08
「堅苦しい挨拶は抜きでいいよ。
そして悪いけど今日からしばらく君達は訓練を休むと連絡はしてある。
私の調査に付き合ってもらう」
入ってくるなりの王子の言葉に先輩方の顔を見れば緊張感の走った険しい顔をしている。
常に穏やかな王子の印象が今はない。
今回の事と言い嫌な事が続いているという事だろうか。
「柘榴に見てもらったが彼等には魔法がかかっている。
だが、闇属性の魔法ではない」
王子の言葉に全員が表情を硬くする。
柘榴と言うのは王子の闇の契約精霊だ。
高位であるので現時点ではこの王子が次の王様だ。
ちなみにこの世界では精霊と契約する時に名前をつけ、精霊がその名前を受け入れてようやく成立となる。
漢字の名前でお気づきかもしれないが、この世界はカタカナも漢字もごちゃまぜの世界で、北の方にある国が漢字圏の国とはなっている。
そして王族だけが闇精霊と契約できる理由。
それは精神系の魔法が闇属性には多いと言うのが1番の理由だ。
その闇精霊が闇魔法ではないと言うのだ。
これでは禁呪が使われているとしか言いようがない。
「失礼ながら殿下。あれは全て破棄されたと認識しているのですが」
マイヤ先輩が王子に騎士の礼を取ったまま聞く。
さすがのマイヤ先輩も王子の前では口調は変わるようだ。
「新たにつくられたのか。破棄できてなかったのかはわからない。
だが、魅力と傀儡の可能性が非常に高い」
魅了と傀儡はゲームの回想シーンで過去の禁忌魔法として語られたのみだ。
禁呪は特殊な発動方法でその事については魔道具を介さないと発動しないという事以外はゲーム中にも攻略本にも載ってはいなかった。
ゲームの設定資料集販売されていて私も買ってはいたが、全部読み終わった記憶がない。
でも過去の事については書いてなかったし、何よりこの世界の記憶持ちは私が最後だと死神は言っていた。
となると今回の件は記憶持ちではない?
でも、設定資料集に何か気になる事が書いてあった気がする。
何だったかな。
私が過去の記憶を思い出してる最中にマイヤ先輩が現状分かってる事を説明し、補足がないか私達に確認をしてくる。
あの後の調査で分かっているのは、ジアーナは最近1人で街に行くことが多かった事。
そして今まで興味のなかったアクセサリーをつけるようになった事。
アクセサリーを付けるだけなら気にはならないが、ジアーナの態度がおかしくなったのもその頃なのでただの偶然なのかを調べようとしてた事。
レナート達に関しては突然、態度が変わった以上の情報はわからなかった。
そして今日の状態だ。
これ以上はわかってることは現時点ではないと告げると王子は少し考えてから指示を出した。




