第7話 僕の幼馴染と神様はお風呂で何を思う?
ぴちゃん。
天井を見ると少し水滴が溜まって湯船に落ちていた。
少し冷たくしたシャワーを頭から浴びていく。
「ふぅ」
気持ちよくてため息が出てしまう。
「ひゃ」
耳にモロに当たってしまった。寝かしておかないとダメなの。
そうたとの生活で思うことはあるけど、お風呂は最高なの。
以前はお湯につかったことなどなかったのに、肩までつかることが極楽と知ってしまってからは、そうしないわけには行かない。
目を開けて、頭から綺麗に泡立てていく。
尻尾は自分で触れてもくすぐったいので、ごしごしはしない。
あの女のことが脳裏に浮かんで、ゴシゴシする力が強かった。
いつもよりも全身が泡まみれになってしまう。
赤はお姉ちゃんが大好きな色だ。
お姉ちゃんの色なんだ!
なのにあの女は……
「いけ好かないの!」
シャンプーが入らないように少し目を開けて、鏡で左右対称でない耳を見る。
左耳だけなんて嫌だ。
目立つし、みっともないの。
全身の泡を洗い流し、湯船に飛び込む。
ザブンと心地いい音が。
お風呂でどんなにはしゃいでもおにぃ……そうたは怒ったりしない。
少し匂いが強い気もするが、そうたの言う通り入浴剤は気持ちいいの。
「うるさいわよ! 静かに入りなさい」
ちっ、あの女……
ウザイの。
可笑しなことにお姉ちゃんの顔が思い浮かんだのに、あの女の笑顔が打ち消した。
わたしは思わず水面へと潜り、あの憎たらしい笑顔を必死で消そうとした。
ブクブクブク……
湯船から上がると少しふらつく。
長風呂というのをしてしまったかもしれない。
冷たいシャワーをもう一度浴びて、外に出る。
用意されていたふわふわのバスタオルに包まり、ぼんやりした頭が元に戻るのを待つ。
「あんまり長風呂すると、体に悪いんだからね」
「……」
余計なお世話なの。
こいつ、まだわたしがいるのに裸になるつもりか……なっ!
「お姉ちゃん……」
裸体の姿を見て、思わず漏れてしまった。
なんてプロポーションしてるの!
「あたしはあなたのお姉ちゃんじゃないわよ」
「……わかってるの」
くそっ。
そうたからお姉ちゃんを連想するのはいいことなの。お兄ちゃんはわたしの主だし。
でもこの人は赤の他人。
大嫌いな人間。
頭と体を拭いて、Tシャツを頭から着ていた時だ。
「ごめんね、ほたる。何か気に障ったんなら謝るわ」
「……」
謝罪だと!
Tシャツを着終えたときには、全裸の奴は風呂場に消えていた。
このTシャツ、いい匂い。
そうこれはお姉ちゃんと同じ匂い。
思わず匂いを嗅いでしまう。
これもあいつが着ていたもの……
「ちっ」
思わず舌打ちが漏れてしまった。
★☆☆☆★
あたしがイライラしているのは自覚している。
あの二人に負けたくないのに、力的にも追い越されてしまっているかもしれないから。
颯太に助言を仰ぐなんて……
あたしはお姉ちゃんなのに。
頭からシャワーを浴び、心を静める。
あいつと同じですぐ熱くなってしまう。悪い癖だ。
考えてみれば、ほたるは家族がいないのかもしれない?
颯太を慕っているのは明らかだし、あいつは自力で、短期間で打ち解けられる才能を持っている。
それにしても颯太は可笑しなことを言う。
手を抜いているなんて、そんなことあるわけがないでしょ。
命の危険があるのよ。
言うならば、これまでの行いが戦闘にも顕著に表れてしまってる。
苦手な戦法は極力使わないし。
見抜かれていたかな、やっぱり。
あの子狐――
貴重な時間割いて、あたしの好きな赤で編んであげたのに――
つい力を入れすぎて全身が泡だらけになっちゃった。
理由があるなら許してあげないでもないけど……
子狐にイライラしている理由の一つが分かった気がする。
あの子、昔のころの颯太に似ているんだ。
綺麗な白い肌をしていたな。
耳と尻尾以外は神様ってより、人間だよね。
馴れ馴れしくそうたって呼び捨てにしてるところがムカつく。
そうたとは仲良くするけど、あたしとは嫌って態度もさらにムカつく。
お風呂に飛び込むなんてほんとに子供だわ。
「……」
少し勢いよく湯船に飛び込んだ。
ほたる……近くで見てやろうじゃない。あたしを認めさせてやる!




