皆で紡ぐ異世界人生を…
「みんな…上に行ってて、ハンスはここで私が仕留めるから」
その言葉にハンス以外が頷くとかたじけなさそうに
階段を駆け上っていったその間にもハンスはアリュの首を狙っていた。
それに対応するがごとくアリュも魔法の詠唱を構える
「どこの国の人…パルジアに暗殺部隊なんてないよ」
「ヴィリガオル帝国ってとこだよ恐極龍に滅ぼされた二大帝国の一つのな。詳しくは言えないが再建を狙っていろんな国に潜伏してるそんなところだ」
「クリオラ様から…依頼を受けて誰かを暗殺しに来たってこと…」
「落ち込むなよアリュ様、別にクリオラ王に依頼されたわけじゃない依頼者は言えないがな」
「そんじゃこっちも仕返しと行こうか『ジァーラ』!」
するとハンスの体が足から順々に透明になってゆくきっとリヒカやヒナタ様々な人物に変装したからくりはこの魔法であることが伺えた。そしてこの能力を使って暗殺をこなしていたことも、アリュもそれにあわせ無詠唱で周りに霧のような魔法を放つ。
(クッソ見ずれえ、それはあっちも同じ逆にこっちのほうが有利だ姿も見えなければ相手は霧で視界も奪われる俺は行動し放題だ)
「『ラ・コーディング』…!」
すると霧が一気に凍りだし、ハンスの体がくっきりと凍った場に映し出された。しかも不安定に凍ったことによって吸い込んだ霧がのどに突き刺さるように痛む。視界が明け少しばかり凍った体を無理やり動かし廊下の壁を伝いアリュの背後へ回り込み刃を向ける。
「意識外の攻撃ならどんな相手でもあたるもんだ!」
刃を防ごうとしたアリュの腹部にハンスが強烈な蹴りを入れる、甲冑がありながらも軽い体は廊下の奥のほうへ吹っ飛んでいった。アリュは転がりながら痛みを抑えきれずにいた、ヒナタに使った回復魔法で魔力がごっそりと削れていたためあまり長期戦にはしたくなさそうだった。
「…うっ!ふぐっ……」
「やっぱり魔法使いで小柄なだけあって攻撃されるのには弱いんだなアリュ様」
アリュの方向へハンスが歩き出す、アリュは必死に魔法を唱えようとするが痛みで途切れてしまう様子だった。立とうとも試みるが甲冑の重さもあり四つん這いになるのが精一杯だった。
「さすがに肩から下をやられた時は相打ちを覚悟したが案外いけるもん…」
と言葉をすべていう前にハンスの体が吹き飛び壁にひびが入るほどの勢いで殴られる
ハンスは殴られた衝撃で気絶していた。そんな力の持ち主は銀髪の女性そうソリュアだった
彼女は疲れ気味だったが堂々たる姿でアリュの前に現れた。
「大丈夫ですわアリュ様、どういう状況ですわラベラ様はどこですわしかもその男死んだと思っていたのですがリヒカに変装していたのですわね」
「あ…ありがとうソリュア…ラベラ様たちは上にいるハンスをいったん拘束してからみんなに会いに行こう」
気絶したハンスに拘束の魔法をかける、ハンスの体に三つの形の拘束具がつけられているのがその証だ。
アリュとソリュアは急いで階段を上りラベラ達と合流を果たす。あってすぐに口を開いたのはケイラだった、ハンスの実力を間近で見ていたからアリュに心配を寄せていた
「大丈夫でしたか、アリュ様ハンスさんはとても強いですからって、おなかの防具へこんでるじゃないですか!」
「強かった…けどソリュアが助けてくれた!」
自慢げにソリュアの周りを走り回る、これを見ればただの幼い女の子に見える。
「まあいろいろと聞きたいことはありますけど、いったんご飯にしましょうですわおなかが空いてかなわないですわ」
「左側のほうに調理場らしきところがありましたよ、使える鍋を探しましょう!」
