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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第4章 機械人形と決着

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EPISODE74 破滅の光

 雪が解け始めたころ、大量殺りく兵器D4に関する開発中止の再三にわたる勧告を無視してきた帝国に対し、三か国同盟及びその傘下に加わった国や地域は武力による介入を決めた。


 北からは魔族、獣人を中心とする軍隊、東からはシャルトリューズ王国及び帝国から離反した正規軍の混合部隊、南からは傘下に入った有志連合軍が攻めていく。また、西にはタイラントと一部の魔物たちがにらみを利かせている。そして、彼らが攻め入ったと同時に内部でくすぐっていたレジスタンスたちが一斉蜂起、暴動が起こったエリア3は誰の制御もできない無法地帯へと成り下がっていた。


「アヤメさんたち、無事でいてほしいけど……」


「彼女たちを信じてこのまま進むしかありません」


「それもそうね。アーク、このまま国境を乗り越えます」


 飛行艦を改造し、赤く塗られたそれは人類の希望を乗せた箱舟『アーク』と名付けられた。本来ならば、国境を乗り越えるところでひと戦闘あってもおかしくはなかったが、内乱でそれどころではなかったらしい。


「女王陛下、いやこの場合は艦長さんのほうが良いか。そろそろ、第2城壁が見えてくる頃だ。マシンドール部隊を発進させても良いか」


「ええ、そちらのマシンドール部隊の指揮は任せたわ」


「了解。マシンドール部隊、発進を急げ」


 アークから次から次へとPアサルトが飛び立っていく中、ひときわ目立つ青い翼を広げたナナの姿があった。

 取り回しの悪い肩部のエーテルキャノンや腕部のガトリング砲を廃止し、代わりに腕部にはエーテルブースターに組み込んだエーテルマナコンバーター技術を応用したGシールド発生装置が組み込まれている。さらに、ナナの接近戦を好むタチを踏まえ、ビームサーベルや実体剣の装備は忘れてはいない。

 この決戦に向けて投入されるであろうまだ見ぬエース機に対しての決戦兵装だ。


「それにしてもセブンだけ新装備なんてずるいな」


「船の改修に時間がかかった以上、1機分しか作れませんでしたから」


「それなら、この戦いが終わったらボクも作ってもらおう」


「何と戦うつもりですか?」


「まあ、魔物とかかな。それにスタンピードってのもあるみたいだし、この戦いが終わっても、ボクたちの戦いはまだ続くんだからさ」


「……そうですね。そのためにも、今は!」


 いくらエリア3で暴動が起こっていると言っても、第2城壁の戦力を減らすわけにはいかないと判断したのか、イナゴの大群かと思うほどのマシンドールの群れがナナたちを出迎える。そんな目の前にいる帝国の防衛部隊のマシンドール部隊に向けて、広域殲滅兵器(MAPW)を放っていく。


「GDブラスター!」


「レイバスター!」


「エーテルキャノン、最大出力!」


 また、アークに搭載されている量産マシンドールも魔石をふんだんに消費するほぼ使い捨てのマナキャノンを放っていく。それらの魔石は帝国に滅ぼされかけたコパール王国産、兵力を送り込めぬほど疲弊した彼らの分の思いが詰まっている。

 彼女たちが放った光が収まると、そこにはまばらに散った防衛部隊たち。こうなれば各個撃破も容易だ。



 一瞬にして、戦力の7割を失った帝国軍の防衛部隊を指揮している将校たちはその威力に目を見開く。


「なんだ、あれは!?」


「わかりませんよ。大佐、どうするんですか」


「ほ、ほかにマシンドールはないのか!」


「増援を要請していますが、死守せよとの一点張りで……」


「エリア2、いやエリア1の連中はここを捨てるつもりか」


 エリア3はもはや統治不可能。ならばエリア2を死守するために増援を出すだろうと思っていた。だが、最初の暴動が起きてから時間が経っても、敵国の侵略を許しても、エリア2からの増援が来る気配は無い。自分らは見捨てられたのだと悟るものは少なくない。

 何人かの軍人は軍服を脱ぎ捨て、エリア3の混乱に乗じて逃げようとする者さえいる。マシンドールの登場により、1年もたたない間に帝国軍は、国を守るという理念を失っていき、己のことしか考えることしかできなくなっていた。


