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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第4章 機械人形と決着

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EPISODE73 決戦へ

 寒空の下、騎士団員たちが城壁から監視していた。冬となると魔獣たちもその多くは山にこもって冬眠している。だが、行商人とっては石炭や火の魔石を売る大チャンス。今日も多くの人たちが出入りしている中、不審者たちが彼らに紛れてくる可能性もある。それらを見つけたのが彼らの仕事だ。


「生物探知解除。ふう~、仕事とはいえ中級魔法を行使し続けるのは大変だぜ」


「お疲れ様。今度は俺が生物探知しておくから、腹をすかした魔獣が襲ってこないか見てくれ」


「了解。まだこっちのほうが楽だ。視力強化と望遠を使って……」


 手元にある望遠鏡まで使うと遠くにある山の麓までくっきりと見えるほどの解像度。辺りをくるりと見渡すが、魔獣らしき影はなく、街道も喧騒が起こっている様子はない。いつもの日常が繰り返されていた。


「こうも平和だと、夏の出来事が嘘のようですね」


「あまり思い出させるなよ。あの後騎士団をやめた連中もいたんだからな」


「すみません。でも、近寄ってくる魔獣なんて……ん?あれは!」


「どうしたゴブリンでも出たか?」


「いえ、帝国の戦艦が1隻……それにドラゴンが同行しています!」


「何言っているんだ。そんなわけ……」


 今は運よく出入りしている人はいない。生命探知の魔法に割いている魔力リソースを視力強化に回して確かめると、そこにはドラゴンと共に進軍してくる帝国軍の陸上艦。どちらか片方ならまだ対処できたかもしれないが、両方となると今のガタガタになった騎士団たちで押し戻せるのかと思ってしまう。


「だ、だだ団長にこのことを伝えましょう!」


「いや、待て!あのドラゴンに誰か乗っていないか!」


「ドラゴンライダーってやつですか!帝国にそんな奴がいたなんて聞いたことありませんよ。いったい誰が…………」


「どうした? なんでそこで黙る。何が見えた? 筋肉隆々の大男か、それとも美男子か」


「……ウチの女王陛下です」


「……望遠鏡寄こせ」


 頭を抱えている隣の騎士団員から望遠鏡を受け取ると、そこには大きく手を振ってドラゴンに乗っているアイリスの姿があった。


「何か言っているな。聴力強化して……」


【この人たち、敵じゃないから通してー-!!】


「……どうします?」


「どうするも何も通すしかないだろうよ!いったいどうなったら、ドラゴンライダーになるんだ!!」


「グリフォンに乗っていたこともありますし、おかしい性格の方が動物になつかれやす……そういえば、女王陛下ってタイラントの討伐に参加されたんですよね」


「ああ、だから帝国の戦艦と一緒にいるんだな。帰りが飛行艦じゃないのはよくわからんが、なっと……待てよ。あのドラゴン、どこかで見覚えが……」


「まさかタイラントなんてことは……」


「……それだ」


「何やっているんですか、ウチの女王様」


「俺に聞くな。元王様の気苦労の片りんを味わったばかりなんだ。こんなのが身内に居たら頭がおかしくなる」


「……団長に女王陛下が戻ってきたことを伝えてきます!!」


「おい、俺を一人にするな!」


 近づいてくるタイラントと地上艦。その威圧感は並大抵のものではない。敵ではないと言われても、己の精神力がガリガリと削られていく音が聞こえる。はやくこの悪夢から逃がしてほしいなと思いながら、彼はアイリスたちを出向かるのであった。




 アイリスたちを出迎えた大臣や騎士団たちはその豪華面子に言葉が出なかった。帝国でも最上位の地位にいるグラムやサイケに驚きはしたものの、一国の王を送迎するのだからこれくらいの格のある人材と共に送迎するのは理解の範疇であった。

 死んだはずのナナが蘇ったのも、機械の身体を持つ彼女なら修復もできるのだろうと理解できる。

 だが、討伐対象であるタイラントや帝国の人間が裏切って仲間になったと聞いたとき、数多の中が真っ白になり、追い打ちをかけるかのようにタイムスリップの話までしたのだから、事情を聴いている彼らの意思は空の遥か彼方まで飛んで行った。


「さすがは女王陛下。我々の想像をはるかに超えていらっしゃる」


「いや~、それほどでも」


(((ほめてねえからな!!)))