調理場らしきところに着くとケイラが薄汚れた厨房で必死に使えるものを探す
ガラガラと音を立てながらやっと出てきたかと思うと取っ手が一つ外れた巨大な中華鍋を持ってきていた。しかし使うには十分そうな中華鍋だ。
そこらへんに落ちていた瓦礫などを集め土台を整え下方に燃料を入れ上に中華鍋をセットする
「何入れるんだ?俺は蟹とかが食べたい冗談だが、」
「カニ、そんな食べ物があるのすわ?あなたの地域のほうに行って食べてみたいですわでもあいにく今はないので我慢してですわ」
「僕は食べれればなんでもいいですよーちゃんと限度はありますけどね!」
アリュがさっき集めた材料たちを魔法で取り出し鍋へ入れてゆくソリュアも負けじとバックに詰めてあった謎のキノコやトカゲのようなものを好き放題放り込む、物が追加されるたびにヒナタやケイラ、ラベラの表情が硬くなってゆく。
最後に水をドバドバッといれあんなに大きかった中華鍋が満杯になってしまったそれにしても中身は地獄絵図、それを気にせずにアリュは火をつける。
「うぷっ、もしかして銀髪の子とアリュって呼ばれてる子は料理ができないのか…」
「まあ、料理などはほとんどコニュアに任せていましたからで気なのはできないですけど今回は自信作ですわぁ」
「ソリュア…いい感じだね…!」
「あのー限度をはるかに超えているんですが、、」
何分か経つと完成したらしく闇鍋の限度をはるかに超えたどす黒い何かをみんなに見せつける。
それは見るたびに根源的恐怖を呼び起こしケイラは後ずさりしようとして転ぶ始末。
こんなものを口にすればたばこの5倍は寿命が縮むだろうしかし生きるためやむなくアリュとソリュアに次いで何かを口にする。
「ん゛ん”ん”ぅ”、ふぐううぅ”あ”―――美味しーーウ”おお”ぇ”ぇ”」
「嘘ですよね?我慢してますよね?信じていいんですよね行きますよ!」
「ヒナタが言うなら一口いただこうかな」
悶絶するヒナタに次いでラベラとケイラが死ぬには惜しいとそのものを口にする
二回くらい口を動かした後顔色がどんどんと変わってゆく、ケイラに関しては鼻水を垂らし
足ががくがくと痙攣している様子だったもはやそれは食べ物ではなく毒と言えるものであった。
アリュとソリュアはそんな三人を気にすることはせずバクバクと鍋の中の物を食してゆく
「うっひどいなにこれ食べ物なの?」
「あ”あれ、おいしくなる余地ありましたよねぇ”ぇなぜこんな」
「此処で死んでたまるかよ!おらぁああ!」
ヒナタもアリュとソリュアに負けじと鍋の中へ挑んでゆく。
ケイラとラベラは完全に壊れた様子だった黙々と目の前に出されたそれを口に運んでいた。
「ごぷっ……うぎぃ…」
鍋の中のものが空になったときにはソリュアとアリュ以外はみな意気消沈していた。
目の前の怪物を処理したヒナタにはもはや話す気力もなかった
数時間雑談した後アリュとケイラとラベラは空気を読むようにその場から離れてゆく
ヒナタと二人っきりになったソリュアが質問攻めする
「アリュ様にいろいろ聞きましたけどド直球に聞きますわ、あなた本当にヒナタですわ?」
「何回も言ってるだろ…もしかして俺の知ってるヒナタとお前の知ってるヒナタに違いがあるのかもしれない。今の俺は急にこの世界に来たもんだから俺もなにがなんだか、でも唯一わかるかることはアのハンスって男の恐怖だけだ俺は絶対あいつにきっと一回殺されている感じがする。」
「別の世界から来た風ないいようですわね、きっと頭をぶつけたのですわね。まあいいですわ、あと死体を見たって言っていたらしいですわねもしかしてそれが」
