初めてのお風呂その一
「ねぇ君、春に行われるクイーン杯に出場してみないか?」
俺を助けてくれた5王子の一人、白王子から誘いを受けた。
「別にクイーンの特権なんて興味ないし ……あのっ助けてくれたのは感謝しているけどごめんなさい」
俺は感謝と誘いを断った罪悪感を感じながら頭を下げた。だってクイーン杯って美人コンテストの一種だろ? 面倒くさいし男に媚び売るのはゴメンだぜ。
「首を上げて」
考えごとしていたら白王子が側に寄ってた。
「は、はいっ ……?」
少女漫画でよくある展開だと気付いた俺は、一歩引いてから警戒しながら頭を上げた。
案の定白王子は手を伸ばしていた。
「オーソーリーゴメンね」
「あはは、ですよねぇ ……」
意味は一緒だ! このトンチキ!
「ねぇねぇ君本当に可愛いねぇ電話番号とアドレス教えてくんない?」
うわっ赤王子がコッチ来た! 普通にナンパじゃん!
「嫌ですっ!」
「おっ!?」
俺はうやむやにして誤魔化すと、後から変な誤解を招く恐れがあるからキッパリと断ってソッポ向いた。
いやぁ、はずかしいっこれじゃラブコメのヒロインみたいなリアクションじゃないか ……。
「いいねぇ合格!」
「へっ!?」
「君がねぇ俺に媚びて「はいっ喜んで」と了承したら幻滅してたよ、だから合格だ!」
「 ………… 」
勝手に合格決めんな!
「君はキュートだ」
赤王子は右手を銃の形にして、俺に向かってバァンとハートを狙い撃ちしてウインクした。
あーベタだなぁ ……でも、女子はこれでイチコロなんだろ?
「ところで後の2王子の姿が見えないんだけど?」
「んっ興味あるの君?」
ねえよ! 俺はホモじゃねぇ!
ちょっとウザい白王子が食いついてきた。ただ聞いただけだよ。好奇心以外の思いはない。
「青王子と黄王子はクイーン様の警護さ」
「へー黄王子ってのもいるんだ。どんな王子?」
「めっちゃ明るい」
「 ………… 」
でしょうね。
「この不届き者の処理は僕達がするから君は帰って良いよ」
「あっ本当にありがとうございました」
「うんうん また会おうねっ!」
白王子はニッコリ笑って手を振って見送ってくれた。うーん 案外悪い人じゃないみたいだな。
あっだからって俺は少女漫画の主人公みたいに王子様と恋に落ちる展開はない。絶対ない!
だって心は男だし、ホモじゃないから男には一切ときめかない。
校舎を出ると外は真っ暗だった。
こんな夜道に変質者にでも出会ったら女の体では抵抗出来ないと思った。だから俺は急ぎ足で自宅に向かった。
「はあふうっ」
ちょっと走っただけで息切れする。男の時と比べて筋力が落ちてる証拠だ。
心の中では強がった男なんだけど、この華奢な体に自分は改めてか弱い存在になったんだと実感した。
自宅が見えてきた。俺の住む家は都内の閑静な住宅街の土地付き一戸建ての新築だ。こんな良い家に住めるのも親父のおかげなんだ。
考えてみればスゲェよなあんなちびっ子が家買っちゃうんだからさぁ。
「ただいま――」
「あら、お帰りなさい」
いつも通りに母さんが出むかえてくれた。
「親父は?」
「今夜も遅くなるみたい」
「そっか、相変わらず親父は多忙だな。疲れて体壊さなければいいんだけど?」
「 ………… その点心配ないわっだってパパ不老不死だから、ちょっとそっとでは死なない。死ねない体かしらね?」
母さんはニコニコしながら結構怖いこと言った。
「母さん怖っわ!」
◇ ◇ ◇
「ご飯の前にお風呂入りなさい」
「えっ ………… 」
「女の子になってからまだ一度もお風呂に入ってないんでしょう?」
「そうだけど ……それって」
急に言われて俺はハッとした。
TS物の初めの一大イベントと言えばお風呂だ。色々あったんで、すっかりお風呂のことを忘れていたんだ。
ちょっと待って! 一体どうやって女の子の体綺麗にするんだ?
そもそも男だった俺が、女の子の裸見て許されるのか?
いやいや、漫画みたいに他人の体と入れ替わってその裸を見るのとは違う。
コレは俺の体が女体化したものだから、誰がなんと言おうがこの女の子の体は俺のモノだ!
脱衣所に入った俺は制服を脱ぎ下着姿になった。
「 ………… 」
変な気持ちになって鏡の前に立った。前を見ると下着姿の女の子の姿が映っていた。
ドキッ
うろたえるなっコレは俺だ。なにもやましいことはないのだからな …………だけど、そっと右手が胸に触れる。
ムニュッ
「んっ!?」
なんとも言えない柔らかな感触と刺激が俺の体を走った。コレはいけないと思い。直ぐに手を離した。
「はぁはぁ …………こんな刺激的な体で生活している女の子って凄い。男で童貞だった俺はドキドキだよ ……」
俺は洗面台に手をついて気分を落ち着かせた。
「入るしかないんだな ………… 」
意を決っした俺は下着を外した。
前を見すえて裸を見ないで風呂場に入った。
まずは胸に目が入った。下着屋で店員さんが92とか言ってたな、結構胸あるな。
で、アソコは何度かトイレに入ったから見てはいたけどこう、全裸になってマジマジと見るのはまた違う。
改めて見ると、男の時に見慣れた竿がないのがかなりのショックだよ。
代わりに女の花園なんだけど、触れるのが何故かためらう。いや、自分の体の一部だろ? んっなんとも言えない罪悪感がある?
ああ、俺って童貞だったんだなぁ、ヤリチンだったら躊躇なく触ってたんだろうなぁと思った。
「くしゅんっ!」
ううっ寒い。季節は12月。早く湯船に浸かろう。
バシャバシャ
とりあえず今日は体の汚れはかけ湯で落としてとにかく入ろう。
ザバァ――――ッ
「ふい――――気持ちいい。あ――生き返るなぁ」
湯船に浸かってふと今日の一日を振り返った。女子高生デビュー緊張した。新咲と輩達に屋上でレイプされそうになって王子様に助けられて本当に助かった。
新咲は懲りたみたいだけど、また嫌がらせしてくるかも知れないなぁ ……ああ、ユウツだよ。
「本当女の嫉妬って怖い ……ブクブク ……」
本当嫌になって顔を湯船に沈ませた。
「ぷはっ! ふいぃぃ〜あちゃー髪の毛がベタベタだよぉ」
ツインテのまま入ったからツインテールが濡れた。そう言や、温泉に入る女の人って髪が濡れないように、まとめて結んでたよな?
どうやって結ぶんだ? 男だった俺は女の子の当たり前の常識も全く知らないんだな ……どうしよう?
母さんに教えてもらうのもなんだし、うーん いとこのえみるに教えてもらうのも気が引けるし、コレは困ったぞ。
俺が首をひねって悩んでいると、
ガチャッ
「光輝入るぞ」
真面目な声で全裸の親父が入って来た。
思わず凝視した俺は嫌が応にも、親父の幼女な裸を見てしまった。
「えっ!?」
その胸は絶望的にも断崖絶壁だった。
ちょっとは隠せよ親父。
気まずくなった俺は目をそらした。




