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力を使うとお腹を空かす桜狐の姫は今日も僕に懐いてくれない~追放された底辺調伏師の僕はヒーローを夢見る~  作者: 滝藤秀一
第1章ー4 僕は神様を神様は僕を

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第19話 僕は神様に生きてほしい

 ほたるに向かっていた数人は足を止めこっちを見た。


「何を言ってる?」

「やだなぁ、耳遠いの。この子の言ってることが真実って言ったんだよ。あなたたち本当に選りすぐりの調伏師? みんなこの子より弱そう。その神様になんかしたらぶっ飛ばすからそのつもりで」


 顔を見ようと振り向こうとしたけど――


「前だけむいてなさい。昨日のあれ、見てたんだよ。正直揺さぶられた。あなたの神様を元に戻して、自分の言葉を証明してみせなさい」

「うんっ」


 誰だか知らないけど凄い感謝。

 僕は立ち上がって一歩、一歩ゆっくりとほたるに近づいていく。


 向かってくる炎の弾丸はすべて受ける。

 避けるのはもったいないと思ったからだ。

 受けるたびに、ほたるの心が僕に語り掛けてくる、そんな気がした。


 わたしの唯一、絶対の大好きな人はお姉ちゃんなの。


「そっか、それはぜひ会ってみたいな」


 人間は大嫌いなの。


「僕も嫌いな人は多いよ。僕、人付き合い苦手だから」


 あなたがわたしの封印を解いてしまったの。

 生きるのをやめようとしたのに――


「そっか……ごめん。でも、生きてほしかったんだよ。笑ってほしかったんだよ」


 人間がお姉ちゃんをわたしから奪ったの――


「それもあって、人が苦手だし嫌いなのか。許せないな。探し出して一発殴ってやろう」


 次々に僕目掛けて弾丸の炎が飛んでくる。

 進むことをやめない僕を見て、ほたるに攻撃しようとしていた人たちの目がこちらを向く。


 カレーパン美味しかったの――を食べてみたかったの。


「今度、買ってあげるよ。僕も食べたいし……」


 今度はないの……


(そんな悲しいことは言わせない)


「あるさ」


 いずれこうなることはわかっていたの。これはあなたのせいじゃない。


「僕はほたるを守る。君の笑顔が見たいから。君の辛さが、悲しさが僕にはわかるから。今からは目を背けずに一緒に背負うから」


 炎の正面に立って両手で触れる。


「戻って来て。絶対に後悔はさせないから。僕はほたるに生きていてほしいんだ」


 あなたはいつもボロボロになるの。

 でも、そのたびにわたしに教えてくれる。

 そんなにそばにいて欲しいの?


「うんっ。神様、お願いします。この先も僕に力を貸して」


 だけど、この力はわたしじゃ制御出来ないの。

 もうあなたの声を聴いても戻れない。


「大丈夫。僕に力を貸して。僕の身を案じる必要はないんだよ。僕がほたるのその強い力を制御するから。心の声が聞こえる今なら、それが出来るはず。今の僕に迷いはない。今度こそ絶対必ずほたるを守る。僕はほたるを信じてる。だから、ほたるも僕を信じてほしい」


 馬鹿なの。

 本物の大馬鹿なの。

 死んでも知らないの。

 ……

 …………

 ………………

 道連れにしてやるの……


 大きな桜の花びらのような炎が上空に舞い、それが僕のところに落ちてくる。



 おかえり、火垂る。



 さすが僕の神様。すごい力を秘めているんだな。

 前よりも強く、そして激しい。でも少し優しいように感じる、まさに燃える炎。



 ほたるが抑えていた力を貸してくれるなら、制御するのは僕の役目だろ。

 この時のために、この子を助けるために、僕は毎日訓練を重ねていたんだ。


 暴れるな。乱れるな。統一させろ。


 桜の木の大きな御神木。僕はまだまだ器としては役不足だ。

 でも、僕がほたるの契約者だ。



「んんっ!」




 赤い炎は徐々に桜色に変化し、小さな体に戻していく。




 あなたはわたしを何度も助けてくれた。

 感情を揺さぶり、死を恐れたからこそ封印していたこの力は漏れ出たの。


 人間は信用できない。

 でも、あなたは人間だけど大嫌いではないの。

 一緒にいるとお姉ちゃんを思い出す。

 だから契約したの。


 自分のことより他人を考えるアホな人。

 すぐボロボロになる危なっかしい人。

 すぐ馬鹿なことをする人。

 わたしと同じ悲しい経験をしている人。


 ほうっておいたらすぐに死んじゃう。

 その馬鹿さ加減に免じて、しょうがないから少しだけ信じてあげるの。



 わたしもあなたに死んでほしくない。

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