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力を使うとお腹を空かす桜狐の姫は今日も僕に懐いてくれない~追放された底辺調伏師の僕はヒーローを夢見る~  作者: 滝藤秀一
第2章-2 僕の幼馴染は本気を出してない

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第8話 僕と神様の戦い

 美優が使うシャワーの音が微かに聞こえるリビング。


 ソファの隣に腰掛けたほたるからお姉さんが赤色を好きなことを聞かされた。

 だから、さっきは拒絶してしまったんだということか。


 少し俯いているところを見ると、反省しているようだ。


「そうた……どうしたらいい?」

「悪いと思ったら謝ることかな。それで大抵のことはチャラに出来る。過ちを認めることは恥ずかしいことじゃないよ。僕なんて謝ってばっかりだからさ」

「……」

「美優ならわかってくれるよ」

「……わかったの……機会を見て」


 スマホの怪異アプリが自動で起動する。

 メッセージのようだった。


『100メートル先の公園に結界を張ったよ。敵がそっちに向かってる。どうする?』


 誰だ? この送り主は……


『ちゃんと証明してくれてありがとう。手助けが必要? イエス・ノー』


 それをみてピンときた。

 ほたるが暴走してた時味方をしてくれた人だ。


 僕の神様は小首を傾げる。


「たぶん味方だよ。助けてもらったんだ」


 ほたるに説明しつつ、メッセージを打つ。


『情報に感謝。NO……自分たちで何とかしてみます』


 ピッ! とすぐにメッセが書き込まれた。


『OK。なら見守らせてもらうね』



 ★☆☆☆★



 僕とほたるはまだお風呂に入っていた美優を残し、近所の公園へやってきた。


 数年前までブランコや滑り台があったが、古くなり危険ということで撤去された。

 今はベンチが二つに雑草が生い茂っている広場のようなところだ。

 結界によって、この場で戦っても周囲を破壊することはないだろう。


 敵か……


「終わったら、またお風呂に入りたいの」


 僕の緊張を和らげるためか、ほたるがぼそっと呟く。

 怪異の反応はこの付近にはない。ということはそれ以外の何か――


 肌に当たる風がやけに冷たく感じる。

 公園の周りには花が囲んでいたが、それらは冷気によって花びらを凍らされたようだ。


 一瞬粉雪が目の前を覆い、それが晴れるとすでに敵は見えていた。


 姿は人間のようだったけど、魂がなく何かに操られているような印象を受ける者が二体ゆっくりと園内に入っている。


「……ぅ!」


 よく聞き取れない呻き声で、僕たちを見た。

 吐く息は真っ白で目に生気はまるでない。

 こんな敵を海外の映画で見た記憶がある。


「あれって人間? ……怪異じゃないよね?」

「模造ヒューマン、悪魔の使いともいう。悪人の神が作れる配下」


 そんなのありかよ!


「結構強そうだな……」

「奴らは神経を麻痺させている。倒す以外止める方法はない」


 大きく息を吐いて、神降ろしして両手両足を桜火で覆う。

 たんっと軽く地面を蹴り、敵さんの方から距離を詰めてくる。

 ほたるの前へと出て、手を氷で固められた剣を紙一重で同時に避けた。


「桜火の一花」


 ほたるが花びらの形をした炎で片方を吹き飛ばす。


「桜火の一振り」


 僕も炎に覆われた左拳をもう片方に振りぬく。

 数十メートル飛ばした相手を見る。

 氷剣を使った……こいつらやっぱり元リーダー御堂の差し金か。


 むくりと二体は何事もなかったように起き上がって見せる。

 周囲の風がまた冷たくなった。


「やりにくいな。ダメージがあるのかないのかわかりにくい」

「模造ヒューマンに感覚はない。あなたの回避能力なら攻撃を避けて時間を稼ぐことは可能。その間に応援が来るのを待つ。今のわたしたちの攻撃能力では2体を倒すのは難しい。それでも倒すならあれをやるしかない。選んで。そうたに従う」

「じゃあ、あれをやろう」

「……博打好きでしょ」


 ほたるはコクリと頷く。



 まだ実践で使ったことはない。

 おっかないし、持続できる時間はわずかだし、シンクロエナジーを凄い消費してしまうからな。

 でも――

 この戦闘を近くで見てるあの人はピンチになれば来てくれるはず。


 試すなら今でしょ!


「はああぁ」


 ほたると同時に声を出す。まだ慣れていないから気合を入れるってことで訓練中もつい声を出してやっていたことがある。

 ほたるから僕に燃えるような力が流れ込んでくる。

 赤を桜色に変えるイメージで。お腹の辺りから全身に分散させる感じだ。


 ほたるが暴走したあの力を自分たちの物に、制御した形が――


「桜火開花」


 鏡で確認したらなぜかこれ瞳の色がピンクに変化していた。

 ほたるの髪は半分桜色になっている。


 模造ヒューマンと言われる2体は氷の盾を左手に作り、距離を詰めてきた。


 そんな盾役には立たない。

 僕は左拳を握りしめ、そこに纏っていた炎を集中させると、


「桜火乱射!」


 二体に向かって、何百もの炎を一斉射撃する。

 氷の盾は砕け、2体が宙に舞う中、


「桜火刀剣・円斬」


 ほたるは右手に集めた炎を剣の形にして放った。

 空気をも切り裂くような音を立てたそれはあっさりと2体を一刀両断したのだった。


 その瞬間に僕たちは同時に開花モードを解除する。

 しゅうっと体からピンクの煙を上がり、足元がぐらつく。


「大丈夫?」

「そっちこそなの……」

「実戦での使用は思ったよりもずっと消耗しちゃうな。もっとうまく制御できるようになるよ」

「感心するの。まさか、これを制御できて使いこなせるとは思ってなかったから」


 膝に手をついてお互い呼吸を整え、少し達成感に浸った。


 その時だ。

 先ほどよりも強い冷気を体が感じ、ぶるっと震えたのは――


「よお、落ちこぼれにダメ神さま」


 御堂進が追跡していた調伏師だろう1人を引きずりながら僕たちの前に現れた。


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