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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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EPISODE35 侵略

 封印の地でディアボロス討伐の余韻に浸っていた時、ナナにブリュンヒルデから通信が入る。アイリスにも聞こえるようにスピーカーをつける。


【セブンスセブン、大変よ】


「何かありましたか、ブリュンヒルデ」


【エリア1から空を飛ぶ戦艦が観測されたわ】


「航空戦力ですか。進路は?」


【そのまま真っすぐ進むなら、シャルトリューズ王国の王都にいくわね】


「確か、お兄様は帝国と手を組んでいるのよね」


「ええ、リバティーズの人がそう言っていました。最悪の場合、その戦艦に騎士団の人たちを乗せて他国の侵略も十分に考えられます」


「そんな……」


【二人とも!積んでいる武装も侵攻用とは限らないわ。空にいる魔物に丸腰ってわけにもいかないもの。和平条約の締結のためにお偉いさんを乗せている場合だってありうる。とりあえず、ハーピィたちには近づかないように話さないといけないから、一度島に戻るわよ】


「では、こちらは獣人の国に戻り、レイの発掘作業に移ります」


【了解。何かあったら連絡するわ】


 ナナたちの通信が終わったのを見計らって、魔王が話しかけてくる。


「行くのか?」


「はい。お兄様が何を考えているかは分かりません。だけど、最悪の場合を想定して動かないといけないと思います」


「そうか。ディアボロスの討伐の礼をせねばならんと思ったのだが。それは次の機会にさせてもらおう」


「ええ、その日が来ることを楽しみにします」


「うむ。では貴殿らを国境まで転移させよう。首都まで送りたいところだが、他国内に転移させるのはタブーなのでな」


「それだけでも結構です。行きましょう、ナナ」


「ええ!獣人の国に」


 アイリスたちの足元に魔法陣が描かれ、その姿を消す。いつかまた会う約束をしながら。




 アイリスたちがアイスヘルを出発して、数日が経過したある日、獣人の国の上空にでかでかと空を飛ぶ戦艦が現れた。あれはなんだと獣人たちが見上げていると、底部からPアサルトが降下していく。その銃口は獣人たちに向けられており、明らかに友好の使者でないことがわかる。


「ハイジョカイシ」「ハイジョカイシ」「ハイジョカイシ」


 Pアサルトたちの銃口から火を噴き、民間の獣人たちに攻撃を仕掛けてくる。近くにいた屈強そうな獣人が、近くの女・子供をかばい、撃たれる。阿鼻叫喚の地獄絵図となっているのを、王国から派遣された騎士団たちが眺めている。


「民間人に攻撃するだなんて聞いていませんよ、団長!」


「ウェイカー、帝国と手を組むってことは早かれ遅かれこういうことになるって分かるでしょ。僕もここまで早いとは思ってはいなかったけど」


「そんな……俺は民衆を守るために……」


「今、あそこにいるのは民衆じゃない。敵だ。皆も辛いと思うけど、ここで活躍しないと、造反の意思があるとみなされる」


「わかってますよ……でも…………」


「……総員、出撃」


 Pアサルトに遅れて騎士団たちが降下していく。飛行魔法を操れる彼らは、獣人が持つするどい爪や牙が届かない距離から一方的に攻撃し続けることができる。卑怯と罵られても、最も勝率の高い戦い方を取った彼らは、杖や剣に魔力をためていく。眼前には逃げまどう罪なき人々。否が応でもその瞳に映る。


「なんで、なんで、なんでこんなことに……なるんだよおおおおお!!」


 団員の誰かの慟哭と共に放たれた一撃を合図にしたかのように、一斉に攻撃が放たれる。抵抗する術を持たない命を刈り取る魔力光。それらが届く前に青白い半透明の光の壁がそれらを防ぐ。