「いや、確かに死体はあったがどんどんと腐敗するように溶けちゃって顔を見ようとしたんだけどその前に溶けてなくなっちゃったんだ」
ソリュアの疑いの目は晴れない―ずっと鋭い目でヒナタを注視する、しかし数分経つとその目を緩め手を出しヒナタの手をギュっと握る
「私がもう一回教えてあげますわ記憶が消えても、というか前回のヒナタよりももっと強化のし甲斐がありますわ都合がいいですわね!」
「あっさり受け入れるんだな俺のほうが疑っちゃうよでもきっと前の俺はソリュアと仲良かったと思われるな」
「まあ少しは仲は良かったですわ友達みたいな感じですわ、あっさり受け入れたのは悩んでも仕方ないからですわ。ヒナタの姿をしたハンスだとも気が付かずヒナタを突き放して…そのせいでヒナタの姿を変えてしまったも同然まあ本物かもわかりませんしですわ」
ヒナタを握る手がどんどんと強くなっていくのがわかった―入ってくる空気の向き風の音が変わり
影の具合でソリュアの顔が怖く見えた、さっきののほほんとした態度がなくなりヒナタは息をのみ
そっとソリュア顔から眼を放したその時言葉が放たれる
「『権化』を使いましたね、それとも記憶喪失という戯言で言い逃れをしますか?」
「権化?な…なんだよそれ、」
「権化の力かはわかりませんが何かこの世の死という理に反する能力を使ったということはやっぱり欲求か権化か守護か、ヒナタの場合守護はあり得ませんわ祝福を受けるには失ったものがないですものまあどちらにせよ危ない力には多大な代償が必要ですわその一部にラベラ様が含まれているのなら…」
「……俺は何も知らないだが、ラベラを守ることが役目なら進んでやってやるよ」
「ふふふ、ヒナタはいつになっても変わりませんですわね~まあヒナタを雇ったラベラ様を止められない私も悪いのですわ、じゃあ…」
「再びお願いしますわぁ護衛としてラベラ様の元で働いてくださいですわ」
「会って三日か二日くらいだけど大丈夫ですわ記憶がなくても、私やみんなが再びヒナタの記憶を形作っていきますわ」
強く握られた手はほどけヒナタの前に立つソリュア、彼女の目には暗闇の中でかすかに生きている光が集まりダイアモンドのような美しい瞳をこちらに向け、それはもはや執事というにはあまりにもかけ離れ王女と呼ぶに値するほどの覇気と美しさをその身にまとったソリュアから重々しい一言がヒナタに与えられる。
「ああ、俺からも頼むこの新しい世界で俺がどんな人生を歩めるのかは俺だけじゃなくお前らの言葉もきっと必要になってくるからな」
「正直やっぱめんどくさいですわ、早く記憶戻ってきてですわぁ」
「形作ってくれるんじゃないのか?辛辣だな!」
「それじゃあ、ラベラ様たちと合流しましょうですわ今日はたくさん食べてたくさん寝ましょうですわね」
その言葉でソリュアが部屋から出てゆく、ヒナタも後を追うが少し立ち止まって内心でこだまするように力強い言葉を自分にかける。それはソリュアの美しい覚悟似ているも正反対な情熱的な覚悟だった
(そうだ俺は二回目の人生を生きていくんだあんな薄っぺらい人生はもう御免だどんなことがあったのかは知らないが俺は再びこの世を生きる彼女たちとともに)
ヒナタは決心したように天井を見上げ、拳を握りこみ肩に力を入れ
前世の懐かしい記憶を思い出し涙がこぼれそうになるも決心する。
(生きてやるよ、この異世界を…いろんな奴らやアリュケイラ、そしてラベラやソリュアと共に)
(皆で紡ぐ異世界人生を…)




