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高嶺のお兄ちゃん  作者: 明智あきら
第2部
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第2部 プロローグ

 恋をしてしまった。



 中3にもなって初恋なんて、我ながら奥手だと思う。

 キスぐらいなら小学校のクラスメイトでもしてる子が数人いたし、真偽のほどはともかくエッチ済みを自慢する子もいた。

 亡き龍一兄ちゃんが家でしてる場面を目撃したのはなにを隠そうこのわたしで、早い子はそういうもんってのは承知してるつもりだ。


 ただそういう話を聞くとき、いつも不思議に思ってたことがある。

 女子は好きな男子がいて当然で、その相手とそういうことをしなきゃいけない、みたいな暗黙のルールが存在してるように見えた。


 そりゃわたし自身も普通に女子なわけで、まるで興味がなかったわけじゃない。このひとちょっといいな、と思う相手がいたことぐらいはもちろんある。

 でもそれは性的な意味より性差への興味というか、男子という、違う視点を持つ存在への興味あるいは憧れといったニュアンスが強かったように思う。


 歳を考えればずいぶんと生意気な言い方になっちゃうけど、そのせいか男子への好意すなわち恋愛感情とみなす風潮には、興味と同じぐらい違和感があった。

 恋に恋することが義務化されてるみたいで、なんだか釈然としなかった。



 昔住んでた土地はわりとヤンキー文化が根強かったから、そういう分野に関して早熟なのかと思ってた時期もある。

 けれどお上品ムード漂う国立に越してきたところで大差はない。やっぱり女子の一番の興味は彼氏を作ってあれこれすることで、強いて男子のそれと違いを挙げるならば、動機の主体が性欲じゃないことぐらいだろう。


 年頃の男子が持て余しがちらしいそれについてはよく分からないし、誰かに尋ねようとも思わない。といって女子にないのかと言えばそうでもなく、わたしだって決して例外じゃない。ただその欲が解消されないことで、特に困ったり悶々とすることもない。


 だから女子の、動機の核心はきっと「早く大人になりたい」なんじゃないかな、と思う。

 この言い方も他人事のようで変かもしれないけど、10代前半の女子にとって、恋愛経験がある=大人と言ってもいいぐらいだ。勝手な想像をさせてもらうなら、男子がバイクや車の免許を早く欲しがるようなものかもしれない。


 みたいな捻くれた分析だけすると負け惜しみのようでも、わたしには物心ついてからこれまでモテなかった時期が一度もない。これはこれで嫌味っぽいのを承知で言わせてもらうと、ただ作るだけならいつでも彼氏は作れたのだ。


 ではなぜそうしなかったのかという問いには、こう答えられる。

 大人になるために、恋をする必要がなかったからだ。

 違うやり方で、早く大人になろうとしてたからだ。

 早く大人になって、助けたいひとがいたからだ。


 とはいえ結局それはいまも叶わず、逆にそのひとから助けられてる始末。

 相手は2年ぶりに再会したばかりの、実の兄で――



――わたしが、恋をしてしまったひとだ。

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