわかるんだ」

 よくみれば宵闇の花と同じ形をしている。

「眠った人形は、二度と起き上がることはない。人形使いの作った第二章は永遠に閉幕だ。奴は今頃、なぜ僕らが動かないのかと怒り狂ってるだろうね」

 おかしそうに笑ったススルは目を細める。表情から憎しみが見て取れる。だが仕返しをしたいと考えているわけではないようだった。

「先ほど【遊び頃(タドミー)】の男性が灰になったのですが、彼はどこに? 姿がありませんが」

「ここへ来ていないのなら、本当の意味で解放されたんじゃない? 他にも似た空間があるのか僕にはわからないけど」

「【遊び頃(タドミー)】は誰が生み出したのですか。人形使いのことが知りたくてここへ来たのですが……やはりクレルという人なのでしょうか」

「僕らは人形使いを見たことがない。人形が人形を増やしているから。でも【遊び頃(タドミー)】の中に本物の人形使いと接触したことがある存在はいると思うよ」

 考えるように顎に手を当てて続けた。

「他に知っているのは、『誘惑の手』というものが関係していることと、奴は隠れてしまったようだってこと。今回のことで驚いたんじゃないか? 自分の暗い笑いを満たす道具が見つかって、怒られてしまったからね」

「また出てきますか?」

「出てこないわけがない。でも、二章がこうなってしまった以上、脚本は書き直しだ。……どうして二章があることがわかったか聞いても?」

 苦く笑いながら答える。

「私に愛しているから教えると言ったススルさんの涙は赤でした。嘘をつくとき、赤い涙が出るのではありませんか? 私と結婚の話をしたときは流していなかったですし。……本当に愛しているのは、別の方なのでしょう?」

 息を飲んだススルは、ゆるゆると力なく首を振って項垂れた。

「……。君には酷い申し込みをしたと思ってる」

 救われたいという本当の思いと、愛しているという本心に逆らう言葉の違いを指摘され、ススルは目元を隠すように手の平で擦る。

 ススルに課せられた脚本も、本人の力では絶対に抜け出せないものだった。ススルに罪が無かったとミルは断言できない。だが、ここまでされるほど酷い行いだっただろうか。何百年も彷徨わせるほど残酷な行いを彼はしただろうか――いや、違う。

 ススルの行いは関係ないのだろう。

 人形使いは楽しみを見出したかったから、ちょうどよく面白そうな生き物を手に入れて人形にしたのかもしれない。

 ミルは人形使いのことを何も知らない。

 その存在が人なのかモンスターなのか、はたまた別の何かなのか。ススルに事情があったように、人形使いにも何かがあったのだろうか。残酷な笑いを楽しむ姿はどこか魔法剣士に似ている。

(彼もどこか……何か必死な様子だったわ)

 だがやらかしたツケは払わなければならない。

 これは許されない行為だ。人形使いも、【遊び頃(タドミー)】達も。

 過去に何があろうとも、しでかしたことの報いを払ってほしい。それはミルが望んだことであり、誰にやれと言われたわけでもない。自己満足だ。

 感傷に浸っていると困ったような顔をしたススルが頬を掻き、困惑したように言う。

「人形使いについて知りたいなら『誘惑の手』を探せばいいみたいだ。魔導具らしい。聖剣で貫けと言ってる」

「どなたがですか?」

「ここの人形達が僕に囁いている。なんだよお前達、寝たんじゃなかったのか?」

 ススルの頭の中へ囁いているようだった。

「最後に少しだけ起きたみたいだ。――見ろ、解放される」

 言葉と同時に、花弁が舞った。

 棺が次々と空になっていく。

「『誘惑の手』がどこにあるかご存じですか?」

「迷宮の最深部だと言っている。さすがにどの迷宮かはわからないようだ。さあ、そろそろ君の間男が心配する頃だろう」

 間男……と考え込む前に「シャリオス・アウリールだ」と答えを教えてもらう。

 ミルは微妙な気持ちになった。

「冗談だよ」

「はあ。ススルさん、あなたはこれからどうするのですか? 私は……眠ってほしいと思っています」

「ああ……そうだね。とても長い時間を過ごした。扉の彼にも花束をくれるか。それ目当てに協力してるみたいだし、奴が気付いたら何をされるかわからない」

「もちろんです」

「では、本当のお別れだ」

 ススルが背中を押すと、ミルは扉の外に立っていた。

 振り返ってもススルは闇の中――遙か奥で光る花弁の中に混じり見えなかった。

 「さようなら」と小さく言うと、水が大量に落ちるような音が聞こえてくる。なぜか「さようなら」と返された気がした。

 低い地鳴りに似た音に振り返ると、人影が一本の黒い川の流れのように宙に集まり始めた。【遊び頃(タドミー)】だ。それはとぐろをまいて蛇のようにうねると、扉の奥へ吸い込まれていく。

