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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第4章 機械人形と決着

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EPISODE72 港攻防戦

 エスト港でマシンドールの部隊を展開させている警備兵たちだが、彼らの表情はどこか不安げな様子だ。その不安を払しょくしたいのか、兵士の一人が司令官であるキオ隊長に話しかける。


「グラム監察官が我々を裏切ったというのは本当なのですか」


「さあな。上層部の権力争いに巻き込まれ敗北したという見方もできるが、真実は分からん。我々が聞いたのは開発中の兵器を奪い、テロ行為を画策しているということだけだ。軍人は命令に忠実に、職務を全うすればいい」


「それでこれだけの部隊を……それに新型マシンドールまで」


「デモンストレーションも兼ねているのだろう。民間人の避難は済ませているだろうな」


「はっ!地下シェルターへの誘導、近隣の街への避難、滞りなく終わりました」


「それでいい。マシンドールの登場で兵士の損傷は抑えられたのだから、後は民間人への被害をいかに減らすかだ」


「建物は後からでも直せますからね」


「うむ。そうだな。索敵班、状況は?」


「今のところ、レーダーに反応はな……いえ、反応あり。これは陸上タイプの大型戦艦です」


「来たか、マシンドール部隊発進せよ。避難を終えているとはいえ街の中に入れさせるな」


 飛び立っていくマシンドールの数々。その中にはナナと同じ顔をした少女の姿が見受けられていた。



 その様子はグラムたちにも捕捉され、ナナ、レイ、ゼロツー、1号機、2号機の5名のマシンドールとタイラントが彼女たちを迎え撃つ。そして、制御システムを入れ替えた量産型マシンドールが順次、艦の護衛に着き始める。


「私と同じGタイプのマシンドール! 実戦配備されたか」


「あれだけボクたちにバカスカやられていたら、Pタイプから切り替えるよね」


「同じタイプだからと言って、後れを取るな。我々に負けは許されない」


「なら、先輩として揉まないとね」


「そもそもメテオレインで一掃したらいいんじゃね。まだ撃てるだけの魔力は残っているぞ」


「その後を考えろ!あそこの街には民間人が住んでいるんだ。民間人を護る私たちが、彼らの生活を奪ってどうする」


「私たちが撃つべき相手は撃たれる覚悟ある者だけということを忘れずに」


「わかったよ。お人形遊びしといたら良いんだろう。めんどくせえな!」


 イライラをぶつけるかのようにタイラントが炎のブレスを吐き、マシンドールを溶かしていく。だが、Pタイプより全体的な性能が高いGタイプはその単調な攻撃をかわす者も多い。だが、その動きを予想していた2条の極太ビーム、GDブラスターとレイバスターに焼かれていく。


「言っとくけど、Gタイプの性能はボクたちが一番よくわかっているんだよね」


「ああ、タイラントが中央で暴れているおかげで組織的な動きがとりづらくなっているのも良い。さてと、チャージの間は近接戦闘に入るとするか。1号機、ついてこい」


「言われなくとも」


 1号機は脚部のミサイルポッドの代わりに追加されたブースターを吹かしていく。肩部にあったミサイルポッドも廃止され、試作型ビームサーベルの柄が代わりに設置されている。軽量化に伴う高機動性と格闘戦に特化された1号機に対応しきれずに、バッサリと斬られていくGタイプたち。

 ばらけていては各個撃破の的とでも考えたのか、身を寄り添おうとしたときに2号機から放たれた無数のミサイル群。こちらは1号機とは逆で脚部のミサイルポッドの数をさらに増やし、まるでスカートのようになっている。


「スカートフレアの威力、どうかしら?」


 火力にモノをいわせてレイとタイラントで集団戦を封じ、少数で纏まろうとすれば2号機が、散開すれば1号機とゼロツーが各個撃破していく。Gタイプが彼女たちを無視して戦艦を落とそうとするも、戦艦からぴったりと離れないPタイプの反撃にあい、落ちていく。

 そのざまをエスト港に設けられた指令室にも伝わっていく。


「最前線にいる4()()のマシンドールとドラゴン、見事な連係だな」


「ほめている場合ですか、隊長。どうします?」


「やむをえん。街の護衛のマシンドールも前面に出せ。ドラゴンたちの相手は最小限にし、戦艦の護衛についているマシンドールを落とせ。戦艦を背後にすれば、奴らも強力な攻撃を控えるはずだ」


「了解です」


 1機が無理して抜けてきた場合に備えて必要最小限のマシンドールだけ残し、市街地から飛び去っていくマシンドールたち。彼らが前線につき、有利を取ることができれば降伏勧告を行うことも可能であろうと隊長は考えていた。彼もまた同胞とは戦いたくないクチなのだ。


