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第1話 カイル先輩、またも大乱闘!

選んで頂き、ありがとうございます!

本編の4話から9話あたりの出来事です。


X(Twitter)では、作品の更新情報や、

学園の日常をつづる

【レオン先生の独り言】を投稿しています。


新聞部に頼まれて始めたはずが、いつの間にか締め切りまでできてしまった先生。

よろしければ、そちらものぞいてみてください。


▼X(Twitter)はこちら

https://x.com/michikusa_novel

 新聞部長エルザ・フォン・リントナーは、机の隅に積まれた新聞を見ていた。


 前号の残りである。


「……来月は、もう少し減らそうかな」


 くすんだ栗色の髪を低い位置で結んだ、どこにでもいそうな三年生。

地方下級貴族の長女で、成績は中ほど。魔力量はD。


 部長になっても、文章が急にうまくなることはなかった。


 手元の原稿には、『食堂の混雑について』とある。


 昨日、並んでいる間に食べたかった料理がなくなった。大切な問題だと思う。


 ただ、自分なら新聞より献立表を見るかもしれない。


 悩んでいるところへ、扉が開いた。


「部長、乱闘事件です!」


「……また?」


「カイル先輩と下級生です」


 エルザの眼鏡が、きらりと光った。


「……下級生と?」


「はい」


「……詳しく聞かせて」


「校舎裏で騒ぎになったそうです」


「怪我は?」


「まだ分かりません」


 エルザは手帳を取り、鉛筆を探した。


 原稿の下にあった。


「行こう」


     *


 話した人は、たくさんいた。


 見た人は、なかなか見つからなかった。


 カイル先輩が先に殴った。


 下級生から向かっていった。


 何人も倒れていた。


 何人かと聞くと、皆、少し考えた。


 ようやく見つけた目撃者も、騒ぎの途中からしか見ていなかった。


 手帳に疑問符を増やして戻る途中、鮮やかなピンクの髪が目に入った。


「エルザ。あんたまで、何やってんの?」


 クラウディアだ。


 カイル先輩たちの不良グループの一員で、傍から見れば、エルザとは接点のなさそうな相手だった。


 けれど、不思議と趣味が合った。何度か話すうちに、いつの間にか仲良くなっていた。


「取材。でも、分からないことばっかりで」


 手帳を見せると、クラウディアは眉を寄せた。


「……これ、記事になるの?」


「今、それを考えてる」


「分かんないことは、分かんないって書けばいいでしょ。知ってるふりされるよりマシよ」


「……そうだね」


「あと、あんた。また昼ご飯食べてないんじゃない?」


「どうして分かったの?」


「何か書いてると、いつもそうでしょ」


 エルザは廊下の時計を見た。


 もう遅かった。


     *


 夕方、机に原稿がそろった。


『カイル先輩、またも大乱闘!』


「……大乱闘だったかは、分からないんだけど」


 エルザは見出しに疑問符を足し、その下へ取材で分かった範囲を書き添えた。


 隣の原稿は、『王国宰相、またも街道建設!』。


「こっちは確認できてる?」


「はい。発表がありました」


「なら、疑問符はいらないね」


 同じ「またも」でも、記事の書きやすさは違うらしかった。


     ◆


王立魔法学園新聞


発行:王立魔法学園新聞部

編集責任者:エルザ・フォン・リントナー


   【校内の話題】


カイル先輩、またも大乱闘!?

今度は下級生と――何があったのか取材しました


 五年生のカイル・ロッソ先輩が、下級生と喧嘩になったという話が新聞部に届きました。


 何人かに聞いてみたところ、人が集まる騒ぎがあり、そこにカイル先輩がいたことは分かりました。


 ただ、どうしてそうなったのかは、まだ分かっていません。


 「カイル先輩が先に殴った」と言う人もいれば、「下級生から向かっていった」と言う人もいました。でも、よく聞くと、その人も友達から聞いた話だったりしました。


 何人が関わったのか、怪我をした人がいるのかも、話が違っていました。

カイル先輩本人には、今回は話を聞けませんでした。


 あまり詳しいことを書けず、すみません。分かったことがあれば、続けてお知らせします。


 最初から見ていた人がいたら、新聞部まで教えてください。


   【王国政治】


王国宰相、またも街道建設!

今度は道と橋を整えるそうです


 宰相の新しい街道建設計画が発表されました。


 街道が便利になると、商人が荷物を運びやすくなり、私たちも旅行や帰省がしやすくなるそうです。


 今回は、新しい道を造るほかに、今ある道を直したり、

橋を丈夫にしたりする予定です。

道幅や、どれくらい重い荷車が橋を渡れるかも調べるとのことでした。


 まだ通る人が少ない道も工事に入っています。近くに住んでいる人には、うれしい話かもしれません。


 ただ、お金も人手も必要です。たくさん造って大丈夫なのか、というところも気になりました。


 新聞部では地図で場所を調べましたが、知らない地名が多く、

思ったより時間がかかりました。これを機会に覚えたいです。


 なお、「食堂の食材も安くなるのでは」という意見が部内で出ました。

そうなったらうれしいですが、今のところ分かりません。


   【気になる新任教師】


 レオン先生、大丈夫? 大物?

 新任のレオン・ハーグリーヴス先生。「面白い先生が来た」と「変な先生が来た」で、

 評判は真っ二つです。


 もしかすると、同じ意味かもしれません。

 これから何をするのか、新聞部も気にしています。取材が昼休みに重ならないと助かります。


   【学園生活】


食堂で困ったことはありませんか?


 昨日、食堂で列に並んでいたら、あと三人くらいのところで、食べたかった料理がなくなりました。


 仕方のないことですが、別の列に並び直すと、今度は食べる時間が短くなってしまいました。


 同じような経験がある人や、うまく並ぶ方法を知っている人は、新聞部まで教えてください。


 今日は取材をしていたら、食堂へ行く時間そのものがなくなりました。

明日は早めに行こうと思います。


   【編集後記】


 取材に行けば、もっといろいろ分かると思っていました。聞く人が増えるほど話も増えて、

途中から困ってしまいました。


 友人に「分からないなら、そう書けばいい」と言われて、やっと記事が書けました。ありがとう。


 見出しの「大乱闘」は、少し大きく書きすぎたかもしれません。次の部会で相談します。


 それから、なくした原稿は地図の下にありました。

探すのを手伝ってくれた皆さん、すみませんでした。


         新聞部長 エルザ・フォン・リントナー

新聞ができるまでの小さな騒動と、出来上がった紙面をセットでお届けする、学園新聞部コメディ。


『みちくさ先生の魔法学園改革記』の舞台裏を、生徒たちの目線から。

不定期刊行。事件がなくても、締切は来ます。

4,5日に一度ほど

22:30の投稿予定です


こちらから入って気に入った方は本編もよろしくお願いします。


ncode.syosetu.com/n7543mx/

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