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力を使うとお腹を空かす桜狐の姫は今日も僕に懐いてくれない~追放された底辺調伏師の僕はヒーローを夢見る~  作者: 滝藤秀一
第2章ー3 僕の幼馴染は答えを見つける

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第14話 僕の幼馴染と神様はハグをする

 さあてどうしようか?


『応援させてもらうよ。だから、もう少し力を貸すねっ!』


 心に話しかけてくるこの声は――

 あっ、タケミカヅチちゃん。契約した時以来じゃない。


『うんうん、この前君が悩んでたの思わず笑ったよ』


 あれ、あなたか!


 彼女とはもう出逢って3年になるが、神契約の時語り掛けてくれただけで、意思疎通出来ていたのは神降ろししている時のみ。


 神霊だし、普段どうやってコミュニケーション取っていいのかわからず、力を借りる時だけ念じていただけなので少し申し訳なく思っていたけど。


『随分と馴染んできたし、君のことがもっと気に入った。じゃあ行くよ』


 あたし、主として失格かもね。

 一方通行過ぎた。


『そんなこともないよ。大抵の調伏師はこの域まで到達しないから』


 体に集まる雷の量が増幅する。

 周りの土がめくれ、セットした髪まで静電気を帯びた。

 気を抜くとあたしの方が感電してしまうような電流量――


 あたしは単体攻撃が苦手だ。

 今まではそれを強化する必要もなかった。

 任務で特別困ることもなかったし、チームに迷惑をかけた事もないように思う。

 でも――


 今はあたしがこのチームで一番足を引っ張ってる。

 そこは認めて、これから挽回しよう。

 2人の力になろう。

 大好きな颯太と小生意気なほたると一緒に成長したい。

 傍に居たいから!


 さらに電流量が増す。

 タケミカヅチちゃん、ナイス!

 さてと……


 単体攻撃と言えるものは雷帝の弓くらいしかない。

 この状態でそれをやれば倒せるかもしれない。

 だけど、それじゃあ根本的には今までと変わらない。


 新しい何かをほたるに見せつけたい!

 これは意地かな?


 単体の訓練もサボってきたし、颯太ほどの集中力もない。

 なら――


 得意な人、颯太と同じようにイメージすればいい。

 ずっと見てきた。

 この目に焼き付けてきた。

 何百、何千もの失敗も、成功しだした数回も。


 見よう見まねでやろうとしたことはある。

 でも、あれは颯太が汗と涙と努力で伸ばしてきた才能。

 それをコピーするような真似はプライドが邪魔をしていた。


 あたしはバカだ。

 確かに常に全力じゃなかった。

 やったら颯太に差を見せつけることになる。

 どんなに傷つけてしまうか想像すると出来なかった。


 でも違うよね。颯太は絶望なんてしない。

 あたしのそれを見て、もっと頑張って凄い技を生み出そうとする。



 颯太はそういう人だ。



 体全体から漏れ出ている雷を右手の一か所に集中してみる。

 あいつがどんな感覚でやっているかわからない。

 あたしは右手という容器に電流を貯蔵するようなイメージで――


 バチバチバチ。


 風船を膨らませたくらいの電流が集まってくる。

 いけるっ!

 ほたるの力を使っているときのあいつもこんな感じだった。


「……」


 任せてくれるのだろう。ほたるは後ろへと下がった。


「サンダーボルト!」


 雷の塊が大きなゴーレムに向かって行く。

 土の壁で防御しようとしたようだが、それを貫いた後、体の真ん中に大きな穴をあけた。


 そこから電流を帯びること1秒、ゆっくりと崩れ落ち、体は粒子と変化し上空へと舞う。


「やればできるの」


 サンダーボルトで抉られた地面を観察しながらほたるは隣にやってくる。


 制御が難しいな。

 狙いを少しでも外していたら、カウンターをくらっていたところだ。

 それに電流を集める右手を防御しないと火傷してしまう。


 ……んっ?

 なんか、今のより凄い技が一瞬頭をよぎった。

 ああ、でも具現化できない。


 その辺がまだまだか。

 下手くそなあたしは数をこなしていくしかない。


「少し本気になればこんなもんよ」

「……そうたがあなたを追放しない理由が少しだけ見えた気がする」


 生意気に言うほたるの瞳は桜色に変化し、髪も半分くらい同じ色に。


「ほたる、それ?」

「主があなたに触発されて力を使ってる」


 これが生身の神様の力か。

 予想していたよりも、はるかに上を行っている。

 なるほど。これならあの特別な怪異を倒したのも頷ける。



 颯太の方もすぐに怪異を調伏したようだ。

 ほたるの体からピンク色の煙が上がる。


「……認めてあげるの、あなたのこと」

「偉そうなんだから。あたしのことお姉ちゃんって呼んでもいいのよ」

「ちっ……」


 こちらの様子を伺いながら少しずつ距離を詰めてくる。


「わたしの名前はほたる。よろしくなの、みゆ」


 口元を緩めたところ初めて見た気がするな。

 うわー、ロリっ子狐可愛いじゃない。


 差し出された手を握りしめ、


「あたしはみゆう(・・・)よ! よろしくね、ほたる。淋しいんでしょ? あなたが信じてくれるなら、あたしはあなたを守ってあげる。相談にも乗ってあげる。お願いも聞いてあげる。颯太に言えないことも出てくるかもしれない。そんなときはあたしが全力でサポートしてあげるからさ」


 これは本音だ。

 この小さな神様を守ってあげたいと思っている。

 だって、あたしもほたるをもう認めてる。


 そして……

 感謝してる。生意気だけど、ほんとうにいい子だ。

 

 颯太は譲らないけど。


「ちょっと釘を刺しておきたいことがあるんだけどさ――」

「……」


 掛け声はなかったが、「えいっ」というふうにギュッと腰に手を回し抱き着いてきていた。

 なんという不意打ち。


「……」


「なによ、お姉ちゃんにそんなに甘えたいの?」

「……あなた、いい匂いがするの。これはお姉ちゃんと同じ匂い。理不尽に怒ってしまったの……ごめんなさいなの」

「もう謝らなくていいわよ。あたしも悪いところがあったし。素直じゃないところは似たもの同士だわ」


 さらさらの銀髪に触れる。

 ほたるは胸に顔をうずめたまますすり泣いているようにも見えた。

 なんで右耳ないんだろ? 颯太は理由知ってるのかな?


 弱弱しく寝ている左耳に触れる。


 ぴくっと反応したが、怒られることはなかった。

 気持ちいいのかもしれない。尻尾が左右に揺れている。


 色々背負う物があってこの場にいるんだろう。


 見た目小学生くらいだけど、実年齢何歳なんだろう?

 そんなことを考えられる余裕も出てきていた。

 随分と追い込まれていたな。追い込ませてくれたといってもいいか。

 でも――


「ありがとね」


 その言葉への反応なのか、お姉ちゃん恋しさなのかぎゅっの力がちょっと増した。



 颯太が傍に来たので、この状況を見せつけてやる。


「耳に触ってる……僕も触れたことまだないのに!」


 1人っ子だからな、あたし。

 こんな可愛い妹が欲しかったのよね。


 ……

 …………

 しょうがないなぁ。


 いつでも甘えられるお姉ちゃんになってあげるわよ!

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