「それにしても奴らの進行速度が遅い。あれだけの火力があればもう少し前面に出せるはずだが」


「それだけ母艦から離れたくないのでしょう」


「そうではあるが……ん、今、何か光らなかったか?」


「気のせいでは? レーダーには何も映っておりません」


「……光学、いや、熱源データで映像をだせ」


「了解しました。映像出し……これは!?」


 モニターに映し出されるのはサーモグラフィー越しだが、1機のマシンドールが本陣を強襲する姿が映し出される。


「ステルス機か!」


「あの部隊に配備されていなかったはずですが……」


「詮索は後だ。前線に向かった部隊を呼び戻せ、挟み撃ちにする。光学カメラもあてにならんかもしれんな、熱源センサーによる探知に切り替えろ!」


 素早く指示を与えられ、リカバリーしようとする動きを見たナナは挟撃を防ぐため、さらに速度を上げるべく事前に許可をもらったリミッターを解除する。


「なんて速さだ、迎撃追いつきません。市街地に侵入!」


「街に住民の姿は無し。市街戦になることを考えての早い避難。指示の速さ。相手の指揮官は相当優秀とみました。ならば!」


 街への被害を減らすため、行く手を阻むマシンドールのみを撃墜し、まっすぐ相手の陣へと向かう。敵陣の後ろにある海上へ威嚇射撃を行い、高い水しぶきを上げさせる。

 周りのマシンドールがナナに照準を合わせているが、彼らが引き金を引くと同時に指令塔を落とすことが可能だ。互いに膠着状態に入ったところでナナは彼らに呼び掛ける。


「あなた方はすでに私の射程に入っています。血を流さないためにも、おとなしく投降をお願いします」


(ふん、何が反逆者だ。テロリストが無血開城を狙うわけなかろうに)


 キオは上層部の命令をバッサリと切り捨てる。命令自体が嘘であったのであれば、一人でも多くの敵を道連れにする案など使う考える余地すらない。


「よかろう。私も貴重な戦力を失いたくないのでな。民間人に一切の手を出さないのであれば、投降しする」


「隊長、良いのですか?」


「義の無い戦いでお前たちを死なせるわけにもいかんだろう。それに向こうの戦略にハマったこの状況なら申し開きもできる」


 マシンドールを帰投させていき、旗を降ろすことで交戦の意思が無いことを告げていく。かくしてエスト港攻防戦は人的被害なしの無血開城という幕を下ろすのであった。



「あのドラゴンは何をしているのだ?」


「というより、地上艦をおもちゃみたいに持ち上げていますよ」


 投降した兵士たちが反逆者たちの行動をのんびりと眺めている。名が通っているドラゴンとはいえ、たった1匹で戦艦を持ち運びできるとは思ってもいなかった。だが、重そうに運んでいるあたり長距離の運輸はできないはず。これからどうするのだと思っていたら、海が突如として割れる。


「暴君が珍しく頼んできたと思ったら、そなたらもおったのか」


「お久しぶりです。リヴァイアさん」


(我が海軍に被害をもたらしたドラゴンがあれほど気安く……知り合いなのでしょうか?)


(分からん。アイリス女王陛下が表舞台に立つまでの功績は不明。市井に出向いて遊び惚けていたというが、密かにマシンドールを開発していたのを隠すためのダミー情報だろう)


(あんなに可愛らしいのに……意外と腹黒なんですね)


(内乱のどさくさで実の兄を蹴り落とし、女王として即位。近隣諸国をまとめ上げた剛腕……恐ろしい女だ。あの龍とも何らかの取引があったのかもしれん)


 勝手な誇大妄想でこそこそと話し始める隊長と兵士たちを他所に、アイリスはリヴァイアに事情を説明していた。


「恩がある故、手助けするのはやぶさかではないが、わらわを船代わりにするのはこれっきりだと思え」


「さすがに何度もしてもらおうなんて思っていません」


「別に使いぱっしりにすればいいんだぜ。こんな風にな!」


 手に持っていた戦艦をぽいっと投げると、リヴァイアが慌てて戦艦に魔法をかける。すると、戦艦が風呂場に浮かべたおもちゃのようにぷかぷかと浮かび上がる。その様子を見たアイリスが興味深げにゴーグルを掛けて、リヴァイアがかけた魔法を分析し始める。


(浮力操作の魔法……水に触れた相手にしか通用しない中級魔法だけど、あの大きさと質量を浮かばせるのは普通の魔術師だと無理。逆に言えば海に浮いている船を無理やり沈めることもできそうだから……とんでもない魔法ね)


 海中にいるリヴァイアを倒さなければならないとなれば空を飛ぶことが大前提になり、その上で海中まで届く攻撃となると、打つ手はほとんどない。南国諸島での戦いのとき、リヴァイアが本気を出して戦っていたら、何もできずに負けていたかもしれないと考えてしまう。

 そう思っていると、当のリヴァイアは青筋を立ててタイラントと言い争っている。


「この脳筋バカが!」


「別に怒ることはねえじゃねえか!この性悪蛇女!」


「なにを!」


「やるか!」


「二人とも言い争いはやめて!!」


「……まあ、わらわの認めた人間の前で争うのはよそうか。巻き込まれて亡くなられても困る」


「だな。俺もここで暴れて、人間たちに住処を追い出されるのは面倒だ」


 我に返ったドラゴンたちが戦闘態勢をほどき、アイリスを背に乗せたタイラントが飛び上がり、リヴァイアが船を連れて出港していく。その一部始終を見ていたキオとその部下たちは何が何だかよくわからない様子で見送る羽目となった。


「ドラゴンが暴れなくてよかったですけど……一体何者なんです? あの女王様」


「私にもわからん」


「これ、どう上に報告するんです?」


「私に聞くな。幻覚であってほしいくらいだ。まず、我々がやるべきことは……避難した民間人に通達。すべての避難命令は解除されたと伝えろ」


 危機が去り、地下から続々と民間人が地上に戻っていく。想定よりも遥かに少ないもの戦闘で壊れた家屋の保証・修理と事後処理は残されている。この間にどう報告するかキオ隊長は頭を悩まされていた。

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