 照れているようなアイリスに対し、口に言わずとも心の中で一致している大臣たち。もはやコントにしか見えない閣僚会議に壁際で待機しているグラムとサイケは「この国大丈夫か」と心配し始める。閣僚の一人が壁際で待機している彼らに目を向ける。


「グラム、元最高幹部の其方から見て本当に帝国の狙いは世界の崩壊なのかね?」


「断言はできない。だが、機械化が急速に進みすぎているのは薄々とは思っていた。まるで人間を排除するかのペースだったからな。それが女王陛下の言うギースっていう機械が裏から操っているなら腑に落ちる」


「ではDr.サイケ、そなたから見て、D4という兵器が作られるにはどれくらいの時間がかかる」


「D4ミサイルを防がれた実績がある以上、同じ手は使わないだろうね。となると新兵器開発になるけどマシンドールを使った人海戦術を使ったとしても、僕無しだとプログラミングには時間がかか……ギースが直接音頭をとればいいだけか。う~ん、そうなると僕がセブンスセブンのGブラスターを修理にかかった期間と仕入れてくる資材の運搬ペースから見て数か月……春先、長く見積もっても夏には何かしらの新型D4兵器が出てくるだろうね」


「それらを防ぐ方法は……」


「完成するまでに帝国を制圧する。僕ら、騎士団はいつでも出撃する準備は整っていますよ。今からでも攻撃を仕掛けます?」


「いいえ、準備不足よ」


「その心は?」


「騎士団の人もナナもレイも信用しているわ。でも、それだけじゃあ帝国には勝てない。そのためには三か国同盟やその参加国も、リバティーズを含むレジスタンス組織、彼らと一緒に戦わないと」


「……試すようなことを言って申し訳ございませんでした。焦りで現実が見えていないのであれば指摘するつもりでしたが、その心配はご不要だったようで」


「ううん、私が間違っているなら指摘してくれる人がいるだけで幸せ者よ。というわけで私から皆様に提案があります」


 アイリスの言葉に固唾をのむ一同。彼女の眼は揺るがないほど硬く、未来を見据えている。


「攻撃を仕掛ける日程、そのタイミングや作戦……これらをまとめ上げるのにそれなりの時間は有します。そして、同盟国には帝国との戦いで疲弊し、冬を乗り切るので精いっぱいな国も少なからずあります。これらのことから、決戦は雪解けの春!新型D4兵器の完成間際になるこの時期に総攻撃を仕掛け、この長い戦いに終止符を打ちます!!」


 アイリスの演説を聞いた団長のエドウィンが同意を示すかのように拍手をおくり、それにつられるかのように周りの閣僚たちも拍手を送っていく。こうして各大臣の手腕の下、帝国との最後の戦いに向けて準備が進められていくこととなった。



 閣僚会議も終わり、久しぶりに離宮へと戻ってきたアイリスたち。襲撃された個所も全て元通りとなっているが、いまや一国の王となったアイリスが住むには貧相な内装ともいえる。彼女が言うにはここにしかない設備もあるからと言い訳をしているが、いったい誰が魔力炉や研究設備を王に相応しい設備と見るのだろうか。

 そして、アイリスは自身の研究室でサイケにとある設計図を手渡す。エーテルブースターを作っていた際に、この技術を他に転用できないかと考えていた強化案だ。


「というわけで外交の合間を縫って、帝国からうば……贈呈してもらった飛行艦を改造するわ」


「ふ~ん、装甲の強化はしているけど、魔法も使った強化案か。なるほどね、僕も手伝えたらなー、でも帝国の軍人だし……あっ、今は脱走兵か捕虜扱いだから手伝わせてもらえないんだろうなー」


「なに言っているの、サイケさん? 貴方にも手伝ってもらうわよ」


「やっぱり君、サイコー!でも、僕としてはこのマシンドール強化案の方も気になるけどね」


「それも同時並行でやるわよ」


「あれ? これで地獄のロードじゃない。開発期間って3か月もなくない?」


「船の飛行訓練もするから2月には終わらせるわよ」


「……待って。君、外交で居なくなること多い。この国の技術者はレベルが低い。僕のワンオペ確定。もしかして、僕を過労死で殺そうとしてない?」


「そんなこと考えてないわよ。人材と機材は何とかするから」


「下手な技術者はノーサンキューだけど」


「なめないでもらいたいわ。ここは私を育ててくれた国なのよ。船は騎士団の訓練場にあるから、改造よろしくね」


「ちょっ!? 揃うまでは僕一人でやれって言うのかい?」


 研究室にただ一人残されたサイケは、アイリスのことを想像を超えたヤベー奴だと認識し始めた。少々遅かったが……

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