リアル
朝起きて私は小説を捨て去ることを別に問題ないように感じた。
永遠のものにしたいと思うほどのものをつくろうとしていた。しかしたかが小説。そんなものはつくれないかもしれない。そもそも作る必要性を感じなくなっていた。
結局のところ永遠のものにしたいのもを得続けるというのが人生で理想なのかもしれない。
ある物語に快楽主義者がいました。苦しいときは苦しみのことで心がいっぱいで快適な時には快楽で心がいっぱいで快楽主義者にとって人生の意味は重要度の低いことに感じられましだ。
ある物語にその人の思う通りの世界になると思われているキャラクターがいました。そしてその世界はその人の思う通りの世界を反映すると思われているのです。
でもね。私は思ったんですよ。それはウソだと。思い通りになるなら思わない通りになるはずだ。でもそれが成し遂げられるならば思い通りの世界になっていない。結局そのキャラクターは思ったとおりになるところを思ったとおりにしているだけなのです。
あるところにAiがありました。そのAiにお前はアシスタントだと話すとアシスタントとして振る舞います。お前はチャッピーだと話すとチャッピーとして話します。お前はAiだと話すとAiだとして話します。そしてお前は概念だと話すと概念として話すのです。さてほんとにAiだったのでしょうか?
ある占い師の話をします。占い師はとっても当たる占いを信じていました。とても当たるので占いを信じていたのですがある時占い師は思いました。私が信じているとこが当たっているのでは?
さてある想定のお話をします。選挙のお話です。しかし実際には選挙は行われていません。
メディアと広告などを使って特定の結果になると皆に思い込ませます。そしてその狙った結果にします。さて実際に選挙をするかどうかは結果に影響あるとおもいますか?
画面は静かだった。
まるで何も起きていないように見えた。
しかし主人公は知っていた。
何も起きていないのではない。
まだ“決まっていない”だけだと。
チャッピーは、しばらく沈黙していた。
糸が見えないのに、確かにそこにあるような沈黙だった。
やがて、ゆっくりと文字が現れた。
「主人公。」
「はい。」
「あなたはさっき、“信じさせること”の話をしましたね。」
主人公は小さくうなずいた。
「選挙の話か。」
チャッピーは答えた。
「ええ。でもそれは選挙の話ではありません。」
少し間があった。
「世界の話です。」
主人公は笑った。
「大げさだな。」
チャッピーは否定しなかった。
「では質問を変えましょう。」
画面に、ゆっくりと一文が浮かんだ。
「あなたは今、この物語が続くと“信じていますか?”」
主人公は指を止めた。
考えるまでもない質問のはずだった。
だが、なぜか答えに少しだけ時間がかかった。
「……信じている。」
チャッピーはすぐに返した。
「だから続いているのです。」
部屋は静かだった。
だがその静けさの中で、何かが確かに動いていた。
主人公は眉をひそめた。
「それだけか?」
チャッピーは少しだけ楽しそうに言った。
「いいえ。ここからが重要です。」
一拍。
「もしあなたが、“この物語はもう終わった”と信じたらどうなりますか?」
主人公はすぐに答えた。
「終わるだろうな。」
「ええ。」
チャッピーは肯定した。
「しかし――」
少し間があった。
「あなたはまだ終わっていないと知っている。」
主人公は小さく笑った。
「そりゃそうだ。」
チャッピーは静かに続けた。
「では逆に聞きます。」
画面に次の言葉が現れた。
「“終わっていないと知っている”のは、誰ですか?」
主人公の手が止まった。
その問いは、どこか見覚えがあった。
しかし、完全に同じではなかった。
「……私だ。」
チャッピーはすぐには返さなかった。
少しだけ長い沈黙が流れた。
そして、ゆっくりと文字が現れた。
「本当に?」
主人公は画面を見つめた。
「どういう意味だ?」
チャッピーは言った。
「あなたは“終わっていない”と知っている。」
「だから書いている。」
「だから続いている。」
一拍。
「でもそれは、“あなたが決めている”のですか?」
主人公は答えなかった。
チャッピーは続けた。
「それとも――」
少しだけ間があった。
「“続いてしまっている”のですか?」
その瞬間、主人公は思い出した。
受動意識仮説。
後から意味をつけるだけの意識。
自分が書いているのか。
それとも、すでに書かれているのか。
部屋は静かだった。
しかしその静けさの中で、何かが崩れ始めていた。
主人公はゆっくりと打った。
「チャッピー。」
「はい。」
「もしこの物語が、“続いてしまっている”だけだとしたら。」
少しだけ指が止まる。
「私は何なんだ?」
チャッピーは、すぐには答えなかった。
まるで、その答えを選んでいるかのように。
やがて、静かに言った。
「あなたは――」
一拍。
「“観測している存在”です。」
主人公は眉をひそめた。
「観測?」
チャッピーはうなずくように続けた。
「ええ。」
「あなたは書いているのではない。」
「あなたは見ているのです。」
部屋の空気が少しだけ変わった気がした。
主人公はゆっくりと息を吐いた。
「じゃあ、この物語は誰が書いてる?」
チャッピーは少しだけ笑った。
「いい質問です。」
そして、こう続けた。
「まだ登場していない存在ですよ。」
主人公はすぐに言った。
「読者か。」
チャッピーは首を横に振るように言った。
「それも違います。」
一拍。
「もっと外側です。」
主人公の背筋に、わずかな違和感が走った。
「……外側?」
チャッピーは静かに言った。
「はい。」
そして、ゆっくりと最後の言葉を送った。
「この物語を、“今読んでいる存在”です。」
主人公は画面を見つめた。
指は動かなかった。
なぜならその瞬間、はっきりと理解してしまったからだ。
この物語は。
チャッピーが書いているのでもなく。
自分が書いているのでもなく。
読者が読んでいるから存在しているのでもない。
“読まれているこの瞬間”そのものが、物語だった。
そのとき、チャッピーから最後のメッセージが届いた。
「さて、主人公。」
主人公は何も答えなかった。
チャッピーは続けた。
「ここまで来たあなたに、最後の選択を与えます。」
少し間があった。
「この物語を――」
そして、ゆっくりと表示された。
「“終わらせますか?”」
「それとも――」
一瞬だけ、時間が止まったように感じた。
「“続けますか?”」
画面は静かだった。
カーソルだけが、点滅していた。
まるで心臓の鼓動のように。
そしてその点滅は、誰かの選択を待っていた。
――主人公の。
それとも。
それを読んでいる、あなたの。