「この障壁は……」


「彼女のだよね」


 騎士団たちが遠くから乱射してくるGライフルを避けるものの、後ろにいたPアサルトは突然の出来事に対応しきれずに爆散していた。そして、近づいてい来る赤い流星。


「マスターアイリス、間に合いませんでした」


「ううん。私がナナのリミッター解除を早く使っていれば。それよりも、今は虐殺を止めないと!」


「ええ!指揮官に一気に近づきます」


 アイリスがナナにギュッとしがみつき、ナナがPアサルトや騎士団の攻撃をかわしながら、団長であるエドウィンの下へと駆けていく。


「エドウィン団長!今すぐ、騎士団の人たちを下がらせてください。こんな戦い、間違っています」


「それはできない。僕らにも護るべきものがある」


「何が護るべきものですか!無辜の人たちを虐殺して、何を護れるというの!この惨状を見て、誇らしく凱旋することができるの!お兄様が帝国と手を組んで他国を侵略すると言うのなら、止めます!」


「見ないうちに随分と言うようになったねぇ。僕としては姫様の成長を見れてうれしいけど、残念ながら今回は見逃すわけにはいかないんだよね。舞い踊れ、我が剣!」


「話し合いによる解決は不可能と見ました。これより交戦します」


「……わかったわ。手はず通り、レオン陛下と合流しましょう」


「了解!」


「そう簡単には逃がさないよ」


 飛び交う無数の刃と騎士団員の光弾が背後からやってくる。だが、それらの誘導弾を圧倒的な速度での旋回による回避運動で距離を開け、撃ち落していく。騎士団がナナのリミッター解除を見たのはGブラスターの発射時に使用したときだけ。その恩恵である圧倒的な機動性については経験したこともなく、想像できぬほどのものであった。

 いや、これが大義のある戦いであれば、騎士団員の連携攻撃でカバーしていたかも知れないが、侵略行為に関して疑問を持つ者が多く、隙だらけの攻撃になってしまっているのも要因の一つかもしれない。


 全力で撤退していくナナをエドウィン団長が追いすがる。背後から迫り、さらに加速していく彼の刃。ジワリと迫ってくる中、彼が騎士団員の魔力弾にナナの意識を向けさせた隙に、回り込ませた刃がナナの前方からもやってくる。


「この挟み撃ち……背負っている姫様を守るのに必死になって、速度を落とさざるを得ないよね。それともまだ奥の手があるのかい?」


「さあ、どうでしょう?」


「私たちだけならそうかもしれないだけど、ここには――」


「獣王連弾!!」


 地上から雨のごとく放たれた獅子の弾が前方の刃を叩き落す。民間人を護るために、自国の者と戦う彼女たちを彼の王が見過ごすはずがない。


「獣王のお出ましとはね……賞金首を匿うような国だったかな?」


「否!!」


 レオンが大気を震わせるほどの大声で、はっきりと拒否の意思を見せる。


「彼女たちの嫌疑は既に晴れている。ゆえに、引き渡すようなことも、交渉の材料にするようなことも一切しない!」


「ここまではっきり言われたら、対応せざるを得ないよね」


「よかろう、獣王――」


「待ってください。私たちの国のことは私たちで解決します。だから――」


「だが……」


「ナナ、皆を守って!」


「わかりました。レオン陛下、マスターアイリスを頼みます」


「よかろう!我が敵は機械仕掛けのあやつらのみだ!!」


 レオンの言葉を聞いたナナが再度飛翔し、3本目の剣を抜いたエドウィンとぶつかり合う。二人の間で火花が散る中、背後から飛翔してくる小片の刃が襲い掛かる。


「この程度の攻撃なら、ディフェンシブモードではじく!」


 ナナの身体が真っ赤に染まっていき、小片の刃が縦横無尽に斬り裂いていくが、衣服や人工皮膚が切れるだけであり、外部装甲には一切傷つけられない。しかも、活性化したナノマシンによる修復作用により、傷ついた皮膚もすぐに戻る始末である。