「敵戦艦から入電。降伏を促しています」


「ぐぬぬ……奴らめ、いい気に乗りおって。まだマシンドールの数はこちらが上なのだぞ!」


 降伏勧告を跳ね除けた無能な将校は目の前にいる部下たちに何としてでも守らせろと怒鳴り散らかすだけであった。



「降伏勧告無視。まあ、そうなるでしょうよ」


 騎士団たちがハッチから飛び降り、マシンドールたちに肉薄していく。たかが人間如きとでも侮っているのか、Gアサルトは無造作にライフルを放っていく。


「!!?」


「なに驚いているのさ。こっちは何回模擬戦闘を繰り返していると思っているわけ。同じ機械で、同じ攻撃でもナナちゃんの方がよっぽど活きていたよ」


 ナナと一緒に訓練することが多かった騎士団たち。いくら人と似せて作ったマシンドールと言えども、わずかに違和感を感じる所作はある。それはよく観察しなければ気づかないであろう人と歯車やバネで動く機械のわずかな差。

 その差を感じ取れば、次に何が来るか大体の見当はつく。それがフェイントなのかどうかの駆け引きが無い防衛部隊のマシンドールは、その姿が人かどうかだけの違いで魔物と大して差は無かった。


「そうだ、俺たちは自分たちより強い魔物と戦うなんてザラにある」


「むしろ、だれも死なない分マシだぜ」


「ここで負けたら騎士の名折れだ!いくぞ!」


「「「うおー―――!!」」」


 テンションを上げながら、突撃していく騎士団たち。気圧されるように敵部隊がライフルを撃ちながら後退していくと、隙だらけと言わんばかりにPアサルトにハチの巣にされてしまう。


「隊長たちみたいに致命傷を与えることはできなくてもな」


「仲間のマシンドールのところに誘導させれば!」


 人同士の連係プレーで隙を作り出させ、マシンドールにそのわずかな隙を狙い撃たせる。人と機械、両方のコンビネーションがうまくかみ合い、質の差を埋めていった。




 まもなくエリア2への侵入を許されると報告が入る第1城壁。だが、そんな凶報に動じず粛々と作業を進めていた。


「本当によろしいのですか」


「構わん。続けろ」


「ですが、せめて自国民の避難だけでも……」


「そんなことをすれば、反乱分子共に作戦が筒抜けになるだろう!マリリン、やれ!」


「人使いの荒いこと」


 今の上司であるアンジェロに従ってマリリンは逆らった部下を従順になるように洗脳していく。うつろな目をした部下がカチカチとコンソールを操作していく。


「ふん。命令に従っていればこうならずに済んだものを。そうは思わないかね?」


「そうですわねぇ……」


「我々はただ従えばいいだけのこと。個人の意思など不要だ」


(それって機械とどう違うのかしら……)


 マリリンは南国で共にいたゼロツー、そこで協力することとなったレイを思い出す。最後の最後まで、諦めず他国を護ろうとした彼女たち。この後に起こるであろう惨劇について考えることをやめた今の帝国軍より彼女たちの方がよっぽど人間らしいと思えてしまう。


「愚かな侵略者どもよ、我がカーディナル帝国の威光にひれ伏すがいい!愚民どもの命を代償に創世の光を解き放て!!」


(この責任……とるのは命がけね)


 第1城壁のすぐそば、地面からせりあがった巨大な砲塔から赤い光が、数多くの悲鳴を拾い上げながら、侵略者のもとへと向かっていく。



「この耳鳴りは!? ナナ、レイ、リミッター解除!アーク、緊急下降!最悪地面にぶつかっても構わないわ、急いで!!」


「すでにやっていますよ!!」


 操舵していた騎士団員も2回目の体験となる耳鳴り現象にすぐさま対応をしていた。もし、スタンピードでナナがD4を使っていなければ、対処が遅れていたかもしれない。


「レイ、準備は!」


「セブン、いつでも行けるよ!」


「「ダブルブラスター!!」」


 ナナとレイのD4の光がらせん状に巻きながら、巨大な光にぶつかっていき、その軌道を上空へと変えていく。真っ向からの中和は難しくとも、干渉作用による軌道変更ならばそこまで難しくはない。D4の脅威から逃れることに成功したアークは土埃を巻き上げながら、すっぽりと穴の開いた壁へと向かっていく。


「エリア2到達。騎士団とマシンドールの帰投が済み次第、予定通りリバティーズのアジトで補給を受けます」


 アークのエリア2の到達は無事に行われた。だが、北・南の侵攻部隊は帝国軍の防衛部隊と同じ運命を辿り、壊滅的な被害を受けてまともな援軍は望めない状況になった。


(私たちだけでD4がある東門を抜けて、エリア1を制圧しないといけない。立て直す時間も欲しいけど……)


 D4によって抉られた地面を眺める。ここまで伸びてきた破壊の跡。その道中には昨日まで何も変わらない生活をしていた街や村も存在していたはずだ。それらが、何もわからないままただ消滅した。


「これを許すわけにはいかないわ。補給を受けた後、ただちに第1城壁を制圧。D4による被害を防ぎます」


 散っていた仲間たちの無念を乗せ、アークはD4によって完全に崩壊した第2城壁跡を後にする。これ以上の悲劇を産み出さないためにも。

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