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落ち着く場所

 

 俺が先に風呂から上がったのは母さんに、エロ親父と一緒に入った事を知られたくなかった。いや、厳密にに言えば入られたんだけど ……。

 とにかく母さんには知られたくなかった。だって毎日顔合わせるんだよ? 凄く気まずいんだ。


「あら、光輝。髪濡れてちゃんと拭かなかったの?」

「あっゴメン今タオル持って行くよ、、、あっ ……」


 洗面所に戻ろうとして振り向いたら、ペタペタと素足で床を歩く親父と目が合った。

 全く隠してねぇ! 親父は水も滴る幼女の身体をさらしてた。


「んっどうした光輝?」

「身体を拭けよ親父!」


 バサッ


 俺はタオルを親父に投げつけた。


「親孝行な娘だ、感心した」


 チッ別にそう言う意味じゃねぇよ。

 俺の気持ちを知らぬ親父は、濡れた髪をタオルで拭いていた。


「光輝髪ちゃんと拭いた、アラ、あなた?」

「よっ! おまえっ光輝の身体本当に女の子になったんだな」


 なに普通に母さんと会話してんだよ親父。終わった。


「あなたどう言うこと?」


 怖い顔した母さんが包丁を持って親父に聞いた。


「んっなに?」

「髪洗ったの?」

「んっ洗ったよ。光輝と一緒にお風呂に入ったついでにな」

 

 ちょっと親父正直に言うなよ! まあ、素っ裸だから言い逃れは出来ないけどな。


「 ……あなた入っちゃったの?」


 なにが? 母さん変な誤解を生む事言わないでっ!


「入れてないっ!」


 ちょっと親父もまた、誤解を生む否定の言い方! そこは入ってないだろ?


「いやぁたまには可愛い息子と親子水入らずに入浴したくてな?」

「 …………娘になってからでしょっあなたって人はぁ!?」


 そりゃそうだ。下心見え見えだった親父が悪い。


「ごめんなちゃい …………」


 あっ幼児退行? 親父は指をもじもじさせて、母さんに上目遣いで言った。いやぁあざとい。親父は幼女の特権を使って特殊能力対策課課長にのし上がったのかなぁ?


「あなたそう言うところよ …………」


 そうだそうだ!


「あっ痛いっイタイイタイッママッお耳引っ張らないで!」

「いけませんっ今夜は朝まで説教させて頂きますからね!」


 母さんさんは親父の耳を引っ張って寝室へ消えて行った。


「仕方ない。夕飯はカップ麺で我慢するか ……」


  ◇ ◇ ◇


 女子高生デビュー二日目。校門をくぐって下駄箱の前に行くと上履き靴がない。

 チッ犯人はアイツか!


「あらぁお探し?」


 俺の靴を持って下品な笑みを浮かべる新咲何某(なにがし)。下の名前はもう興味ないから忘れた。


「おいっ上履き返せよっ!」

「ふっまだ貴方(・・)いや、貴女(・・)ご自分の立場をお分かりではないですわね?」


 新咲は俺の上履きをポイっと捨てた。こんのっ性悪女!


「なにが? 立場が危うくなったのは昨日失禁した、あーなんだっけ? 新咲(しんざき)さんでしたっけ?」

「キイッ新咲(しんさき)よっクソむかつく小娘がっ! マツザキにジョウシマッやっておしまい!」


 薄笑いを浮かべた輩二人が柱から現れた。


「ヘッヘいいんですか? ヤッちゃって?」

「やっぱり僕は年下の()に限る」


 こんがり日焼けしたマツザキと、梅干し食べた顔みたいな目と口を細めた顔のジョウシマが、腕まくりして俺に迫った。

 

 ガンッ!


「痛っ!!」


 俺はマツザキに肩を押され背中を壁に打ち付けた。ぐっ頻繁に通り過ぎる生徒達は見て見ぬふりだ。

 あんまりだなぁ誰か助けてくれよ!


「ちょっと光輝さんですかっ?」


 んっ背後から明るい声で男子生徒が話かけてきた。

 あーそれどころじゃないんだけど ……。


「おいっちょっと黙れやっ!」


 ジョウシマが振り向くと男子生徒いや、女子生徒までワラワラと集まって来た。


「おっおいっ寄ってくんなっワッ!」


 生徒達は輩二人を押しのけ俺を囲んだ。最初はちょっとびびったけど、皆笑顔だったのでちょっと安心した。


「女体化した光輝さんですよね?」


 女子の一人が聞いてきたのでうなずくと、皆一同歓声が上がった。


「あたし光輝さんのファンになりましたっ!」


「俺も一目惚れしました」


「頑張って下さい!」


 皆励ましの声で俺は思わず涙が出てたよ。


「ぐすっありがと皆んな ……」


 今回助けてくれたのは王子様ではなく、身近にいる生徒達だった。とにかく感謝だよ。


「ちょっと待ちなさいっ!」


 和やかな雰囲気をぶち壊す金切り声。声の主は嫉妬心むき出しの般若の形相の誰だっけ? あ、新咲だ。


「学園のマドンナであるこの私、新咲麗奈がいるのに皆様方は注目したらどうなのっ!?」


「自分でアピールするなよ」

「キイッなんですってこのアマ殺す!」


 あっ新咲さん生徒の前で言っちゃった。しーらないっ!