 小片の攻撃を気にしなくなったナナは乱暴ではあるが、エドウィンを押し倒そうとする。


「まったく、君はどれだけの奥の手があるんだい。ソニックブースト!」


 エドウィンが魔法を唱えると、目にもとまらぬ速さで後退し、つばぜり合いしていたナナは一気にバランスを崩す。反撃に映されると思ったナナはすぐさま体勢を立て直したが、そのわずかな一瞬をついて飛び散っていた小片がエドウィンの周りに集まる。


「こちらも少し本気を出さないといけないね。我が剣よ、集束せよ」


「3本分の剣が1本に……?」


「今度は俺から行くよ。ソニックブースト!」


 加速する風に乗って、エドウィンがナナに急接近し、その剣を振りかざす。その攻撃を受け止めようとしたナナだが、見た目以上に重い一撃は彼女を地上にたたきつけるのに十分であった。


「くっ、なんという威力。ディフェンシブモードで無かったら、外部装甲も無事ではありませんでしたよ」


「ドラゴンですら意識を刈り取るこの一撃を耐えきれるとか。どんな身体しているわけ?」


「生まれつき、丈夫さだけが取り柄なので」


「なら、片腕くらい切り落とすつもりでいかないといけないよね」


 先ほどと同じく、ソニックブーストによる速度強化付きの剣戟を繰り出す。


「二度も同じ手には乗りませんよ。ディフェンシブモード、解除!Gブレード、出力上昇」


 ナナが防御に回していたエネルギーを攻撃に回していく。互いに激突した衝撃で近くのがれきが吹き飛ぶ。時間にすればほんの一瞬だが、当事者の二人には永遠とも思えるほど長いつばぜり合い。その最中、エドウィンの剣にパキッと欠けるような音が聞こえる。


「これ以上は無理か。でも、時間稼ぎはしたし、義理は果たせたかな」


 ソニックブーストで撤退していくエドウィンを見送ったナナは、いまだ民家に攻撃を加えようとするPアサルトたちを睨めつける。奇襲攻撃による混乱から立ち直りつつある獣人たちが、槍などを投擲して応戦しているようだが、統率がとれておらず苦戦している様子が伺える。


「マシンドールは人を傷つけるために作られたものではないというのに!」


 Pアサルトたちに急接近し、回避運動させる暇もなく切り捨てていく。Pアサルトをかばうかのように騎士団たちが援護攻撃を仕掛けてくるが、その勢いを止めるには不十分すぎた。


「あなたたちの敵はここにいる。撃っていいのは撃たれる覚悟のある者だけです!」


 抵抗する意思もない民間人に攻撃を仕掛けようとするPアサルトたちの注意を惹きつけようと、必死になって戦場を駆け巡る。空中で無双と言える活躍をするナナ、地上での獣人たちの抵抗、それらを排除するのが難しいと判断したのか、飛行艦から撤退の信号弾が打ち上げられる。



 撤退していく飛行艦を見送ったナナは地上を見下ろす。そこには、数多くの建物が崩れ落ち、火や煙が立ち昇り、親や子、または恋人の名前を叫ぶ者であふれかえっている。初めて訪れた時はまるで真逆の地獄絵図がそこにあった。


『貴様が勝ったとしても、人は再び敵を作り出す』


『終わらんよ、争いは!』


 かつての自分が否定したギースの言葉がリフレインする。この惨劇を見て、また同じことが言えるのだろうかと自問自答する。


「敵が現れたのであれば、また戦います。でも……いつまで…………戦えばいいのですか…………」


 書き消えるような一言をつぶやいたナナは、生まれた疑念を振り払うかのように地上で懸命の救出作業の応援に当たるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私は民間人の死を見るのは嫌いですが、それでも、私はそれを期待すべきだと思います。 これがどれほど邪悪であるかを示すために、実際の生活と同じように現実的な方法で行われることを願っています。 …
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