EPISODE FINAL 落ちこぼれたちは機械人形と世界を救う
まずは腕試しと言わんばかりに、両者から極太ビームの洗礼を終え、互いの機体、騎士団たちが入り乱れながら戦っていた。一人の騎士団員が量産機の腕を切り落とすも、切断面からツタ状にケーブルが生えてきて、切られた部品をくっつき始める。
「ちっ、こいつら、切っても再生しやがる」
「焼いても表面は元通り、上半身を吹き飛ばしても生えてくる……下手なアンデッドよりもアンデッドしているな!」
「騎士団の人は下がって足止めだ。ここは私たちが引き受ける!レイ、ついてこい」
「オッケー、ゼロツー!セブンの道を開けよう」
火力自慢の二人が量産機を溶かしていき、その間を縫うようにナナがギースに接近する。彼らの間に量産機が介入する気配が無いことから、ギースは自身の手でナナを葬ることにこだわっているようにみえる。ギースのバスターソードとナナのロングブレードがぶつかり合い、火花が散る!
「セブンスセブン、この瞬間をどれほど待ちわびていたか分かるか!」
「わかりませんよ、そんなもの!」
膠着状態を嫌ったセブンスセブンが足蹴りを入れるも、ギースがそれをなんなく避ける。だが、距離を取ることに成功したナナはすぐさまGライフルを撃つも、量産機よりも堅牢な装甲に阻まれダメージが無い。
「お前らが居なければ、人類を抹殺できたものをぉおおおおお!」
「誰もそれを望んでいません!」
「いいや、望んだ!より多くの人を殺せ!より多くの血を流せと!そう望んだのは人間ではないか!だからこそ、機械である我が人類を粛清しようというのだ!!」
「ギース、それがバグでもエラーでもなく貴方が出した答えというのなら、私はそれを否定します!」
大きく振りかざしたバスターソードを皮一枚でかわしながら、ギースの腕を切り落とす。だが、切り落としてもまるで何もなかったかのように瞬時に再生する。
「自己再生のナノマシンを利用していたとしてもいくらなんでも早すぎる……まさかD4の次元を利用する力を利用して、過去の無事な機体と入れ替えているのか」
「さよう。俺の機体は常に新品同然にアップデートされ続けている。そして、ダメージを負った過去の機体を修理する時間はごまんとある。つまり、この俺を倒すということは帝国の歴史そのものと思え!」
「ならば、それごと砕くまで!」
「ナナ、リミッター解除!」
「貴様らにできて、我ができないと思うな!リミッター解除!」
2人が赤い粒子をまき散らしながら、激しくぶつかり合い、螺旋の光を描いていく。一進一退の攻防に他の者は手出しすることさえできない。
「問題はあの再生能力だよね。女王陛下、なにか考えは? 僕は見ての通り、科学方面は疎くて」
「科学……ギースの自己修復機能もシステムで動いている以上、ハッキングで切れば良いけど、おそらくスタンドアローンにして弱点を消しているはず」
「う~ん、それはどうかな」
「サイケ、何かあるのか?」
「僕たちって帝都で働くことも多いけど、ギースを一度も見ていないんだよね。つまり、逆説的に言うならギースはゲートを通ったことが無いんじゃないかな。新大陸って言われるほど離れた土地なら、長距離通信のシステムを持っているってこと。そして、あれだけ激しく機体の通信機能なんてたかが知れている」
「つまり、ギースが皇帝陛下に指令を出すためには、どこかにある別の機械を介して通信しないといけない。となれば……」
「そこから、ハッキングを仕掛けることができる可能性があるってわけ。システム的につながってなくて、電話越しで話されていたらお手上げだけど」
「望みが薄くても通信システムがあるとすれば、あそこしないだろうよ」
4人が見上げるは不気味にたたずむセントラルタワー。そこにいけばギースに干渉できる希望がある。
「行くぜ!俺たちでセントラルタワーを攻略だ!」
戦線を抜けた4人がセントラルタワーに向かって走り出していく。
大西洋ではリヴァイアが黒い影の集団を察知し、海にすむ魔物たちに攻撃命令を与えていた。
「一つ目の機械なら敵じゃろ!どんどんやれ!!」
大津波を引き起こしたり、触手を伸ばして海中に引き釣り込んで、身動きが鈍くなったところを魚人たちが葬り去っていく。
「ん、こやつら、傷口が再生するのか。まあ、深海で身動きを取れなくすればいいじゃろ」
いくら再生しようが水圧で押しつぶされれば、意味をなさない。逃げ場も対抗策もとれないガラクタとなり果てたマシンエンペラーは深海魚の巣でもなるのがお似合いだ。海という鉄壁の要塞を攻略するのは不可能と見たのか、量産型マシンエンペラーⅢは高度を上げて海から逃れようとしていく。
「ちっ、あれだけ高く飛ばれたら、わらわの攻撃も届かん。あとは馬鹿に任せるとするか」
リヴァイアは元凶と思えるアメリカ西海岸へと歩を進めていく。
帝都上空。
戦いが終わり、傷ついた兵たちが看病されている中、ギースのマシンドールが黒い靄のように襲い掛かってくる。それを待ち受けるは暇そうに空を旋回していたタイラント。敵を見つけるや否や嬉しそうなドラゴンの咆哮が大気を震わせる。