「………… 」


 冷めたようにジト目で新咲を見つめる生徒達。今における立場の悪さに気付いた新咲は後ずさりする。


「なっなによ、私が悪いって言うの?」

「新咲さんがそんな人だとは知りませんでした。はっきり言って幻滅です」

「そうだ! そうだ!」


 生徒の一人が言うと皆同調するように、皆ウンウンとうなずいた。


「なっなによなによっどこがいいのよこのブスが?」

「ブスは貴女ですよ新咲さん?」


 俺のファンの一人の女子生徒が言った。


「見た目は綺麗かも知れません。だけど、新咲さん貴女の心はとてつもなくブスだと思います」


 生徒は皆一緒に新咲さんを批判し始めた。


「チッ、お前達っ行くわよっ!」


 部が悪くなった新咲は輩を引き連れ退散した。馬鹿め、自業自得でしょ?

 俺は改めて助けてくれた生徒達に御礼を言おうと思う。


「助けてくれてありがとうね皆んな!」


 気恥ずかしいけど、満面の笑顔で言った。


「じゃあさぁ」


 んっじゃあ? なに? その見返りを期待する返事は?


 嫌な予感がする。


「助けたお礼に僕と付き合ってよ」


 出たよ便乗する見返りの要求。


「あっずるい――いっ! ねぇねぇ光輝ちゃん部活入ってる? 良かったら演劇部活に来ない? 今から主演を」


「ちょっと待てよ! それなら俺もっ!」


 生徒達は俺を巡ってもめ始めた。

 

 予想だにしない展開と言うかモテぶりで俺は戸惑っている。女体化して三日後でこれだけの反応があると、もっと人気が出たらどうなるんだろう?

 コレは別にうぬぼれじゃないんだ。自分の容姿を見たら分かる。アイドル並みの人気になるわコリャ ……。


 俺はそっと床に散らばった上履きを履いて後退りした。


「あっ!」


 一人が逃げる俺に気付いて指差して叫んだ。


「ごめんなさいっ!」


 何故か追いかけて来る生徒達から逃げるように俺は、そそくさと小走りに廊下を走った。

 まだ始業時間には余裕があるからとある避難場所を目指した。


 そこは一階の右奥にある部室。俺は部室の引き戸に手をかけた。


 ガラガラガラッ ピシャ!


 急いで内鍵をかけて一息ついた。


 ドンドン! ガチャガチャガチャッ ドンドンドン!


 追って来た生徒達がゾンビみたいに入り口の前で張り付いて扉を叩く。ちょっと怖っ!!

 しばらくして先生にでも注意されたのか静かになった。


 ふうっなんとかなったかな?


 俺は深呼吸してから目を開けると部室に一人の生徒が不思議そうに俺を見ていた。あれっいたの? でも部員じゃないな?


 俺は彼女の顔を知っていた。


 クラスメイトで隣の席の村越 凛花(むらこしりんか)だ。黒髪ボブカットに眼鏡をかけた無口な少女。この際だから、良く顔を観察すると中々の肌が白い美少女だ。

 俺には振り向いてくれなかったから気づかなかったんだ。


「アレ? 部室間違えたかな?」


 俺は部室をきょろきょろと見回した。部室には盆栽やら年季の入ったサボテンが並べられていた。


 間違いない。ここは俺が所属する部室だ。


「あ、え〜と、君は?」


 凛花は知ってるけど、ここの部員ではない。


「………… 」


 なんで黙ってるの? ちょっと喋ってくれなくちゃ困るなぁ。


「盆栽部に入部しました」


 と言葉少なげに言って凛花は頭を下げた。


 へぇっ今時地味な盆栽部に少女が入部するとは珍しい。でもさ、


「そっか、あのさ、分かってると思うけど、俺ここの部員だからさ、お茶入れるからゆっくりしてよ、ねっ!」


 俺は彼女を安心させるために慣れないウインクしてお茶を入れた。ああ、赤王子みたいに上手く出来ないなぁ。


 コクコクとうなずく凛花さん。うんっ可愛いね!


「あはは、盆栽部って周りからジジくさいとか地味って言われるけどさ、のんびりしていて俺は落ち着くんだ」


「………… 」


 相変わらず凛花は無口だけど、窓から差し込む光に照らされた顔は優しく微笑んでいた。


今回はちょっと青春っぽく書いてみた。察しの通りヒロイン候補は二人です。新咲は除く。新咲に関しては読者様の期待通りの活躍します。( 悪い意味で )


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