 ピエロの男は言う。

「さあ楽しい時間も終わり、閉幕となりました。お客様、お足元に気をつけてお帰りください!」

「さようなら」

「またのお越しを、心よりお待ちしております!」

 芝居がかった口調で恭しく頭を下げた男は、自分も扉の中へ身を滑り込ませる。

 彼の両手には花が溢れていた。

 扉が閉まると、泡のように消えていく。

「ミルちゃん!」

 気が抜けて座り込むミルに、隠れていたシャリオスが駆け寄る。背中を支えられたミルは「腰が抜けました」と笑った。

「やっぱり出てきたね、【遊び頃(タドミー)】。戦闘にならなくて良かった」

「付き合ってくださって、ありがとうございました」

「では、一旦終了という流れでしょうか」

 涼やかな声の持ち主は周囲を見回しながら続けた。布面を付けた顔のわからない神官服は枢機卿の装いだ。

「お話をいただいたときは、まさかと思いましたが……。上手く行って何よりです」

 白銀の枢機卿の背後では、サシュラが神兵に忙しく指示を出している。今日のために枢機卿は王族に請い、橋を一時的に封鎖してもらっていたのだ。無理を言って『神々の治癒』も借りてもらった。万が一戦闘になっても【遊び頃(タドミー)】を倒せるようにと。

 それでもあの数を見ると生き残れていたか怪しいものだ。少なくとも王都はただでは済まない。

「シャリオスさん、やるべき事がわかりました。【遊び頃(タドミー)】という人形を作っている人形使いは、『誘惑の手』という魔導具に関係してるみたいです。どこかの迷宮の最深部にいるとか」

「え? ……それってもしかして、魔導具が意志を持ってるってこと?」

「かもしれませんし、今はわかりません」

「ふむ、でしたら未だに見つかっていない迷宮か、一般公開されていない迷宮でしょう」

 無理矢理入るか、誰かに頼むか。

 どうしようかと二人が考えていると「許可証を発行いたします」と事もなげに枢機卿が言う。

「教会は世界中、どの国にもございます。【遊び頃(タドミー)】のこと、おそらく世界を上げての討伐戦となるでしょう。親玉を潰さぬ限り止りますまい。罪無き者が餌食になるのは耐えがたいこと。お手伝いしましょう」

「でも、僕達が考えてるとおりなら、触れると変質しちゃうよね。関わる人が多くなるほど犠牲が増えると思うけど」

「そうでした! 封じたいなら聖剣で貫けばいいみたいです」

「これかー」

 マジックバッグから取り出した聖剣を鞘から抜くと、磨き込まれた鏡のように綺麗だった。

「シャリオスさんが持っててくれてよかったです。聖剣を探すところから始めないといけませんでした。断っておいて申し訳ないですが、貸していただけないでしょうか」

「いいよ。むしろあげてもいいくらいだし」

「ありがとうございます。剣を使ったことがないのですが……私でも頑張れば剣士になれるでしょうか」

「あ、そっか。じゃあ僕が使うしかないのか。……教会の強い人にお願いして着いてきてもらう? さすがに二人じゃ危ない気がする」

「あとは依頼してパーティを組むしか思いつかないです」

 二人が顔をつきあわせて相談している横で、神兵も枢機卿もぷるぷる震えていた。

 枢機卿がどこかうわずった声で問いかける。

「失礼ですが、その剣はどこで? 本物でしょうか」

「シャリオスさんのお父様がくださったそうです」

「僕が持ち主を選んでいいって。ずっと皇国にあったし、本当だと思うよ。――思ったんだけど、ナディルさんにお願いしたらどうかな」

「ナディルさん?」

 首をかしげるミルにシャリオスは大きく頷いて答える。

「黒い馬に乗ってる人だよ。皇国で見なかった?」

「それは こんな はなしかたを している かた でしょうか」

「それ! デュラハンなんだけど、国で一番剣が上手いんだ。僕も勝ったことないし、騎馬戦凄いし、鎮めの輪(レーンタテス)をつければ日中でも関係なく動けると思う」

「お仕事があるのではないですか?」

「見回りばっかりで暇だって言ってたから、大丈夫じゃないかな。変な人はクラーケンおじちゃんいるから入ってこられないし」

 たしかに、あの超巨大クラーケンがいれば、おいそれと近づけまい。

 ミルはとても良い考えだと目をキラキラさせて枢機卿を見上げた。

 しばし無言だった枢機卿は一つ頷くと手を叩く。

 神兵達が一斉に動き整列した。

「今の話、他言無用です。人選については追って詳細を。今回のことを皇国をもう少し知る良い機会と捉えます。――では、我々はアルラーティア侯爵にも話をしなければなりませんので、一月後に再び白の塔へ集まる事でよろしいでしょうか」

「わざわざありがとうございます」

「これも光の精霊の導きです。我々はこれにて」

 お別れの挨拶をして枢機卿は帰っていく。

 シャリオスはナディルへ手紙を、ミルは今日あったことをヘテムルに伝えることにした。

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