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力を使うとお腹を空かす桜狐の姫は今日も僕に懐いてくれない~追放された底辺調伏師の僕はヒーローを夢見る~  作者: 滝藤秀一
第2章-2 僕の幼馴染は本気を出してない

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第7話 僕の幼馴染と神様はお風呂で何を思う?

 ぴちゃん。


 天井を見ると少し水滴が溜まって湯船に落ちていた。

 少し冷たくしたシャワーを頭から浴びていく。


「ふぅ」


 気持ちよくてため息が出てしまう。


「ひゃ」


 耳にモロに当たってしまった。寝かしておかないとダメなの。


 そうたとの生活で思うことはあるけど、お風呂は最高なの。


 以前はお湯につかったことなどなかったのに、肩までつかることが極楽と知ってしまってからは、そうしないわけには行かない。


 目を開けて、頭から綺麗に泡立てていく。

 尻尾は自分で触れてもくすぐったいので、ごしごしはしない。

 あの女のことが脳裏に浮かんで、ゴシゴシする力が強かった。

 いつもよりも全身が泡まみれになってしまう。


 赤はお姉ちゃんが大好きな色だ。

 お姉ちゃんの色なんだ!

 なのにあの女は……


「いけ好かないの!」


 シャンプーが入らないように少し目を開けて、鏡で左右対称でない耳を見る。

 左耳だけなんて嫌だ。

 目立つし、みっともないの。


 全身の泡を洗い流し、湯船に飛び込む。


 ザブンと心地いい音が。


 お風呂でどんなにはしゃいでもおにぃ……そうたは怒ったりしない。

 少し匂いが強い気もするが、そうたの言う通り入浴剤は気持ちいいの。


「うるさいわよ! 静かに入りなさい」


 ちっ、あの女……

 ウザイの。


 可笑しなことにお姉ちゃんの顔が思い浮かんだのに、あの女の笑顔が打ち消した。


 わたしは思わず水面へと潜り、あの憎たらしい笑顔を必死で消そうとした。



 ブクブクブク……



 湯船から上がると少しふらつく。

 長風呂というのをしてしまったかもしれない。


 冷たいシャワーをもう一度浴びて、外に出る。

 用意されていたふわふわのバスタオルに包まり、ぼんやりした頭が元に戻るのを待つ。


「あんまり長風呂すると、体に悪いんだからね」

「……」


 余計なお世話なの。

 こいつ、まだわたしがいるのに裸になるつもりか……なっ!


「お姉ちゃん……」


 裸体の姿を見て、思わず漏れてしまった。

 なんてプロポーションしてるの!


「あたしはあなたのお姉ちゃんじゃないわよ」

「……わかってるの」


 くそっ。

 そうたからお姉ちゃんを連想するのはいいことなの。お兄ちゃんはわたしの主だし。

 でもこの人は赤の他人。

 大嫌いな人間。


 頭と体を拭いて、Tシャツを頭から着ていた時だ。


「ごめんね、ほたる。何か気に障ったんなら謝るわ」

「……」


 謝罪だと!

 Tシャツを着終えたときには、全裸の奴は風呂場に消えていた。


 このTシャツ、いい匂い。

 そうこれはお姉ちゃんと同じ匂い。

 思わず匂いを嗅いでしまう。


 これもあいつが着ていたもの……


「ちっ」


 思わず舌打ちが漏れてしまった。



 ★☆☆☆★



 あたしがイライラしているのは自覚している。

 あの二人に負けたくないのに、力的にも追い越されてしまっているかもしれないから。


 颯太に助言を仰ぐなんて……

 あたしはお姉ちゃんなのに。


 頭からシャワーを浴び、心を静める。

 あいつと同じですぐ熱くなってしまう。悪い癖だ。


 考えてみれば、ほたるは家族がいないのかもしれない?

 颯太を慕っているのは明らかだし、あいつは自力で、短期間で打ち解けられる才能を持っている。



 それにしても颯太は可笑しなことを言う。

 手を抜いているなんて、そんなことあるわけがないでしょ。

 命の危険があるのよ。


 言うならば、これまでの行いが戦闘にも顕著に表れてしまってる。

 苦手な戦法は極力使わないし。


 見抜かれていたかな、やっぱり。



 あの子狐――

 貴重な時間割いて、あたしの好きな赤で編んであげたのに――

 

 つい力を入れすぎて全身が泡だらけになっちゃった。


 理由があるなら許してあげないでもないけど……

 子狐にイライラしている理由の一つが分かった気がする。


 あの子、昔のころの颯太に似ているんだ。


 綺麗な白い肌をしていたな。

 耳と尻尾以外は神様ってより、人間だよね。


 馴れ馴れしくそうたって呼び捨てにしてるところがムカつく。

 そうたとは仲良くするけど、あたしとは嫌って態度もさらにムカつく。


 お風呂に飛び込むなんてほんとに子供だわ。


「……」


 少し勢いよく湯船に飛び込んだ。

 ほたる……近くで見てやろうじゃない。あたしを認めさせてやる!


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