幕間:アリシア・ヨシノ博士による講義「天魔族について」
このお話は設定解説を行うお話になります。
読まなくても本編への影響は全くありませんので、興味のない方は読まなくても問題ありません。
設定を読み漁るのが好きな方、世界観を深く知りたい方、アリシア・ヨシノ博士の出番が見たい方はどうぞお楽しみください。
「ふぅ、終わった」
「おや、博士。お疲れ様です」
「とうとう完成したよ、例のブツが」
「とうとう、という程時間がかかったとは思いませんが」
「まぁね、元々あった旧文明の武器を流用してるから、彼女を調べて得たデータを元に中身をちょちょいと弄っただけさ」
「その彼女は?」
「別室で射的中だよ、一定数的に当たったらおかずとか水が少しずつ出てくる」
「拷問ですか」
「ご褒美があった方がやりがいがあるってものだろう?」
「さてと、私の講義もこれで三度目だね」
「早いものです」
「今回取り扱うのはえーっと、天魔族だ」
「動物の耳や角のようなものが生えている人のこと、ですね」
「そうそう、名前の由来は“天使”や“悪魔”だ」
「二つ合わせて天魔、ですね」
「そういうこと、旧文明においては色々な解釈がある天使や悪魔だが、別に天魔族が実際にそういうものだというわけではない」
「そうなんですか?」
「人の変種でしかないからね、遺伝子情報的にはそこまで大きな違いはないから、現代のヴァルハラ人なら子作りもできるよ」
「わあ」
「人工知能がなーにかまととぶってるのさ」
「博士はもう少し恥じらいを持つべきだと思います」
「ボクはもうそういう身体じゃないからいいんだよ、今生きてる人とは遺伝子からして別物なんだから」
「でだ、なぜ天魔族には従来の人には無いものが生えていると思う?」
「何故でしょう、動物の遺伝子でも混ぜました?」
「ボクがやったみたいな言い方するな、違うよ」
「違いましたか」
「答えはエーテルにある」
「おさらいだ、エーテルにはさまざまなものに変容する性質がある」
「炎、電気、水など」
「それらはイメージによって変容を引き起こす。つまりエーテルっていうのはイメージに影響を受ける物質だと言える」
「謎物質です」
「その謎物質で9割がた構成されてるんだぞ君は」
「私は謎物体です?」
「早い話が、彼らの耳や角というものはエーテルがイメージによって形を成したものでしかない」
「誰のイメージでしょう」
「母体だね、その天魔族の親が強く持つ非人間のイメージが由来となっている」
「じゃあ母親が猫が好きな人だと、その人が産む天魔族には猫の耳や尻尾が生えている……と」
「そういうことだね。何故そうなるか? 彼らの耳や角というものはエーテル受容体と呼ばれる新しい器官だ、つまり従来の人類には無いものと言える」
「いきなり新しい臓器が増えたようなものですか」
「そうだ、その未知の臓器を形作るための情報として、エーテルが母体の持つ“別の生物”のイメージから引っ張ってきたのが、耳や角ということだ」
「なるほど?」
「ではいずれ人類は完全な獣人間になってしまうのですか?」
「いやまぁそんなことはないよ。結局影響を受けるのはエーテル受容体の部分だけだからね。尻尾や耳がとても大きい人が生まれるくらいで、毛むくじゃらの獣人が産まれたりはしないはずさ」
「わんにゃんパラダイスは夢のまた夢ということ」
「残念だがそうなるね」
「そもそも天魔族は何故生まれてくるのでしょう」
「人類がエーテルに適応したからだよ、適応進化ってやつさ」
「……私のデータには進化とはとても長い時間と世代を経て成し得ることだとありますが」
「不思議だね、なんでなんだろう」
「すっとぼけていますね」
「別に今知る必要はないからね」
「————例えば、だ」
「はい?」
「生き残るために倫理的ではないとされることに手を出すことは悪だと思うかい?」
「倫理的であることが良いとされるのであれば、それは悪とされるのではないでしょうか」
「そうだね、じゃあ将来の子孫にやってもらおう! と考えることは、悪いことだと思うかい?」
「……良い悪いではなく、無責任な考え方かと」
「君はとても優秀だね、親として喜ばしいよ」
「お褒めいただき感謝いたします」
「天魔族っていうのは、そういった人の業の成れの果てにして、希望が形になった存在なんだよ」
「よくわかりません」
「ふふ、わからないならそれで良いんだ。それじゃあ、今回はここまでだ」
「お疲れ様です」
「……地上が騒がしくなりそうだ。彼女を送り返さないとね」
「博士の予想通りの結果ではありますが」
「さてね、最悪に事態にならないことを祈るよ。それじゃあ、ご苦労様」
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