「おうおう、なんだ。ずいぶんと気前良いじゃねえか!なら、俺も本気を出せるってものだ!」
オープナーから撤退する際に使用した超弩級殲滅魔法の魔法陣が上空に煌びやかに描かれていく。そして、無数の隕石が降り注ぎ、マシンエンペラーを溶解させながら破壊していく。
「結構砕いても再生するんだな。なら、跡形もなく消し炭にしてやるぜ!プロミネンスノヴァ!!」
再生中のマシンエンペラーに向けて大熱波が襲い、溶けた鉄へと還元していく。そこまで行けば、彼らの再生機能も発揮しない。まだまだビュッフェのように湧いて出てくる敵にタイラントは一人渦中へと飛び込んでいく。
シャルトリューズ王国、王都上空。
帝都から相手に再生能力があることを聞き付けたピスコ国王代理は必殺のアルカンシェルを起動させ、マシンエンペラー軍団に風穴を開けさせる。だが、主力の騎士団は遥か彼方。国内には最低限の戦力が存在しない今、彼らに取れる有力な手はなかった。
「高火力な魔法を撃てる魔術師などおらんぞ……どうする……?」
「……ならば、その役目、我が果たそう」
「その声は……!?」
「我は魔王。盟友の祖国の危機に参上いたした」
魔族の指揮を部下たちに任せ、一人、転移魔法で飛んできた魔王がマシンエンペラーⅢたちの前に躍り出て、最上級魔法を唱えていく。静かな空が一転して、嵐が吹き荒れ、雷が網目のように降り注ぎ、敵を捕らえ撃ち落していく。そして、地上に墜落した機体には黒い火炎の地獄が待ち受けられ、灰となって消える。この世の終焉と思えるほどの光景であった。
「封印に割く魔力が無い今の我は少しばかり強いぞ」
各地で結ばれた縁が、彼らの帰り場所を護るため各地で健闘していく。彼らの勝利を願いながら。
「なぜだ、なぜ、我らがおされている!? 虫けら共より戦力はこちらが上回っているはず!」
「決まっています。人間はどんなときでも諦めが悪いからですよ。そして、私も!」
カタログスペックでは劣っているはずのセブンズセブンに喰らいつかれ、何度も自己再生を繰り返している。精神的に追い詰められたギースはもう一つのシステムを起動させる。
「疑似バーストモード!」
「では本家本元のバーストモードをお見せしましょう!アイリス!」
【わかっているわ、ナナ!】
「【バーストモード!】」
2人の心が重なり、炎の鬼神となったナナが再誕し、黒き破壊神と激突する。一発一発の余波で大気が揺れ、木々が凪倒れていく。
「どこまでも我の邪魔をするか!セブンスセブン、アイリス!」
「いいえ、ここで決着をつけます!」
互いに殴り始める二人。リミッター解除とバーストモードの二つのシステムの相互作用により、一発が致命傷になりうるほどに膨れ上がった攻撃は下手に武器を持つより、より隙の少ないステゴロの方がダメージを与えられるからだ。
一見にして互角。だが、無限再生できるギースに対し、二つのシステムを起動させることで機体自身が悲鳴を上げているナナとでは長期戦になった場合、どちからが勝つか明確である。ゆえに彼にとっては長期戦は喜んで受けていたのだ。
「どうした動きが鈍っているぞ!」
「ぐっ……まだ諦めない!」
殴り合った左こぶしが砕け散る。それを見たギースが薄気味悪くわらう。再生能力のないナナにとって、致命的な一撃だったからだ。だが、その笑みも一瞬にして消える。
「馬鹿な、なぜ我の腕が再生しない……」
【残念でした~僕のお手製遅延プログラムのお味はどうかな? 僕もマシンドールの技術開発者。逆利用される可能性も考えて、対抗策を用意しておくくらい考えてなかったのかな~ああ、ごめんごめん。君、人間じゃなくて機械だった。僕たち、機械じゃないから余計なプログラムを片手間に作っちゃうんだよね。それが不完全って言われたらアレだけど。そういうとこが人間らしさってことで、一つよろしく~ちなみにハッキング担当は君のだ~いすきなアイリスちゃんだよ~】
「おのれおのれおのれええええ!このクズで、虫けら以下の、落ちこぼれ生命体がああああああ!!」
【落ちこぼれで何が悪いの!完璧な人なんて誰もいないわ。だからこそ、支え合って生きていけるの】
「機械も人も共生していく未来を選びます。ギース、これで引導を……!バーストブレード・リミットブレイク!!」
炎の剣が再生能力を失ったギースを焼き払い、消失させていく。多くの人間を葬った闇の知恵は二度と蘇ることが無いように……
親機であるギースを失ったことで、全国各地に広まった子機である量産型マシンエンペラーⅢはその動きを止める。それは決戦の場である北米大陸でも同様であった。
「ギース……もし、私が先に生まれていたのであれば、私は心を殺し、無慈悲な殺戮機械になっていたかもしれません。ですが……」
そうならなかった理由をナナはその目でとらえる。セントラルタワーから出てきたアイリスたちの姿を。
「私には帰る場所があります」
「ナナ!」
「アイリス!」
2人は抱きしめ合い、勝利の余韻を噛みしめる。
その後、様子を見に来たリヴァイアに乗って、大西洋を横断することになるのだが、それは別のお話だ。




